37 / 197
デートのお誘い 3
しおりを挟む
話を変えようと何か話題がないかと考えたとき、ふと思い浮かんだのは着替えのことだった。
何も覚えていないが服が着替えられているということは伊織くんが着替えさせてくれたということだ。
(でも待って、そうってことは…私は裸を見られたってこと?!)
「どうした?」
「私の服、着替えさせてくれたのって伊織くんだよね?」
「そうだったそれを話さないといけないんだった」
口元に手を当てながら自分の表情を隠すように私から視線を逸らす伊織くんの耳元が少しだけ赤く染まったような気がした。
照れてるようにも見えて、それが意外な反応すぎて小さく微笑んでしまう。
「汗で身体が冷えそうだったからな、悪いとは思ったんだが着替えさせた」
「そこまでさせちゃって…ごめん」
「いや、俺の方も勝手に見てしまって悪かった」
「ちょっと恥ずかしいけど、私のためにしてくれたことだって分かってるから謝らないでほしいな。ありがとうね」
(あの日ちゃんと見られてもいいような下着を着ててよかった…)
そんなふうに考えてしまうなんて私はなんていやらしい女なのだろう。
伊織くんにとっては契約の一つで、厚意でやってくれたことだというのに。
彼と話すたびに伊織くんの素顔を知れるのはすごく嬉しいが、それと同時に彼の言葉や行動の意味が分からないことも増えてきた。
私に向けた"特別"という言葉の意味も行ってきますのキスも、契約結婚を私"だから"選んだという言葉も。
全部彼の気持ちを表しているというのに、どれも契約という言葉だけでは片付けられないような気がしてならない。
そんな思考を自分の都合のいい方向に考えようとする私自身もおこがましく思えて図々しい。
あくまでも私はお金のため、伊織くんはお見合い避けなどの理由のための契約結婚なのだからそれを改めて心に刻むべきだ。
そう自分に言い聞かせた。
「なあ心春。次予定が合うときに一緒に出かけないか?」
「うん、もちろんいいけど、どこに出かけるの?何かの手続きとかかな?」
「いや、そういうわけじゃなくて。普通にデートのお誘いだ」
「で、デート?!」
(ほらまたそうやって…女の子が喜びそうな言葉をくれて、手のひらで転がされている気がする)
伊織くんがどういう意味で私をデートに誘ってくれているのかは分からない。
だけど今はもうそんなことは気にせず、単純に彼からの誘いを受け入れたいと思う。
(どんな理由だっていいや。伊織くんとお出かけできるのも、単純に嬉しいし)
彼とのデートを嬉しいと思ってしまう自分にも驚いた。
ほんの少しずつ伊織くんへの印象や抱く気持ちが変わってきていることに気づかないふりをする。
「心春にプレゼントしたいものがたくさんある」
「え、私に?」
「俺がプレゼントしたもので心春を全部染め上げたいんだ」
(何それ……まるで本当に愛しいと想ってる夫から妻への愛の告白のような言葉を私にくれるなんて、伊織くんの考えてることが分かんないよ)
「それで俺だけの可愛い心春を見せてくれ」
そう言いながら優しく微笑む伊織くんの笑顔はあまりにも整っていて綺麗な二重の切れ長の瞳がとても柔らかく歪められている。
くすぐったくなるほどの甘い囁きは私の心をどんどん染め上げていき、きゅんと胸を高鳴らせるには十分すぎるものだった。
少しずつ自分の中で変わりつつある伊織くんへの気持ちをなんとか押し込めようと必死に"契約結婚"という言葉を頭の中で繰り返す。
そうでもしないと簡単に彼に心を奪われてしまいそうだ。
そんな未来、絶対に幸せになれないと分かっているから。
私と伊織くんはただの契約結婚の関係。
それ以上の感情を伊織くんに抱いてしまえばきっと私は……。
───この関係を続けることができない。
何も覚えていないが服が着替えられているということは伊織くんが着替えさせてくれたということだ。
(でも待って、そうってことは…私は裸を見られたってこと?!)
「どうした?」
「私の服、着替えさせてくれたのって伊織くんだよね?」
「そうだったそれを話さないといけないんだった」
口元に手を当てながら自分の表情を隠すように私から視線を逸らす伊織くんの耳元が少しだけ赤く染まったような気がした。
照れてるようにも見えて、それが意外な反応すぎて小さく微笑んでしまう。
「汗で身体が冷えそうだったからな、悪いとは思ったんだが着替えさせた」
「そこまでさせちゃって…ごめん」
「いや、俺の方も勝手に見てしまって悪かった」
「ちょっと恥ずかしいけど、私のためにしてくれたことだって分かってるから謝らないでほしいな。ありがとうね」
(あの日ちゃんと見られてもいいような下着を着ててよかった…)
そんなふうに考えてしまうなんて私はなんていやらしい女なのだろう。
伊織くんにとっては契約の一つで、厚意でやってくれたことだというのに。
彼と話すたびに伊織くんの素顔を知れるのはすごく嬉しいが、それと同時に彼の言葉や行動の意味が分からないことも増えてきた。
私に向けた"特別"という言葉の意味も行ってきますのキスも、契約結婚を私"だから"選んだという言葉も。
全部彼の気持ちを表しているというのに、どれも契約という言葉だけでは片付けられないような気がしてならない。
そんな思考を自分の都合のいい方向に考えようとする私自身もおこがましく思えて図々しい。
あくまでも私はお金のため、伊織くんはお見合い避けなどの理由のための契約結婚なのだからそれを改めて心に刻むべきだ。
そう自分に言い聞かせた。
「なあ心春。次予定が合うときに一緒に出かけないか?」
「うん、もちろんいいけど、どこに出かけるの?何かの手続きとかかな?」
「いや、そういうわけじゃなくて。普通にデートのお誘いだ」
「で、デート?!」
(ほらまたそうやって…女の子が喜びそうな言葉をくれて、手のひらで転がされている気がする)
伊織くんがどういう意味で私をデートに誘ってくれているのかは分からない。
だけど今はもうそんなことは気にせず、単純に彼からの誘いを受け入れたいと思う。
(どんな理由だっていいや。伊織くんとお出かけできるのも、単純に嬉しいし)
彼とのデートを嬉しいと思ってしまう自分にも驚いた。
ほんの少しずつ伊織くんへの印象や抱く気持ちが変わってきていることに気づかないふりをする。
「心春にプレゼントしたいものがたくさんある」
「え、私に?」
「俺がプレゼントしたもので心春を全部染め上げたいんだ」
(何それ……まるで本当に愛しいと想ってる夫から妻への愛の告白のような言葉を私にくれるなんて、伊織くんの考えてることが分かんないよ)
「それで俺だけの可愛い心春を見せてくれ」
そう言いながら優しく微笑む伊織くんの笑顔はあまりにも整っていて綺麗な二重の切れ長の瞳がとても柔らかく歪められている。
くすぐったくなるほどの甘い囁きは私の心をどんどん染め上げていき、きゅんと胸を高鳴らせるには十分すぎるものだった。
少しずつ自分の中で変わりつつある伊織くんへの気持ちをなんとか押し込めようと必死に"契約結婚"という言葉を頭の中で繰り返す。
そうでもしないと簡単に彼に心を奪われてしまいそうだ。
そんな未来、絶対に幸せになれないと分かっているから。
私と伊織くんはただの契約結婚の関係。
それ以上の感情を伊織くんに抱いてしまえばきっと私は……。
───この関係を続けることができない。
3
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【R18・完結】甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
花室 芽苳
恋愛
【本編完結/番外編完結】
この人なら愛せそうだと思ったお見合い相手は、私の妹を愛してしまった。
2人の間を邪魔して壊そうとしたけど、逆に2人の想いを見せつけられて……
そんな時叔父が用意した新しいお見合い相手は大企業の御曹司。
両親と叔父の勧めで、あっという間に俺様御曹司との新婚初夜!?
「夜のお相手は、他の女性に任せます!」
「は!?お前が妻なんだから、諦めて抱かれろよ!」
絶対にお断りよ!どうして毎夜毎夜そんな事で喧嘩をしなきゃならないの?
大きな会社の社長だからって「あれするな、これするな」って、偉そうに命令してこないでよ!
私は私の好きにさせてもらうわ!
狭山 聖壱 《さやま せいいち》 34歳 185㎝
江藤 香津美 《えとう かつみ》 25歳 165㎝
※ 花吹は経営や経済についてはよくわかっていないため、作中におかしな点があるかと思います。申し訳ありません。m(__)m
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる