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如月麗華という女 4
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「そんなふうに人を好きになれるって本当にすごいことだと思います。素敵ですねおふたりは」
少しだけ悲しそうに微笑む姿が印象的だった。
そんな顔を見てしまえば、彼女の底に隠したその秘密を聞いてしまいたくなる。
「自分の意思でそう決意できることは誰もができることじゃないです。誰かの言いなりになって生きていく人だって実際いますし」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「誠実に答えてくださってありがとうございます」
コーヒーのカップに指をかけてゆっくりと口元に運ぶ姿はすごく映える。
何かを隠したようなそんな気配が拭いきれなくて、でも私がそれを聞くような立場じゃないのは分かっているため何も聞けない。
ただ私はそんな彼女の哀愁漂う姿を眺めていた。
その視線に気づいたのか、如月さんは私の方へと視線を上げて思いもよらないことを呟く。
「東雲さんとの結婚の件ですが、私は結婚する気はありません」
「えっ?」
「あなたに話を聞いて答えを出そうと思ってたんですが、今話したおかげできちんと答えが出ました。先日はまだ答えが出ていなくて肯定的なことを言ってしまいすみませんでした」
「伊織くんとの結婚は私の返事次第で変わっていたということですか?」
はい、と小さく呟いた如月さん。
私のどんな部分が彼女の結婚をしないという決断の後押しをしたのかは分からない。
だけどこの話を聞いてなんとなく思った。
もしかしたら如月さんには想いを寄せている人がいるのではないかと。
ただ確証は全くないし、あくまで私の話を聞いていた中での印象だ。
実際のところは分からない。
「私も心春さんのように生きられたらいいのになって思いました」
「⋯⋯⋯どういう意味でしょうか?」
「誰かの想いに全力で応える、そんなふうに私も生きたいです」
その言葉が彼女の想いの全てを物語っていた。
憂いを帯びた表情や哀愁の漂うその顔はきっとその言葉の"誰か"によって引き起こされたことなのだろう。
その"誰か"というのが如月さんが想いに応えたい人なんだと思うと、もしかしたら大切な人なのかもしれないと思った。
「変な話をしてごめんなさい。とりあえず伝えたいのは東雲さんと結婚するつもりはないってことです」
「あの、もしよければ話、聞きますよ」
「え⋯⋯?」
一瞬驚いた顔をした如月さんはすぐにその表情を隠し、また感情の読み取れない無表情を貼り付ける。
私は変なことを言っていると思われていそうだが、ゆっくりと話を続けた。
「私は一般家庭で育ったので、如月さんのように令嬢、という立場のことは詳しくないです。でも如月さんが誰にも話せない、その隠している気持ちを聞くくらいならできます。私の立場だから、言って楽になることもあるんじゃないかと思いまして」
「⋯⋯⋯変な人。私の周りには今までいなかったです、心春さんみたいな人」
「何か溢れだしそうになったらよければ言ってみてください。何も返せないかもしれないですけど、聞くことはできます」
初めて会った時から嫌な感じがしなかったのは、彼女の中に伊織くんとの結婚の意識がほとんどなかったからなんだと気づいた。
取り入ろうとする気配が全くなかったからあの時、あんな話をされたのに気分が悪くなったんだ。
逆に今話してみて、少しだけ如月さんと仲良くなってみたいとさえ思えた。
でもそんな想いは彼女に伝えることなく、自分の心の中だけに留めておく。
「⋯⋯⋯⋯また、年始のパーティーでお会いましょう」
如月さんから返事はなかったが、嫌な気持ちはしていなさそうだった。
私もまたそれ以上は伝えることはなく、如月さんの中に言葉が残っていればいいと思っている。
2人分のドリンクを仕事を遅刻させてしまったお詫びとして如月さんが払ってくれた。
仕事に行くため彼女と別れ、如月さんの颯爽と去る背中を私は何も言わず見つめた。
少しだけ悲しそうに微笑む姿が印象的だった。
そんな顔を見てしまえば、彼女の底に隠したその秘密を聞いてしまいたくなる。
「自分の意思でそう決意できることは誰もができることじゃないです。誰かの言いなりになって生きていく人だって実際いますし」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「誠実に答えてくださってありがとうございます」
コーヒーのカップに指をかけてゆっくりと口元に運ぶ姿はすごく映える。
何かを隠したようなそんな気配が拭いきれなくて、でも私がそれを聞くような立場じゃないのは分かっているため何も聞けない。
ただ私はそんな彼女の哀愁漂う姿を眺めていた。
その視線に気づいたのか、如月さんは私の方へと視線を上げて思いもよらないことを呟く。
「東雲さんとの結婚の件ですが、私は結婚する気はありません」
「えっ?」
「あなたに話を聞いて答えを出そうと思ってたんですが、今話したおかげできちんと答えが出ました。先日はまだ答えが出ていなくて肯定的なことを言ってしまいすみませんでした」
「伊織くんとの結婚は私の返事次第で変わっていたということですか?」
はい、と小さく呟いた如月さん。
私のどんな部分が彼女の結婚をしないという決断の後押しをしたのかは分からない。
だけどこの話を聞いてなんとなく思った。
もしかしたら如月さんには想いを寄せている人がいるのではないかと。
ただ確証は全くないし、あくまで私の話を聞いていた中での印象だ。
実際のところは分からない。
「私も心春さんのように生きられたらいいのになって思いました」
「⋯⋯⋯どういう意味でしょうか?」
「誰かの想いに全力で応える、そんなふうに私も生きたいです」
その言葉が彼女の想いの全てを物語っていた。
憂いを帯びた表情や哀愁の漂うその顔はきっとその言葉の"誰か"によって引き起こされたことなのだろう。
その"誰か"というのが如月さんが想いに応えたい人なんだと思うと、もしかしたら大切な人なのかもしれないと思った。
「変な話をしてごめんなさい。とりあえず伝えたいのは東雲さんと結婚するつもりはないってことです」
「あの、もしよければ話、聞きますよ」
「え⋯⋯?」
一瞬驚いた顔をした如月さんはすぐにその表情を隠し、また感情の読み取れない無表情を貼り付ける。
私は変なことを言っていると思われていそうだが、ゆっくりと話を続けた。
「私は一般家庭で育ったので、如月さんのように令嬢、という立場のことは詳しくないです。でも如月さんが誰にも話せない、その隠している気持ちを聞くくらいならできます。私の立場だから、言って楽になることもあるんじゃないかと思いまして」
「⋯⋯⋯変な人。私の周りには今までいなかったです、心春さんみたいな人」
「何か溢れだしそうになったらよければ言ってみてください。何も返せないかもしれないですけど、聞くことはできます」
初めて会った時から嫌な感じがしなかったのは、彼女の中に伊織くんとの結婚の意識がほとんどなかったからなんだと気づいた。
取り入ろうとする気配が全くなかったからあの時、あんな話をされたのに気分が悪くなったんだ。
逆に今話してみて、少しだけ如月さんと仲良くなってみたいとさえ思えた。
でもそんな想いは彼女に伝えることなく、自分の心の中だけに留めておく。
「⋯⋯⋯⋯また、年始のパーティーでお会いましょう」
如月さんから返事はなかったが、嫌な気持ちはしていなさそうだった。
私もまたそれ以上は伝えることはなく、如月さんの中に言葉が残っていればいいと思っている。
2人分のドリンクを仕事を遅刻させてしまったお詫びとして如月さんが払ってくれた。
仕事に行くため彼女と別れ、如月さんの颯爽と去る背中を私は何も言わず見つめた。
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