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結婚のご挨拶 1
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翌日、目を覚ますと目の前に広がるのは天井⋯⋯ではなく、がっしりとした厚い胸板だった。
どうやら私は朝までしっかりと伊織くんに抱きしめられていたようで、大切そうに私のことを包み込んでくれている。
そんな朝を迎えられることに私は幸せを噛み締めていた。
目を閉じていても分かるくらい伊織くんは整った顔立ちをしていてまつ毛が顔に影を作っている。
伊織くんの表情を見つめて私は昨日の夜のことを思い出していた。
触れるだけのキスから始まり、一瞬だけ絡み合った舌の熱が今でも鮮明に覚えていて蘇るだけで顔が熱くなり心臓の鼓動が早まる。
本当は聞きたい、あのキスの意味を。
だけどそれを聞いて伊織くんの本心を知るくらいならこの契約結婚のまま曖昧な距離感を保つくらいの方がいいのかもしれない。
「んん⋯⋯」
「⋯おはよう。伊織くん」
腕の中で見上げる私と視線が交わった伊織くんは一瞬目を見開きこの状況に驚いているようだった。
抱きしめているのは伊織くんだというのになぜそんな驚いた表情をするのか。
「なんで驚いてるの?」
「いや、こんな距離にいると思わなくて」
「伊織くんがずっと抱きしめてくれてたんだよ」
一晩中伊織くんは私を抱きしめてくれていたようで、そのおかげかすごく寝つきが良かった気がする。
とてつもない大きな安心感に包み込まれているようだった。
私を抱きしめる腕を少しだけ緩めた伊織くんは朝から眩しすぎるくらいの笑顔を見せてくれる。
そんな彼の笑顔を見ると自然と口元に目がいってしまい、自分の下心が見え見えで恥ずかしい。
「おはよう心春」
「ふふ2回目だね」
「こんな可愛い奥さんの顔見れて幸せな朝だな」
こんな朝っぱらから糖分高めなセリフを誰が聞けると思うだろうか。
綺麗な二重の切れ長の目に、端正な顔立ちも相まってセリフの効果が2倍に増幅している。
伊織くんは弄ぶように私の髪の毛に指を絡めながら指先が頬に触れた。
私だけがドキドキさせられている気がして仕返ししてやろうという意地悪な気持ちが私の中に芽ばえる。
そっと手を伸ばし伊織くんの頬に触れた。
たったそれだけなのにビクッと身体を震わせた伊織くんは目を見開いて私のニヤッと微笑む顔を見つめる。
「朝からこんなかっこいい夫の顔見られて、私も幸せだな」
「心春⋯」
こんなセリフ言うつもりなんてなかった。
ただほんの少し、伊織くんの真意の分からないドキドキさせられるセリフに対抗したかっただけの、出来心だったのに。
何かのスイッチを押してしまったのかバサッと起き上がった伊織くんは私の腕をベッドに張り付け組み敷いた。
突然の行動に頭が回らず伊織くんの顔をただ見つめることしかできない。
私を組み敷くその力は紛れもなく男の人で、全くビクともしないのに不思議と恐怖はない。
伊織くんの瞳の奥に一瞬雄っぽい獣のような鋭さが帯びたことを私は見逃さなかった。
「伊織、くん⋯?」
「あんなセリフ、どこで覚えたの?」
「伊織くんが言ったんだよ」
「⋯⋯俺以外に絶対あんなこと言うなよ」
その独占欲は一体どこからやってくるものなのか。
契約結婚の妻に対する感情とは思えない。
伊織くんは私の腕をぎゅっと握る力を強め、そのまま唇に触れるだけのキスを落とした。
そうされると分かっていながら私はそれを受け入れるように目を閉じる。
(今回はしてもいい?って聞いてこなかった⋯⋯)
どうやら私は朝までしっかりと伊織くんに抱きしめられていたようで、大切そうに私のことを包み込んでくれている。
そんな朝を迎えられることに私は幸せを噛み締めていた。
目を閉じていても分かるくらい伊織くんは整った顔立ちをしていてまつ毛が顔に影を作っている。
伊織くんの表情を見つめて私は昨日の夜のことを思い出していた。
触れるだけのキスから始まり、一瞬だけ絡み合った舌の熱が今でも鮮明に覚えていて蘇るだけで顔が熱くなり心臓の鼓動が早まる。
本当は聞きたい、あのキスの意味を。
だけどそれを聞いて伊織くんの本心を知るくらいならこの契約結婚のまま曖昧な距離感を保つくらいの方がいいのかもしれない。
「んん⋯⋯」
「⋯おはよう。伊織くん」
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「なんで驚いてるの?」
「いや、こんな距離にいると思わなくて」
「伊織くんがずっと抱きしめてくれてたんだよ」
一晩中伊織くんは私を抱きしめてくれていたようで、そのおかげかすごく寝つきが良かった気がする。
とてつもない大きな安心感に包み込まれているようだった。
私を抱きしめる腕を少しだけ緩めた伊織くんは朝から眩しすぎるくらいの笑顔を見せてくれる。
そんな彼の笑顔を見ると自然と口元に目がいってしまい、自分の下心が見え見えで恥ずかしい。
「おはよう心春」
「ふふ2回目だね」
「こんな可愛い奥さんの顔見れて幸せな朝だな」
こんな朝っぱらから糖分高めなセリフを誰が聞けると思うだろうか。
綺麗な二重の切れ長の目に、端正な顔立ちも相まってセリフの効果が2倍に増幅している。
伊織くんは弄ぶように私の髪の毛に指を絡めながら指先が頬に触れた。
私だけがドキドキさせられている気がして仕返ししてやろうという意地悪な気持ちが私の中に芽ばえる。
そっと手を伸ばし伊織くんの頬に触れた。
たったそれだけなのにビクッと身体を震わせた伊織くんは目を見開いて私のニヤッと微笑む顔を見つめる。
「朝からこんなかっこいい夫の顔見られて、私も幸せだな」
「心春⋯」
こんなセリフ言うつもりなんてなかった。
ただほんの少し、伊織くんの真意の分からないドキドキさせられるセリフに対抗したかっただけの、出来心だったのに。
何かのスイッチを押してしまったのかバサッと起き上がった伊織くんは私の腕をベッドに張り付け組み敷いた。
突然の行動に頭が回らず伊織くんの顔をただ見つめることしかできない。
私を組み敷くその力は紛れもなく男の人で、全くビクともしないのに不思議と恐怖はない。
伊織くんの瞳の奥に一瞬雄っぽい獣のような鋭さが帯びたことを私は見逃さなかった。
「伊織、くん⋯?」
「あんなセリフ、どこで覚えたの?」
「伊織くんが言ったんだよ」
「⋯⋯俺以外に絶対あんなこと言うなよ」
その独占欲は一体どこからやってくるものなのか。
契約結婚の妻に対する感情とは思えない。
伊織くんは私の腕をぎゅっと握る力を強め、そのまま唇に触れるだけのキスを落とした。
そうされると分かっていながら私はそれを受け入れるように目を閉じる。
(今回はしてもいい?って聞いてこなかった⋯⋯)
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