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東雲伊織の妻 5
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「あんたのチームって翔さん以外変人よね。根暗そうなメガネくんにオタク全開女子、翔さんが可哀想。そんな子たちのチームリーダー任されちゃって」
「見た目で人を判断しない方がいいですよ」
「うるさい、そんなことあんたに言われたくないのよ」
「でも尚くんや雛菊ちゃんはあなたたちにそんなふうに言われるような人じゃないです」
高橋さんは私への苛立ちから尚くんたちを悪くいうが、それは話が違うと思う。
怒りの矛先は私だけに向けるべきだというのに。
「口答えしないでもらえる?こっちは先輩なのよ」
「でも⋯⋯」
「でもじゃないのよ。分かった?」
先輩という盾を使われるが私はこの人たちを先輩として尊敬したいとは全く思わなかった。
こんな自分勝手な言葉を並べて、容姿で人を判断するような人を尊敬なんてできるわけない。
「東雲さんと結婚したからって図に乗らないで」
「そんなつもりないです」
「今のままだと、あんた大変なことになるかもよ?」
「⋯脅しってことですか?」
「まさか。心配、してあげてるのよあなたのことを」
伊織くんがとてもモテるのは知っていたつもりだけどこんなふうに人から直接妬まれるとは思ってもいなかった。
東雲伊織の妻という立場になると、こういう経験を今後もする可能性があるということだ。
あまり厄介なことに巻き込まれたくないのが本心だった。
伊織くんに知られれば心配されるだろうし、彼に必要以上に心配をかけたくない。
「ねえ、あんたがちゃんと実力で入社したって証明してみせてよ」
「⋯どうやってですか?」
「そうね⋯例えば、今私が任されてるプログラミングがあるんだけど、それ1週間後が締切だからそれまでにやってくれない?」
「⋯⋯」
何かいちゃもんをつけられているような気もするが、伊織くんと結婚したことでただでさえでも目立ってしまっているため、これ以上何かを起こして目立ちたくない。
ここは黙って引き受けるべきだろうか。
「今どんな状況ですか?」
「剣と魔法のカタストロフィの次作販売までのカウントダウンをホームページで作る必要があるんだけど、それをあんたにやってもらおうと思ってる。まだ何も手をつけてないから1からスタートよ」
あと1週間しかないというのに何も手をつけていないなんてどういうつもりなんだろう。
最悪、1週間で間に合わない可能性だって大いにある。
しかし仕事で任されている以上、間に合いませんでしたでは済まないことだってあるはずだ。
自分のチームの締切もあるが、今ここでこれを拒否すればまた面倒なことになりそうなためそれは避けたい。
「やるの?やらないの?」
「私がそれをこなせたらもうこういうことはしないとお願いできますか?」
「いいわよ、できたらもうこんなこと2度としないわ」
「⋯⋯分かりました。やります」
「じゃあ頼んだわよ」
不敵に微笑んだ山田さんは私の肩にぽんっと手を置き耳元に顔を寄せてくる。
何を言われるかと思い身構えると小さく耳元で微笑み、腹の底に響く低い声が聞こえてきた。
「余計なこと、東雲さんや翔さんに言うんじゃないわよ」
「分かってます」
元々心配や迷惑をかけたくなくて言うつもりなんてなかった。
1人でどうにかできることだし自分でなんとかするつもりだ。
ガチャっと扉を開けて会議室を出ていく2人の背中を見つめ、私も時間差で会議室を出る。
翔くんのお昼ご飯も買いに行くつもりで出たというのにかなり時間を取られてしまった。
「あれ、心春ちゃん?」
再び廊下に出てキッチンカーに向かうため歩き出すと、後ろから翔くんの声が聞こえてきた。
私の元まで足早に近づいてくる翔くんはキョトンとした表情で私を顔を覗き込む。
「見た目で人を判断しない方がいいですよ」
「うるさい、そんなことあんたに言われたくないのよ」
「でも尚くんや雛菊ちゃんはあなたたちにそんなふうに言われるような人じゃないです」
高橋さんは私への苛立ちから尚くんたちを悪くいうが、それは話が違うと思う。
怒りの矛先は私だけに向けるべきだというのに。
「口答えしないでもらえる?こっちは先輩なのよ」
「でも⋯⋯」
「でもじゃないのよ。分かった?」
先輩という盾を使われるが私はこの人たちを先輩として尊敬したいとは全く思わなかった。
こんな自分勝手な言葉を並べて、容姿で人を判断するような人を尊敬なんてできるわけない。
「東雲さんと結婚したからって図に乗らないで」
「そんなつもりないです」
「今のままだと、あんた大変なことになるかもよ?」
「⋯脅しってことですか?」
「まさか。心配、してあげてるのよあなたのことを」
伊織くんがとてもモテるのは知っていたつもりだけどこんなふうに人から直接妬まれるとは思ってもいなかった。
東雲伊織の妻という立場になると、こういう経験を今後もする可能性があるということだ。
あまり厄介なことに巻き込まれたくないのが本心だった。
伊織くんに知られれば心配されるだろうし、彼に必要以上に心配をかけたくない。
「ねえ、あんたがちゃんと実力で入社したって証明してみせてよ」
「⋯どうやってですか?」
「そうね⋯例えば、今私が任されてるプログラミングがあるんだけど、それ1週間後が締切だからそれまでにやってくれない?」
「⋯⋯」
何かいちゃもんをつけられているような気もするが、伊織くんと結婚したことでただでさえでも目立ってしまっているため、これ以上何かを起こして目立ちたくない。
ここは黙って引き受けるべきだろうか。
「今どんな状況ですか?」
「剣と魔法のカタストロフィの次作販売までのカウントダウンをホームページで作る必要があるんだけど、それをあんたにやってもらおうと思ってる。まだ何も手をつけてないから1からスタートよ」
あと1週間しかないというのに何も手をつけていないなんてどういうつもりなんだろう。
最悪、1週間で間に合わない可能性だって大いにある。
しかし仕事で任されている以上、間に合いませんでしたでは済まないことだってあるはずだ。
自分のチームの締切もあるが、今ここでこれを拒否すればまた面倒なことになりそうなためそれは避けたい。
「やるの?やらないの?」
「私がそれをこなせたらもうこういうことはしないとお願いできますか?」
「いいわよ、できたらもうこんなこと2度としないわ」
「⋯⋯分かりました。やります」
「じゃあ頼んだわよ」
不敵に微笑んだ山田さんは私の肩にぽんっと手を置き耳元に顔を寄せてくる。
何を言われるかと思い身構えると小さく耳元で微笑み、腹の底に響く低い声が聞こえてきた。
「余計なこと、東雲さんや翔さんに言うんじゃないわよ」
「分かってます」
元々心配や迷惑をかけたくなくて言うつもりなんてなかった。
1人でどうにかできることだし自分でなんとかするつもりだ。
ガチャっと扉を開けて会議室を出ていく2人の背中を見つめ、私も時間差で会議室を出る。
翔くんのお昼ご飯も買いに行くつもりで出たというのにかなり時間を取られてしまった。
「あれ、心春ちゃん?」
再び廊下に出てキッチンカーに向かうため歩き出すと、後ろから翔くんの声が聞こえてきた。
私の元まで足早に近づいてくる翔くんはキョトンとした表情で私を顔を覗き込む。
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