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東雲家へ 1

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10月の下旬に差しかかったある日の土曜日。
中旬に予定していた締切をパスした私はつかの間の休息を味わっていた。


締切が終わればまた次の締切がやってくるため、実質終わりというのはゲーム自体が完成した時だ。
気持ちをしっかり伝えあった私たちの生活はほとんど変わらない。


しかし一つだけ、大きく変わったことがある。
それは伊織くんの私に対する態度だ。


「心春、もう起きるのか?」

「起きて準備しないと間に合わなくなるよ?」


今日は伊織くんのお父さんたちの家に招待された日だ。
以前来てくれたのは私たちの家でその時に次はぜひと言ってくれていたのが思いのほか早く実現した。


大きなベッドの中で伊織くんは私を抱きしめたまま全く起き上がろうとしない。
こんなに広いベッドならもう少しゆとりを持って寝てもいいというのに、伊織くんはあの夜から一切の隙間がなくなるくらい私を強く抱きしめる。


「まだ起きたくない」


そう呟きながら伊織くんは私のパジャマの裾に手をかけて捲し上げ、素肌をずーっと指先で撫でた。
くすぐったい感覚が背中に走り、思わず小さな声が漏れる。


「伊織くん?ダメだよ朝から」

「なんでだ?」

「なんでって、昨日の夜もあんなにしたじゃん!」


そう、伊織くんは昨夜も私を激しく求めてくれて気絶するほど濃厚に交わっていた。
3回はしたというのに朝から伊織くんは元気で、その底知れぬ性欲に私は若干引いている。


想いが通じあってからというもの、伊織くんからのお誘いが多すぎて私の身体がついていかない。
愛が重いのか独占欲がすごいのか、彼は毎日のように私を求めてくれる。


「俺の約10年の想いはこんなもんじゃ足りない」

「ちょっとし過ぎだと思うんだけど?」

「心春が可愛すぎるのがダメだと思う。一緒にいたらしたくなるのは当たり前だ」

「開き直ってるよね?!」

「嫌なのか?嫌ならしない。心春の嫌なことは絶対したくないから」

「それは、その⋯⋯嫌では、ないけど⋯」


待ってました、と言わんばかりに伊織くんは満足気に微笑むと私のズボンに手をかけた。
こんなふうに嬉しそうに微笑まれると何も言えなくなる。


耳元で甘く好きだよ、と囁いた伊織くんは私に覆いかぶさり首元にちゅっとキスし、そのまま唇を這わせた───。


***


「大丈夫か?」

「誰のせいだと思ってるのかな、ほんとに」


ベッドから起き上がった私は全身が筋肉痛だ。
その原因は紛れもなく伊織くんとのセックスのせいだというのに、彼はとてもスッキリとした表情で活き活きしている。


大好きだと伝えて行動で示してくれるのはすごく嬉しいが、あまりにもその愛が重くて私の身体がついていかない。
一瞬絶倫、という言葉が頭をよぎる。


(ちょっと回数減らしてもらおうかな⋯)


腰をさする私の身体を後ろから抱きしめた伊織くんは首元にちゅっと甘く口付けを落とす。
それだけで一気に場の空気が甘くなりまた流されそうになるのが分かる。


「だめ!伊織くん、ちょっと距離取ろうよ。伊織くんすぐキスするしその、襲うし、スキンシップが激しすぎて心臓がもたないよ」

「嫌だ。ずっと触れられなくてやっとこうして俺の手で触れられて、俺のものになったのに離れるなんて無理。断る」


きっぱり潔く断る伊織くんを見ていると逆に気持ちよく思える。
しばらく私の身体が休まる日は来なさそうだ。


伊織くんから離れた私は一定の距離を保ちつつ、身支度を始めた。
彼はそんな私を見て不満そうに口を尖らせながら渋々準備を始める。
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