101 / 186
如月麗華という女 1
しおりを挟む
ゆっくりと年末の足音が近づいてきた12月中旬の月曜日。
いつものように少しだけ早く起きた私は伊織くんの分の朝食の準備を終えた。
今日は和食をチョイスしていてダイニングテーブルにはだし巻き玉子とお味噌汁、そして鮭の切り身を焼いてある。
伊織くんはというと年末ということで仕事が忙しくなっていると同時に、如月さんのことも重なって毎日大変そうだ。
それでも必ず一緒に食事を取ってくれてそういう所が愛されているなと感じる。
今日もまたいつもより早く出社するため、スーツを既に着ていて髪の毛もバッチリ整えた伊織くんが洗面所から戻ってきた。
「今日は和食か。いいなありがとう」
「冷める前に食べてみて。だし巻き玉子、どうかな?」
いただきます、と言って伊織くんは1番最初にだし巻き玉子を食べてくれた。
ふわふわに仕上げることができたため一番最初に食べて欲しくてつい要求してしまう。
じーっと伊織くんを見つめていると彼は口角を上げてふわりと微笑む。
朝からこんな整った旦那様の顔を拝めて私はなんて幸せなんだろう。
「すごく美味しい。このだし巻き玉子、少し甘めなんだな」
「お義母さんから聞いたの。伊織くんだし巻き玉子は甘めが好きだって。私も甘め派だから同じだね」
「心春も同じか嬉しいな。このだし巻き玉子の味すごく好きだ。また作って欲しい」
どうやら甘めのだし巻き玉子は好評だったみたいでまた作って欲しいとのリクエストまでもらえた。
伊織くんが喜んで食べてくれるため私も嬉しいし作りがいもある。
「伊織くん、最近お仕事忙しそうだね」
「年末が近づいているしな。それに如月家とのこともある」
「如月家とのことは大丈夫そう?」
「⋯あの人はおそらく、1月の年始パーティーで大々的に発表するつもりだろう。毎年年始に1年の発展を願っていろんな会社の社長とかが集まるんだ。そのあとの6月の株主総会で正式に決めるつもりだと思う」
「そうだったんだ⋯⋯」
「年始のパーティーまでになんとかするから大丈夫だ。心配するな」
伊織くんはそう言うものの、私は何も彼にできていない。
ただ待ってるだけしかできないことがとてももどかしかった。
お味噌汁をすすりながらそんなことを考えていると表情に出てしまっていたのか、伊織くんがどうした?と私の顔を覗き込む。
「私にも、何かできることないかな?」
「そうだな⋯⋯心春にしかお願いできないことがあるんだが、頼んでもいいか?」
「うん、なんでも言って」
何か私にもできることがあると分かって嬉しいと同時に少し前のめりになって伊織くんの言葉を待つ。
すると彼から頼まれたことは意外なものだった。
「今のまま毎日こうしてご飯を作って、俺の帰りを待ってて欲しい」
「え⋯⋯それだけでいいの?」
「それが俺にとって1番の活力になるんだ。心春が家にいてくれて、俺を迎えてくれて、笑顔を向けてくれる。それだけで俺は十分頑張れる」
私は伊織くんの専務としての仕事を手伝うことはできないけど、それなら私にだってできそうだ。
毎日伊織くんを笑顔で迎えることなんて朝飯前だと思う。
それだけで伊織くんが元気になれるなら、私はどれだけでもそうする。
伊織くんはダイニングテーブル越しに私の頭をぽんっと撫でてくれた。
「それでたまには俺を癒してくれ」
「癒す?」
「そう。心も、身体もな」
ニヤッと微笑む伊織くんの言葉に私の耳が真っ赤になるのが分かる。
伊織くんの言っている意味が私にも十分分かるし、あえてわざとらしく言うところが確信犯だ。
(私が恥ずかしがるのを分かって言ってるよな⋯⋯)
私が作った朝食を全て食べ終えた伊織くんはカバンを持って家を出る支度を始める。
その間、私はお皿を洗いながら伊織くんの出かけるまでの時間を活用していると、準備を終えたようで彼が家を出ようとする。
いつものように少しだけ早く起きた私は伊織くんの分の朝食の準備を終えた。
今日は和食をチョイスしていてダイニングテーブルにはだし巻き玉子とお味噌汁、そして鮭の切り身を焼いてある。
伊織くんはというと年末ということで仕事が忙しくなっていると同時に、如月さんのことも重なって毎日大変そうだ。
それでも必ず一緒に食事を取ってくれてそういう所が愛されているなと感じる。
今日もまたいつもより早く出社するため、スーツを既に着ていて髪の毛もバッチリ整えた伊織くんが洗面所から戻ってきた。
「今日は和食か。いいなありがとう」
「冷める前に食べてみて。だし巻き玉子、どうかな?」
いただきます、と言って伊織くんは1番最初にだし巻き玉子を食べてくれた。
ふわふわに仕上げることができたため一番最初に食べて欲しくてつい要求してしまう。
じーっと伊織くんを見つめていると彼は口角を上げてふわりと微笑む。
朝からこんな整った旦那様の顔を拝めて私はなんて幸せなんだろう。
「すごく美味しい。このだし巻き玉子、少し甘めなんだな」
「お義母さんから聞いたの。伊織くんだし巻き玉子は甘めが好きだって。私も甘め派だから同じだね」
「心春も同じか嬉しいな。このだし巻き玉子の味すごく好きだ。また作って欲しい」
どうやら甘めのだし巻き玉子は好評だったみたいでまた作って欲しいとのリクエストまでもらえた。
伊織くんが喜んで食べてくれるため私も嬉しいし作りがいもある。
「伊織くん、最近お仕事忙しそうだね」
「年末が近づいているしな。それに如月家とのこともある」
「如月家とのことは大丈夫そう?」
「⋯あの人はおそらく、1月の年始パーティーで大々的に発表するつもりだろう。毎年年始に1年の発展を願っていろんな会社の社長とかが集まるんだ。そのあとの6月の株主総会で正式に決めるつもりだと思う」
「そうだったんだ⋯⋯」
「年始のパーティーまでになんとかするから大丈夫だ。心配するな」
伊織くんはそう言うものの、私は何も彼にできていない。
ただ待ってるだけしかできないことがとてももどかしかった。
お味噌汁をすすりながらそんなことを考えていると表情に出てしまっていたのか、伊織くんがどうした?と私の顔を覗き込む。
「私にも、何かできることないかな?」
「そうだな⋯⋯心春にしかお願いできないことがあるんだが、頼んでもいいか?」
「うん、なんでも言って」
何か私にもできることがあると分かって嬉しいと同時に少し前のめりになって伊織くんの言葉を待つ。
すると彼から頼まれたことは意外なものだった。
「今のまま毎日こうしてご飯を作って、俺の帰りを待ってて欲しい」
「え⋯⋯それだけでいいの?」
「それが俺にとって1番の活力になるんだ。心春が家にいてくれて、俺を迎えてくれて、笑顔を向けてくれる。それだけで俺は十分頑張れる」
私は伊織くんの専務としての仕事を手伝うことはできないけど、それなら私にだってできそうだ。
毎日伊織くんを笑顔で迎えることなんて朝飯前だと思う。
それだけで伊織くんが元気になれるなら、私はどれだけでもそうする。
伊織くんはダイニングテーブル越しに私の頭をぽんっと撫でてくれた。
「それでたまには俺を癒してくれ」
「癒す?」
「そう。心も、身体もな」
ニヤッと微笑む伊織くんの言葉に私の耳が真っ赤になるのが分かる。
伊織くんの言っている意味が私にも十分分かるし、あえてわざとらしく言うところが確信犯だ。
(私が恥ずかしがるのを分かって言ってるよな⋯⋯)
私が作った朝食を全て食べ終えた伊織くんはカバンを持って家を出る支度を始める。
その間、私はお皿を洗いながら伊織くんの出かけるまでの時間を活用していると、準備を終えたようで彼が家を出ようとする。
1
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される
Lynx🐈⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。
律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。
✱♡はHシーンです。
✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。
✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる