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伊織side 〈触れたい衝動〉2
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「心春、身体は辛くないのか?」
質問に対して、少しだけ頭が痛いと答えた心春の熱をよりしっかり測るために俺は立ち上がり、驚いた表情の彼女の顔を両手で包み込んだ。
額を合わせるとよりダイレクトに彼女の熱を感じる。
俺に触れられることを予想していなかった心春はひとり動揺しているようだがジッと大人しく受け入れてくれていた。
心春と過ごしたり一緒に向かい合って笑いあえる時間に甘えて彼女のことをもっと注意深く見ていなかった自分に腹が立つ。
「熱がある」
「これくらいなら大丈夫だよ、まだ片付けもあるから」
熱があると自覚してもなお、心春は家事を続けようとする。
椅子からガタッと立ち上がった彼女の身体が大きくグラリと傾き倒れそうになったところを間一髪支えた。
細くて触れただけでも壊れてしまいそうな華奢な身体を抱きかかえ、俺はそのままお姫様抱っこする。
俺の腕にすっぽりと包み込まれた身体は全体的に柔らかく不思議といい香りもした。
服越しにも伝わってくる熱に俺は早々に彼女を休ませるため寝室へと運んだ。
大人しく俺の腕の中でじっとしている心春の頬は赤く火照っており、それが熱によるものなのかそれとも、俺に触れられているからなのかは分からない。
そっとベッドの上に心春を寝かせると、とろんとした視線と絡み合った。
熱が上がってきたのかいつもに増して色っぽい表情にゴクッと生唾を飲み込む。
「とりあえず休むんだ。着替えはどこにある?」
「部屋の1番下のタンスの中⋯」
「勝手に入って悪いが取りに行ってくる。ここで待ってろ」
「ごめんね⋯」
いつもより元気がないその返事に心が痛む。
ここまで発熱してしまうほど彼女の体調の変化に気づけなかった自分に腹が立った。
きっと俺に心配かけまいとギリギリまで我慢していたんだろう。
俺たちが本当の夫婦じゃないから、そんなことさえ言おうとしてくれない。
それが悔しくて自分が情けなくてより腹が立つ。
部屋を出た俺はそのままの足で心春の部屋に足を踏み入れた。
部屋の中の色味はリビングたちと同じような配色を使用しているためグレーや白を基調としているものの、カーテンは心春の希望のラベンダー色のものを用意している。
そのためか他の部屋よりも明るい雰囲気を感じると同時に心春の身体からも香ったほんのり甘い香りが部屋中を埋めつくしていた。
心春の部屋はとてもシンプルで部屋にはほとんど物がない。
仕事用のモニターやパソコンが置かれている白いデスクと部屋の中央に置かれているテーブル、そしてライトしか置かれていない。
元々部屋についているウォークインクローゼットにも少しだけ服がハンガーにかけられており、更にはタンスも置かれているがその中にもあまり服は入っていなかった。
心春の部屋に入ったのは初めてだったがまさかここまで物が少ないとは思っていなかった。
彼女の風邪が治ったらたっぷり服などを買ってあげようと思う。
かなりプライベートなタンスの中を開けることに少し罪悪感を感じながらもそっと手をかけた。
中は綺麗に整頓されており心春から聞いた場所を確認するとそこにはハーフパンツのセットアップが入っている。
それと常備薬として置いてある風邪薬、コップ1杯の水を手に心春が待つ寝室へ戻ると俺の顔を見た途端、安心しきったように笑みを浮かべた。
だがそれと同時に眉を八の字にさせ口を噤む。
「伊織くん、ごめんね。明日ご両親に挨拶の予定だったのに」
「そんなこと気にするな。心春の身体が第一だよ」
「でも⋯⋯」
「どんなことよりも俺は心春が大切だ。まずはちゃんと治すことだけ考えればいい。それより薬。飲むんだ」
なんだそんなことか、と正直思った。
俺にとっては心春が第一のため、そんなことちっとも気にしていない。
薬を受け取った心春はゴクッとそれを飲み干す。
質問に対して、少しだけ頭が痛いと答えた心春の熱をよりしっかり測るために俺は立ち上がり、驚いた表情の彼女の顔を両手で包み込んだ。
額を合わせるとよりダイレクトに彼女の熱を感じる。
俺に触れられることを予想していなかった心春はひとり動揺しているようだがジッと大人しく受け入れてくれていた。
心春と過ごしたり一緒に向かい合って笑いあえる時間に甘えて彼女のことをもっと注意深く見ていなかった自分に腹が立つ。
「熱がある」
「これくらいなら大丈夫だよ、まだ片付けもあるから」
熱があると自覚してもなお、心春は家事を続けようとする。
椅子からガタッと立ち上がった彼女の身体が大きくグラリと傾き倒れそうになったところを間一髪支えた。
細くて触れただけでも壊れてしまいそうな華奢な身体を抱きかかえ、俺はそのままお姫様抱っこする。
俺の腕にすっぽりと包み込まれた身体は全体的に柔らかく不思議といい香りもした。
服越しにも伝わってくる熱に俺は早々に彼女を休ませるため寝室へと運んだ。
大人しく俺の腕の中でじっとしている心春の頬は赤く火照っており、それが熱によるものなのかそれとも、俺に触れられているからなのかは分からない。
そっとベッドの上に心春を寝かせると、とろんとした視線と絡み合った。
熱が上がってきたのかいつもに増して色っぽい表情にゴクッと生唾を飲み込む。
「とりあえず休むんだ。着替えはどこにある?」
「部屋の1番下のタンスの中⋯」
「勝手に入って悪いが取りに行ってくる。ここで待ってろ」
「ごめんね⋯」
いつもより元気がないその返事に心が痛む。
ここまで発熱してしまうほど彼女の体調の変化に気づけなかった自分に腹が立った。
きっと俺に心配かけまいとギリギリまで我慢していたんだろう。
俺たちが本当の夫婦じゃないから、そんなことさえ言おうとしてくれない。
それが悔しくて自分が情けなくてより腹が立つ。
部屋を出た俺はそのままの足で心春の部屋に足を踏み入れた。
部屋の中の色味はリビングたちと同じような配色を使用しているためグレーや白を基調としているものの、カーテンは心春の希望のラベンダー色のものを用意している。
そのためか他の部屋よりも明るい雰囲気を感じると同時に心春の身体からも香ったほんのり甘い香りが部屋中を埋めつくしていた。
心春の部屋はとてもシンプルで部屋にはほとんど物がない。
仕事用のモニターやパソコンが置かれている白いデスクと部屋の中央に置かれているテーブル、そしてライトしか置かれていない。
元々部屋についているウォークインクローゼットにも少しだけ服がハンガーにかけられており、更にはタンスも置かれているがその中にもあまり服は入っていなかった。
心春の部屋に入ったのは初めてだったがまさかここまで物が少ないとは思っていなかった。
彼女の風邪が治ったらたっぷり服などを買ってあげようと思う。
かなりプライベートなタンスの中を開けることに少し罪悪感を感じながらもそっと手をかけた。
中は綺麗に整頓されており心春から聞いた場所を確認するとそこにはハーフパンツのセットアップが入っている。
それと常備薬として置いてある風邪薬、コップ1杯の水を手に心春が待つ寝室へ戻ると俺の顔を見た途端、安心しきったように笑みを浮かべた。
だがそれと同時に眉を八の字にさせ口を噤む。
「伊織くん、ごめんね。明日ご両親に挨拶の予定だったのに」
「そんなこと気にするな。心春の身体が第一だよ」
「でも⋯⋯」
「どんなことよりも俺は心春が大切だ。まずはちゃんと治すことだけ考えればいい。それより薬。飲むんだ」
なんだそんなことか、と正直思った。
俺にとっては心春が第一のため、そんなことちっとも気にしていない。
薬を受け取った心春はゴクッとそれを飲み干す。
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