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東雲家へ 3
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(届かない⋯⋯)
ファスナーに対して悪戦苦闘しているとあの日の伊織くんの言葉を思い出した。
背中を撫でる伊織くんの指先の感触が思い出され、顔が赤く染まり私の下腹部がぎゅっと疼く。
(はあ⋯⋯本当に現実になるとは⋯)
背中のチャックを開けたままリビングに戻ると私の姿を見た伊織くんが口の端を上げてニヤッと笑う。
まるでこの服を着る時にそうなることが分かっていたように、自分の出番だと言いたげな表情だ。
伊織くんの策略にハマったことが分かっていながらも私は何もできず渋々彼のそばに近寄る。
私の姿を上から下まで舐めるように見つめる伊織くんの瞳の奥に獣を飼っているのが伺えた。
「ファスナー上げられないの?」
「うん。あの時伊織くんが言ってた通りになったんだけど」
「後ろ向いてごらん」
その囁く声はとても甘くその声を聞くだけでゾクッとしてしまう。
伊織くんに向かって背中を向けると彼の指先がそっと背中に触れた。
優しくファスナーに触れゆっくりと上げられていく。
順調に上げられていくかと思いきや伊織くんの手はピタッと途中で止まった。
「伊織く──」
名前を呼び振り返ろうとした途端、私の肩に伊織くんの唇が触れた。
その直後、ちうっと肩部分に歯を立てられ同時に甘い痛みが走る。
触れた唇は首筋を通り私のうなじ部分に到達すると、ちゅっとリップ音が小さく鳴り伊織くんからのキスの雨が降った。
ほんの少し肌に触れるだけの感触なのに私の背中はゾクゾクと震え、子宮が疼き蜜が滲み出る。
「ちょ、伊織くん⋯っ」
「そんな声で呼ばれると脱がせたくなる」
「脱がせないで、ファスナー上げてほしいの。というか今、キスマーク付けなかった?」
「⋯⋯バレたか」
「バレるよそりゃ!え、見えるところじゃないよね?」
勢いよく振り返ると伊織くんは私のリアクションが楽しいのか口角を上げて微笑んでいた。
こんな顔されたら許してしまいたくなる。
(ずるいな伊織くん、この笑顔に弱いんだよ⋯)
「ちゃんとこのワンピースで隠れるとこに付けたから大丈夫」
「大丈夫じゃないんだけど⋯!」
全然悪びれもしない伊織くんに小さくため息がこぼれる。
私のリアクションを見て楽しんでいるに違いない。
だけどこんなふうに伊織くんからの独占欲を向けられる私はなんて幸せなんだろう。
誰もが彼からの寵愛を受けたいと願っているはずなのに、その座をこんな形で射止めてしまった私は凄まじい強運の持ち主なのかもしれない。
「ファスナーを上げるのいいな。心春のうなじ見てキスして、それで最後上げるまでが俺の役割」
「もう⋯伊織くんのへんたい」
伊織くんからのいじわるがあったものの、無事にファスナーを上げてもらうことができワンピースを着れた。
腰部分のベルトによってスタイルアップ効果もあるし、裾の繊細なレースが上品さを演出してくれる。
タイトめな服だがその分綺麗に見えるためとてもお気に入りだ。
こんな素敵な服をプレゼントしてもらえて、改めて伊織くんには感謝しかない。
そんな彼は今日、全身ブラックコーデだった。
黒のインナーに黒いジャケット、そして黒のパンツを履いている。
季節も夏を過ぎたため腕まくりした部分から覗く筋肉質な腕や血管が見れないのは残念だが、それでも服の上からでも分かる身体のラインがとてもえっちだ。
ファスナーに対して悪戦苦闘しているとあの日の伊織くんの言葉を思い出した。
背中を撫でる伊織くんの指先の感触が思い出され、顔が赤く染まり私の下腹部がぎゅっと疼く。
(はあ⋯⋯本当に現実になるとは⋯)
背中のチャックを開けたままリビングに戻ると私の姿を見た伊織くんが口の端を上げてニヤッと笑う。
まるでこの服を着る時にそうなることが分かっていたように、自分の出番だと言いたげな表情だ。
伊織くんの策略にハマったことが分かっていながらも私は何もできず渋々彼のそばに近寄る。
私の姿を上から下まで舐めるように見つめる伊織くんの瞳の奥に獣を飼っているのが伺えた。
「ファスナー上げられないの?」
「うん。あの時伊織くんが言ってた通りになったんだけど」
「後ろ向いてごらん」
その囁く声はとても甘くその声を聞くだけでゾクッとしてしまう。
伊織くんに向かって背中を向けると彼の指先がそっと背中に触れた。
優しくファスナーに触れゆっくりと上げられていく。
順調に上げられていくかと思いきや伊織くんの手はピタッと途中で止まった。
「伊織く──」
名前を呼び振り返ろうとした途端、私の肩に伊織くんの唇が触れた。
その直後、ちうっと肩部分に歯を立てられ同時に甘い痛みが走る。
触れた唇は首筋を通り私のうなじ部分に到達すると、ちゅっとリップ音が小さく鳴り伊織くんからのキスの雨が降った。
ほんの少し肌に触れるだけの感触なのに私の背中はゾクゾクと震え、子宮が疼き蜜が滲み出る。
「ちょ、伊織くん⋯っ」
「そんな声で呼ばれると脱がせたくなる」
「脱がせないで、ファスナー上げてほしいの。というか今、キスマーク付けなかった?」
「⋯⋯バレたか」
「バレるよそりゃ!え、見えるところじゃないよね?」
勢いよく振り返ると伊織くんは私のリアクションが楽しいのか口角を上げて微笑んでいた。
こんな顔されたら許してしまいたくなる。
(ずるいな伊織くん、この笑顔に弱いんだよ⋯)
「ちゃんとこのワンピースで隠れるとこに付けたから大丈夫」
「大丈夫じゃないんだけど⋯!」
全然悪びれもしない伊織くんに小さくため息がこぼれる。
私のリアクションを見て楽しんでいるに違いない。
だけどこんなふうに伊織くんからの独占欲を向けられる私はなんて幸せなんだろう。
誰もが彼からの寵愛を受けたいと願っているはずなのに、その座をこんな形で射止めてしまった私は凄まじい強運の持ち主なのかもしれない。
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