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想い人 6
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「あの日、心春さんに聞いたのは私たちが置かれている立場と似ていたから。私が欲しい言葉を心春さんなら言ってくれると思って、自分のために求めたんです」
「⋯⋯⋯私は如月さんの望む返しをしてましたか?」
「はい。でも⋯⋯⋯望んでたけど、望んでなかった。聞きたかったけど、聞きたくなかった」
それ以上言わなくても分かる。
私が返した言葉で如月さんを苦しめていることを。
私は伊織くんからの好きという気持ちを投げ出したくないと言った。
きっとそれは如月さんも同じで、私がこんな生活をやめたいと言っていれば、潔く彼女は彼への未練を断ち切れたんだと思う。
それでも私が希望を見せてしまったから、だから期待させてしまったんだ。
彼との未来があるのではないか、と。
「ほんの少しでも希望があるなら、私は彼と歩んでみたい。ずっと伝え続けてくれる彼の気持ちに応えたいです」
グッと涙を堪えながら私の目を真っ直ぐ見つめて言い切った彼女には迷いはないようだった。
その表情はつい最近まで憂いを帯びた顔をしていた人物と同じとは思えないほどかっこよく見える。
「それを、ご両親に伝えてみてはいかがですか?」
「でも⋯⋯⋯」
「意外と嬉しいと思ってくれるかもしれません。今までわがまま言わなかった如月さんが初めて言ったことなら尚更」
私が手助けできることは限られている。
如月さんのご両親に何かを伝えることはできないけど、彼女の背中をほんの少しだけ押すことはできる。
「どうせ、と諦めるのはいつだってできますよ。ご両親にダメだと言いきられてからでもいいんじゃないですか」
「⋯⋯⋯」
「そして彼にも伝えてあげてください。如月さんの気持ちを。きっと喜んでくれますよ」
「でも⋯⋯⋯私が受け入れたら、彼は元通りの生活には戻れなくなるかもしれない。苦労や負担をかけてしまうのは目に見えて分かってます」
「⋯⋯私は友人に教えてもらったことがあります。好きな人のわがままを喜んでそれを愛だと受け止めてくれる人があなたにはいるはずだと」
これは翔くんからの受け売りだった。
きっと如月さんの想う彼も如月さんのわがままを笑って喜んで受け止めてくれるはずだ。
大学の頃からずっと好きだと伝え続けてくれるなんて、それほど大きな愛があるってことだろう。
私にぶつけてくれたその気持ちを彼も一緒に分かち合いたいと思ってくれるはずだ。
「⋯⋯本当は年始のパーティーの日、彼の誕生日だったんです。でも私はそれを1番最初に隣でお祝いできない」
「行ってあげてください。そのコーヒーカップを持って、お祝いしてあげてください。それでとびっきりわがままを言ってください」
小さく笑いかけると如月さんもそれに応えるように微笑んでくれる。
私たちもまた、少し心が通じ合えたような気がした。
「心春さん。どうしてそんなふうに自分の意思を持っていられるんですか?」
「私1人じゃこんな気持ちに行き着けないですよ。伊織くんや彼の親友、そして私の親友や会社のチームメンバー、それに弟。みんな私を支えて手を差し伸べてくれる人たちです。みんながいるからこうしよう、って思えました」
「それも全て心春さんの人柄ですかね」
「私も如月さんにとってのその1人になれたらいいなって思ってます。ほんの少し背中を押せる人になれたらなって」
一瞬目を見開いた如月さんを見ているとなんだか無性に恥ずかしくなった。
それを隠すように取り分けてくれたリゾットをスプーンで掬い口に頬張る。
「パーティーの日は私たちに任せてください。全部なんとかしてみせます。私と伊織くんと一緒に」
「⋯⋯心春さん。また私に会ってくれませんか?」
「えっ⋯⋯」
「私の、友人として、また会っていただけませんか?」
如月さんはこんなにもはっきり気持ちを伝えられる人だったのかと思うほど、その言葉は真っ直ぐで私の心に突き刺さった。
私自身も同じことを考えていた。
「麗華さんって呼んでもいいですか?」
「もちろんです」
「また今度一緒に出かけましょ。2人でね」
「⋯⋯⋯私は如月さんの望む返しをしてましたか?」
「はい。でも⋯⋯⋯望んでたけど、望んでなかった。聞きたかったけど、聞きたくなかった」
それ以上言わなくても分かる。
私が返した言葉で如月さんを苦しめていることを。
私は伊織くんからの好きという気持ちを投げ出したくないと言った。
きっとそれは如月さんも同じで、私がこんな生活をやめたいと言っていれば、潔く彼女は彼への未練を断ち切れたんだと思う。
それでも私が希望を見せてしまったから、だから期待させてしまったんだ。
彼との未来があるのではないか、と。
「ほんの少しでも希望があるなら、私は彼と歩んでみたい。ずっと伝え続けてくれる彼の気持ちに応えたいです」
グッと涙を堪えながら私の目を真っ直ぐ見つめて言い切った彼女には迷いはないようだった。
その表情はつい最近まで憂いを帯びた顔をしていた人物と同じとは思えないほどかっこよく見える。
「それを、ご両親に伝えてみてはいかがですか?」
「でも⋯⋯⋯」
「意外と嬉しいと思ってくれるかもしれません。今までわがまま言わなかった如月さんが初めて言ったことなら尚更」
私が手助けできることは限られている。
如月さんのご両親に何かを伝えることはできないけど、彼女の背中をほんの少しだけ押すことはできる。
「どうせ、と諦めるのはいつだってできますよ。ご両親にダメだと言いきられてからでもいいんじゃないですか」
「⋯⋯⋯」
「そして彼にも伝えてあげてください。如月さんの気持ちを。きっと喜んでくれますよ」
「でも⋯⋯⋯私が受け入れたら、彼は元通りの生活には戻れなくなるかもしれない。苦労や負担をかけてしまうのは目に見えて分かってます」
「⋯⋯私は友人に教えてもらったことがあります。好きな人のわがままを喜んでそれを愛だと受け止めてくれる人があなたにはいるはずだと」
これは翔くんからの受け売りだった。
きっと如月さんの想う彼も如月さんのわがままを笑って喜んで受け止めてくれるはずだ。
大学の頃からずっと好きだと伝え続けてくれるなんて、それほど大きな愛があるってことだろう。
私にぶつけてくれたその気持ちを彼も一緒に分かち合いたいと思ってくれるはずだ。
「⋯⋯本当は年始のパーティーの日、彼の誕生日だったんです。でも私はそれを1番最初に隣でお祝いできない」
「行ってあげてください。そのコーヒーカップを持って、お祝いしてあげてください。それでとびっきりわがままを言ってください」
小さく笑いかけると如月さんもそれに応えるように微笑んでくれる。
私たちもまた、少し心が通じ合えたような気がした。
「心春さん。どうしてそんなふうに自分の意思を持っていられるんですか?」
「私1人じゃこんな気持ちに行き着けないですよ。伊織くんや彼の親友、そして私の親友や会社のチームメンバー、それに弟。みんな私を支えて手を差し伸べてくれる人たちです。みんながいるからこうしよう、って思えました」
「それも全て心春さんの人柄ですかね」
「私も如月さんにとってのその1人になれたらいいなって思ってます。ほんの少し背中を押せる人になれたらなって」
一瞬目を見開いた如月さんを見ているとなんだか無性に恥ずかしくなった。
それを隠すように取り分けてくれたリゾットをスプーンで掬い口に頬張る。
「パーティーの日は私たちに任せてください。全部なんとかしてみせます。私と伊織くんと一緒に」
「⋯⋯心春さん。また私に会ってくれませんか?」
「えっ⋯⋯」
「私の、友人として、また会っていただけませんか?」
如月さんはこんなにもはっきり気持ちを伝えられる人だったのかと思うほど、その言葉は真っ直ぐで私の心に突き刺さった。
私自身も同じことを考えていた。
「麗華さんって呼んでもいいですか?」
「もちろんです」
「また今度一緒に出かけましょ。2人でね」
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