【R18/TL】無口で無愛想な旦那様の拗らせ愛は重すぎ注意

春野 カノン

文字の大きさ
上 下
44 / 197

結婚のご挨拶 1

しおりを挟む
翌日、目を覚ますと目の前に広がるのは天井⋯⋯ではなく、がっしりとした厚い胸板だった。
どうやら私は朝までしっかりと伊織くんに抱きしめられていたようで、大切そうに私のことを包み込んでくれている。


そんな朝を迎えられることに私は幸せを噛み締めていた。
目を閉じていても分かるくらい伊織くんは整った顔立ちをしていてまつ毛が顔に影を作っている。


伊織くんの表情を見つめて私は昨日の夜のことを思い出していた。
触れるだけのキスから始まり、一瞬だけ絡み合った舌の熱が今でも鮮明に覚えていて蘇るだけで顔が熱くなり心臓の鼓動が早まる。


本当は聞きたい、あのキスの意味を。
だけどそれを聞いて伊織くんの本心を知るくらいならこの契約結婚のまま曖昧な距離感を保つくらいの方がいいのかもしれない。


「んん⋯⋯」

「⋯おはよう。伊織くん」


腕の中で見上げる私と視線が交わった伊織くんは一瞬目を見開きこの状況に驚いているようだった。
抱きしめているのは伊織くんだというのになぜそんな驚いた表情をするのか。


「なんで驚いてるの?」

「いや、こんな距離にいると思わなくて」

「伊織くんがずっと抱きしめてくれてたんだよ」


一晩中伊織くんは私を抱きしめてくれていたようで、そのおかげかすごく寝つきが良かった気がする。
とてつもない大きな安心感に包み込まれているようだった。


私を抱きしめる腕を少しだけ緩めた伊織くんは朝から眩しすぎるくらいの笑顔を見せてくれる。
そんな彼の笑顔を見ると自然と口元に目がいってしまい、自分の下心が見え見えで恥ずかしい。


「おはよう心春」

「ふふ2回目だね」

「こんな可愛い奥さんの顔見れて幸せな朝だな」


こんな朝っぱらから糖分高めなセリフを誰が聞けると思うだろうか。
綺麗な二重の切れ長の目に、端正な顔立ちも相まってセリフの効果が2倍に増幅している。


伊織くんは弄ぶように私の髪の毛に指を絡めながら指先が頬に触れた。
私だけがドキドキさせられている気がして仕返ししてやろうという意地悪な気持ちが私の中に芽ばえる。


そっと手を伸ばし伊織くんの頬に触れた。
たったそれだけなのにビクッと身体を震わせた伊織くんは目を見開いて私のニヤッと微笑む顔を見つめる。


「朝からこんなかっこいい夫の顔見られて、私も幸せだな」

「心春⋯」


こんなセリフ言うつもりなんてなかった。
ただほんの少し、伊織くんの真意の分からないドキドキさせられるセリフに対抗したかっただけの、出来心だったのに。


何かのスイッチを押してしまったのかバサッと起き上がった伊織くんは私の腕をベッドに張り付け組み敷いた。
突然の行動に頭が回らず伊織くんの顔をただ見つめることしかできない。


私を組み敷くその力は紛れもなく男の人で、全くビクともしないのに不思議と恐怖はない。
伊織くんの瞳の奥に一瞬雄っぽい獣のような鋭さが帯びたことを私は見逃さなかった。


「伊織、くん⋯?」

「あんなセリフ、どこで覚えたの?」

「伊織くんが言ったんだよ」

「⋯⋯俺以外に絶対あんなこと言うなよ」


その独占欲は一体どこからやってくるものなのか。
契約結婚の妻に対する感情とは思えない。


伊織くんは私の腕をぎゅっと握る力を強め、そのまま唇に触れるだけのキスを落とした。
そうされると分かっていながら私はそれを受け入れるように目を閉じる。


(今回はしてもいい?って聞いてこなかった⋯⋯)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです

紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。 夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。 ★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★ ☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆ ※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。  お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

処理中です...