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その女、敵か味方か 3
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「心春まで呼んで一体何がしたいんだよ」
「やっと役者が揃ったか」
迫力のある低音の声はお腹に響き、それだけで恐怖を植え付けるくらいには凄みがある。
私はなんのために呼ばれたのだろうか。
「彼女は株式会社kisaragiの一人娘、如月麗華さんだ。既に知ってるだろうがな」
綺麗なロングの黒髪を巻き、キリッとしたその姿はまさに令嬢で同性の私から見ても綺麗だと思える。
佇まいも様になっていて高級そうな黒いワンピースを身にまとっていた。
「早速だが伊織。如月のお嬢さんと結婚しなさい」
「は?ふざけたことを言わないでくれ。俺は心春っていう妻がいるんだよ」
「そんなこと分かってる。だから別れろと言っているんだ」
伊織くんのおじい様の言葉に耳を疑ったが、確かにそれは私の頭の中で繰り返し響いた。
あの日、おじい様が言っていた"つかの間の火遊び"という言葉の意味が分かった気がする。
(伊織くんの不機嫌な理由はこれか⋯⋯)
「お父さん。そんな無責任なこと言わないでくれ。伊織はもう結婚してるんだぞ」
「この会社の跡を継ぐ人間にバツがついていても、俺は構わんぞ」
(なるほど⋯なんとなく話が見えてきた)
おじい様は如月さんと伊織くんを結婚させたがっている。
きっとそれは東雲ホールディングスの会社のためでもあるだろう。
チラッと向かい側に座る如月さんを見ると綺麗な顔は能面のように張り付いており、全く表情が変わらなかった。
つまらなさそうにボーッとしている姿は全く興味なさそうだ。
「いくら会長でも伊織の結婚に口出しはできないでしょう」
「伊織にはそれなりの妻がいるだろう。そんな高校の同級生なんて相応しくない」
「あなたが何言っても俺は心春と別れるつもりはない」
今までが上手くいきすぎていたんだろう。
契約結婚をして挨拶など吹っ飛ばして東雲ホールディングスの跡取りと結婚したのだから。
この状況をどうすれば打破できるか考えるもののいい案は浮かばなかった。
伊織くんがただ全力で拒否してくれて、私と一緒にい続けたいと訴えてくれていることだけが私の支えだ。
「如月のお嬢さんも了承してくれている」
チラッと彼女の方を見ると相変わらず表情を変えずに退屈そうに一点を眺めている。
如月さんが何を考えているのか分からない。
「如月さん、君は本当に了承してくれているのか?」
「⋯⋯⋯まぁうちの会社にも利益がありますからね」
素っ気なく返すその言葉にはあまり感情が乗っていないようだった。
こういう世界にいる人たちは自分の利益よりも会社の利益のために、自分の幸せを決められるのか。
それは純粋にすごいと思う。
私にはそんな考え方できるか自信ない。
「まあそういうことだから。準備しておけよ侑李、伊織」
「お父さん!」
「如月のお嬢さん、行きましょうか」
「⋯⋯はい」
おじい様と如月さんは2人で社長室を出ていった。
残された私たち3人はしばらく黙り込みそれぞれが何かを考えているようだ。
それは私も同じで、これからどうすればいいか思考を張り巡らせる。
伊織くんは隣で座る私の手をぎゅっと握ってくれた。
まるで大丈夫だよ、と言ってくれているような気がしてとても安心する。
私たちの沈黙を破ったのはお義父さんだった。
「やっと役者が揃ったか」
迫力のある低音の声はお腹に響き、それだけで恐怖を植え付けるくらいには凄みがある。
私はなんのために呼ばれたのだろうか。
「彼女は株式会社kisaragiの一人娘、如月麗華さんだ。既に知ってるだろうがな」
綺麗なロングの黒髪を巻き、キリッとしたその姿はまさに令嬢で同性の私から見ても綺麗だと思える。
佇まいも様になっていて高級そうな黒いワンピースを身にまとっていた。
「早速だが伊織。如月のお嬢さんと結婚しなさい」
「は?ふざけたことを言わないでくれ。俺は心春っていう妻がいるんだよ」
「そんなこと分かってる。だから別れろと言っているんだ」
伊織くんのおじい様の言葉に耳を疑ったが、確かにそれは私の頭の中で繰り返し響いた。
あの日、おじい様が言っていた"つかの間の火遊び"という言葉の意味が分かった気がする。
(伊織くんの不機嫌な理由はこれか⋯⋯)
「お父さん。そんな無責任なこと言わないでくれ。伊織はもう結婚してるんだぞ」
「この会社の跡を継ぐ人間にバツがついていても、俺は構わんぞ」
(なるほど⋯なんとなく話が見えてきた)
おじい様は如月さんと伊織くんを結婚させたがっている。
きっとそれは東雲ホールディングスの会社のためでもあるだろう。
チラッと向かい側に座る如月さんを見ると綺麗な顔は能面のように張り付いており、全く表情が変わらなかった。
つまらなさそうにボーッとしている姿は全く興味なさそうだ。
「いくら会長でも伊織の結婚に口出しはできないでしょう」
「伊織にはそれなりの妻がいるだろう。そんな高校の同級生なんて相応しくない」
「あなたが何言っても俺は心春と別れるつもりはない」
今までが上手くいきすぎていたんだろう。
契約結婚をして挨拶など吹っ飛ばして東雲ホールディングスの跡取りと結婚したのだから。
この状況をどうすれば打破できるか考えるもののいい案は浮かばなかった。
伊織くんがただ全力で拒否してくれて、私と一緒にい続けたいと訴えてくれていることだけが私の支えだ。
「如月のお嬢さんも了承してくれている」
チラッと彼女の方を見ると相変わらず表情を変えずに退屈そうに一点を眺めている。
如月さんが何を考えているのか分からない。
「如月さん、君は本当に了承してくれているのか?」
「⋯⋯⋯まぁうちの会社にも利益がありますからね」
素っ気なく返すその言葉にはあまり感情が乗っていないようだった。
こういう世界にいる人たちは自分の利益よりも会社の利益のために、自分の幸せを決められるのか。
それは純粋にすごいと思う。
私にはそんな考え方できるか自信ない。
「まあそういうことだから。準備しておけよ侑李、伊織」
「お父さん!」
「如月のお嬢さん、行きましょうか」
「⋯⋯はい」
おじい様と如月さんは2人で社長室を出ていった。
残された私たち3人はしばらく黙り込みそれぞれが何かを考えているようだ。
それは私も同じで、これからどうすればいいか思考を張り巡らせる。
伊織くんは隣で座る私の手をぎゅっと握ってくれた。
まるで大丈夫だよ、と言ってくれているような気がしてとても安心する。
私たちの沈黙を破ったのはお義父さんだった。
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