62 / 186
東雲伊織の妻 4
しおりを挟む
「俺は牧さんに進捗報告してくる」
「翔くんお昼はもう決めてる?」
「もしかして俺の分まで買ってきてくれようとしてる?」
「うん、してる」
神様だ~心春ちゃん、と言って大袈裟に喜ぶ翔くんを尚くんは呆れたような目で見ていた。
それに気づいた翔くんは尚くんの首に腕を回し、尚もそう思うだろ、と無理やり頷かせようとする。
「私、人気のロコモコ丼にしようかと思ってるんだけど」
「俺も同じので!ありがとね心春ちゃん」
「いいよ、すぐ買ってくるね」
「こはるん気をつけてくださいね!」
スマートフォンを持ち結んでいた髪を解き会社のすぐ近くで営むキッチンカーへと向かう。
雛菊ちゃんたちに見送られながら私はフロアを出て長い廊下を歩いた。
しっかり社員証も持っているためセキュリティの通過は簡単だし、この社員証があると少し割引をしてもらえる。
そのためこの社員証は必須だった。
お腹空いたな、なんて悠長に考えながら歩いていると向かい側から2人組の女性社員が歩いてくる。
確か同じフロアで働くゲームチームの同僚だがあまり喋ったことがないため一応会釈だけして通り過ぎようとすると突然声をかけられた。
「ねえ!」
「は、はい!なんでしょう?」
「ちょっと話したいことがあるんだけど、いい?」
「あ、はい⋯」
私たち3人は近くの空いていた会議室へと入る。
今日は会議がなく使っていない部屋のため机などは端に寄せられており、とても殺風景な景色が広がった。
2人が私を見つめる視線は確実にいいものではない。
放たれる雰囲気も軽蔑や不快感などが近いような気がする。
「あの⋯なんの用でしょうか?」
「東雲さんと結婚してるって本当なの?」
まさか噂の真相を聞くためだけに私をここに呼び出したのだろうか。
いや、きっと理由はそれだけじゃないだろう。
明らかに2人から放たれる空気は私に敵意を向けているようだし、これだけで終わるとは思えなかった。
「本当です」
「なんであんたみたいな普通の子が東雲さんの⋯」
「どうやって取り入ったわけ?身体でも使った?」
「いや、そんなことはしてないです」
確かこの2人は同じゲームチームの山田さんと高橋さんという人たちだ。
おそらくゲームチームの中では比較的目立つ容姿の人で、山田さんの髪は明るく長い栗色をしており高橋さんはグレーのような色味の肩ほどの長さをしている。
身だしなみの規定がこの会社はほとんどないためかなり自由度は高い。
メイクもばっちりしており服装もしっかりイマドキ女子な感じで普段はあまり関わることがないタイプの2人だ。
「東雲さんってこの会社でめちゃくちゃ人気の人だって知ってた?」
「いや、知らなかったです」
「中途で入ってきたかと思えば東雲さんの結婚相手って絶対なんか汚いことしたでしょ?ありえないんだけど」
「私は何も⋯⋯」
(お金のために結婚を了承しました、なんて言えないし、ここはとりあえず黙ってやり過ごそう⋯)
「コネなのかなんなのか知らないけど調子乗らないでもらえる?」
山田さんに胸ぐらを掴まれ至近距離で詰められると思わず後ずさってしまう。
なるほど、伊織くんは確かに整った顔立ちで昔からモテていたけどそれは今も同じで会社内でも狙っている人がごまんといたというわけか。
きっとこの2人もその1人で、実際結婚していたことを知ってショックだったのだろう。
それがましてや突然現れた中途採用の私で、結婚とタイミングが被っての入社であればそれは疑われても仕方ない。
「翔くんお昼はもう決めてる?」
「もしかして俺の分まで買ってきてくれようとしてる?」
「うん、してる」
神様だ~心春ちゃん、と言って大袈裟に喜ぶ翔くんを尚くんは呆れたような目で見ていた。
それに気づいた翔くんは尚くんの首に腕を回し、尚もそう思うだろ、と無理やり頷かせようとする。
「私、人気のロコモコ丼にしようかと思ってるんだけど」
「俺も同じので!ありがとね心春ちゃん」
「いいよ、すぐ買ってくるね」
「こはるん気をつけてくださいね!」
スマートフォンを持ち結んでいた髪を解き会社のすぐ近くで営むキッチンカーへと向かう。
雛菊ちゃんたちに見送られながら私はフロアを出て長い廊下を歩いた。
しっかり社員証も持っているためセキュリティの通過は簡単だし、この社員証があると少し割引をしてもらえる。
そのためこの社員証は必須だった。
お腹空いたな、なんて悠長に考えながら歩いていると向かい側から2人組の女性社員が歩いてくる。
確か同じフロアで働くゲームチームの同僚だがあまり喋ったことがないため一応会釈だけして通り過ぎようとすると突然声をかけられた。
「ねえ!」
「は、はい!なんでしょう?」
「ちょっと話したいことがあるんだけど、いい?」
「あ、はい⋯」
私たち3人は近くの空いていた会議室へと入る。
今日は会議がなく使っていない部屋のため机などは端に寄せられており、とても殺風景な景色が広がった。
2人が私を見つめる視線は確実にいいものではない。
放たれる雰囲気も軽蔑や不快感などが近いような気がする。
「あの⋯なんの用でしょうか?」
「東雲さんと結婚してるって本当なの?」
まさか噂の真相を聞くためだけに私をここに呼び出したのだろうか。
いや、きっと理由はそれだけじゃないだろう。
明らかに2人から放たれる空気は私に敵意を向けているようだし、これだけで終わるとは思えなかった。
「本当です」
「なんであんたみたいな普通の子が東雲さんの⋯」
「どうやって取り入ったわけ?身体でも使った?」
「いや、そんなことはしてないです」
確かこの2人は同じゲームチームの山田さんと高橋さんという人たちだ。
おそらくゲームチームの中では比較的目立つ容姿の人で、山田さんの髪は明るく長い栗色をしており高橋さんはグレーのような色味の肩ほどの長さをしている。
身だしなみの規定がこの会社はほとんどないためかなり自由度は高い。
メイクもばっちりしており服装もしっかりイマドキ女子な感じで普段はあまり関わることがないタイプの2人だ。
「東雲さんってこの会社でめちゃくちゃ人気の人だって知ってた?」
「いや、知らなかったです」
「中途で入ってきたかと思えば東雲さんの結婚相手って絶対なんか汚いことしたでしょ?ありえないんだけど」
「私は何も⋯⋯」
(お金のために結婚を了承しました、なんて言えないし、ここはとりあえず黙ってやり過ごそう⋯)
「コネなのかなんなのか知らないけど調子乗らないでもらえる?」
山田さんに胸ぐらを掴まれ至近距離で詰められると思わず後ずさってしまう。
なるほど、伊織くんは確かに整った顔立ちで昔からモテていたけどそれは今も同じで会社内でも狙っている人がごまんといたというわけか。
きっとこの2人もその1人で、実際結婚していたことを知ってショックだったのだろう。
それがましてや突然現れた中途採用の私で、結婚とタイミングが被っての入社であればそれは疑われても仕方ない。
2
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
年上幼馴染の一途な執着愛
青花美来
恋愛
二股をかけられた挙句フラれた夕姫は、ある年の大晦日に兄の親友であり幼馴染の日向と再会した。
一途すぎるほどに一途な日向との、身体の関係から始まる溺愛ラブストーリー。
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」
三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。
一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。
「忘れたとは言わせねぇぞ?」
偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。
「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」
その溺愛からは、もう逃れられない。
*第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる