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伊織side 〈心春のために〉 3
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紅茶を注いだカップを持って心春に渡し、隣のソファに腰をかけるとお風呂から出たばかりのためかシャンプーの香りが漂い心が乱される。
平常心を装いながらチラッと心春の様子を伺った。
「忙しいのは分かるが最近寝るのが遅いみたいで心配だ」
「大丈夫だよ伊織くん。心配症だね」
「心配するのは当たり前だ」
顔色を伺うように心春の頬に手を添えた。
お風呂に入って眠気も飛んだのかしっかりと俺を見つめてキョトンとした顔をしている。
顔色は悪くなく血色はいいようで安心した。
プログラミングは締切が迫るとこのように時間に追われることが多い仕事ではある。
体調が悪くなってしまっては元も子もないため身体を第1に考えて欲しいが、責任感の強い心春はそう言っても言うことを聞いてくれないだろう。
こういう時に俺は無力だと感じた。
「そうやって言ってくれるだけで嬉しいよ」
頬に添えた手に心春は自らの手を重ねると小さく微笑んだ。
最近ほんの少しだけ心春との距離が縮まった気がする。
「さ、明日も早いだろ?ベッドに入ろう」
「うん」
紅茶を飲みきった後、2人で洗面所で歯を磨き寝支度を整え揃ってベッドに入る。
心春は同時にドライヤーで髪を乾かし終えていた。
最近は何も言わずに心春を抱きしめて寝るのが習慣となっていて、心春もそれを受け入れてくれているようで少なくとも嫌われてはいなさそうだ。
柔らかい身体を抱きしめて眠ると寝心地もよく朝の寝起きもすごくよかった。
きっと心春の体温や一定の心音がリラックスさせてくれるんだと思う。
心春を抱きしめる力を強め想いがバレてもいいと思いながら彼女に向かって気持ちを囁いた。
「会社で何か困ったことがあれば俺に言ってくれ」
「でも⋯伊織くんにばっか頼っちゃダメだと思うんだよね」
「頼られないのも寂しいぞ」
心春にはなんでも言って欲しいしどんなことでも力になりたい。
俺の使えるもの全て使ってでも心春の障害を取り払う覚悟だってある。
「自分でできることは自分でしたいの」
「かっこいいな心春は」
「ふふふありがと」
抱きしめたまま心春の髪を撫でるとゆっくりと目を閉じ小さな寝息を立て始めた。
穏やかに眠るその姿は俺しか見れない姿で、この愛しい眠る顔を今後とずっと守っていきたいと思う。
***
翌朝、いつものように起きて会社に出勤する。
心春よりもほんの少しだけ早く家を出るが、彼女は毎朝俺のために朝食の準備をしてくれて必ず見送ってくれる。
それが朝の楽しみになっていて、起きるのが楽しみだった。
会社には専務取締役としての個室が与えられており、基本的にはそこで代表取締役の父さんのサポートをしている。
与えられた個室はパソコンが広げられたデスクと応接間としても使えるような長方形の重厚感のある机と長ソファが向かい合うように鎮座していた。
そんな俺の仕事場に、ある人物を朝から呼び出している。
出勤して朝一にメールなどを確認していると扉をノックする音が聞こえた。
はい、と返事をするとそこから現れたのは高校の同級生で心春のチームリーダーである翔だった。
「専務、呼ばれてきたんですけど」
「冗談はやめろ翔」
「え~いいじゃん付き合ってくれてもさ。伊織に合わせていつもより早く出勤したんだよ俺」
翔は遠慮もせずにどかっとソファに座り眠そうにあくびをしていた。
確かに翔も心春と同じような時間に出勤すれば間に合うというのに、俺が呼び出したことでいつもより早く来る羽目になっている。
そこに関しては申し訳なくは思うが、話したいことがあったため仕方ない。
翔の向かい側のソファに俺も座り、ラフな雰囲気で話をする。
平常心を装いながらチラッと心春の様子を伺った。
「忙しいのは分かるが最近寝るのが遅いみたいで心配だ」
「大丈夫だよ伊織くん。心配症だね」
「心配するのは当たり前だ」
顔色を伺うように心春の頬に手を添えた。
お風呂に入って眠気も飛んだのかしっかりと俺を見つめてキョトンとした顔をしている。
顔色は悪くなく血色はいいようで安心した。
プログラミングは締切が迫るとこのように時間に追われることが多い仕事ではある。
体調が悪くなってしまっては元も子もないため身体を第1に考えて欲しいが、責任感の強い心春はそう言っても言うことを聞いてくれないだろう。
こういう時に俺は無力だと感じた。
「そうやって言ってくれるだけで嬉しいよ」
頬に添えた手に心春は自らの手を重ねると小さく微笑んだ。
最近ほんの少しだけ心春との距離が縮まった気がする。
「さ、明日も早いだろ?ベッドに入ろう」
「うん」
紅茶を飲みきった後、2人で洗面所で歯を磨き寝支度を整え揃ってベッドに入る。
心春は同時にドライヤーで髪を乾かし終えていた。
最近は何も言わずに心春を抱きしめて寝るのが習慣となっていて、心春もそれを受け入れてくれているようで少なくとも嫌われてはいなさそうだ。
柔らかい身体を抱きしめて眠ると寝心地もよく朝の寝起きもすごくよかった。
きっと心春の体温や一定の心音がリラックスさせてくれるんだと思う。
心春を抱きしめる力を強め想いがバレてもいいと思いながら彼女に向かって気持ちを囁いた。
「会社で何か困ったことがあれば俺に言ってくれ」
「でも⋯伊織くんにばっか頼っちゃダメだと思うんだよね」
「頼られないのも寂しいぞ」
心春にはなんでも言って欲しいしどんなことでも力になりたい。
俺の使えるもの全て使ってでも心春の障害を取り払う覚悟だってある。
「自分でできることは自分でしたいの」
「かっこいいな心春は」
「ふふふありがと」
抱きしめたまま心春の髪を撫でるとゆっくりと目を閉じ小さな寝息を立て始めた。
穏やかに眠るその姿は俺しか見れない姿で、この愛しい眠る顔を今後とずっと守っていきたいと思う。
***
翌朝、いつものように起きて会社に出勤する。
心春よりもほんの少しだけ早く家を出るが、彼女は毎朝俺のために朝食の準備をしてくれて必ず見送ってくれる。
それが朝の楽しみになっていて、起きるのが楽しみだった。
会社には専務取締役としての個室が与えられており、基本的にはそこで代表取締役の父さんのサポートをしている。
与えられた個室はパソコンが広げられたデスクと応接間としても使えるような長方形の重厚感のある机と長ソファが向かい合うように鎮座していた。
そんな俺の仕事場に、ある人物を朝から呼び出している。
出勤して朝一にメールなどを確認していると扉をノックする音が聞こえた。
はい、と返事をするとそこから現れたのは高校の同級生で心春のチームリーダーである翔だった。
「専務、呼ばれてきたんですけど」
「冗談はやめろ翔」
「え~いいじゃん付き合ってくれてもさ。伊織に合わせていつもより早く出勤したんだよ俺」
翔は遠慮もせずにどかっとソファに座り眠そうにあくびをしていた。
確かに翔も心春と同じような時間に出勤すれば間に合うというのに、俺が呼び出したことでいつもより早く来る羽目になっている。
そこに関しては申し訳なくは思うが、話したいことがあったため仕方ない。
翔の向かい側のソファに俺も座り、ラフな雰囲気で話をする。
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