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契約結婚 1
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"結婚しよう"そう甘く囁いた彼は私の恋人でもない、ただの同級生だった。
突然のプロポーズに私は動揺することしかできず、返事すら保留にしてもらっている。
東雲くんの提案から1週間、今日は仕事終わりに彼と会う約束をしていた。
彼の提案はとても分かりやすく簡単なものだ。
提案内容はこの先、私にかかる全てのお金を東雲くんが出してくれるということ。
それは私個人にかかるものだけでなく、弟の学費や生活費全てを含むらしい。
逆に私が働くお金は私の自由に使ってもいいとのことで、もちろんそれを弟の学費に費やすのも自分に使うのも好きにしていいとのことだ。
どうして彼がそこまでしてくれるのか、それが気になり聞いてみると彼なりの理由を話してくれた。
いい年齢のため結婚を勧められ面倒に思っており、女避けやお見合い避けのために結婚することが彼にとっては都合がいいらしい。
お互いの利益が一致している状態のためその提案をしてくれたとのことだ。
そんな理由で簡単に結婚なんてしていいもんなのだろうか。
だけど私がそれをどうこう言える立場にいないことは分かっている。
高校の同級生であれば突然の結婚でも違和感はほとんどないし、話を詰められたとしてもどうにでもなりやすい。
それに私としてはお金を助けてくれることが何よりも大きい報酬だ。
お金に目がくらみ、私は彼の提案を受けようとしている。
ただ1つ、この契約結婚の破談条件を提示されていた。
お互いに本当に好きな人ができた時は潔く離婚する、というのが条件だ。
東雲くんは無口で無愛想だが顔はすごく整っているためかなりモテるはず。
すぐに好きな人ができて私との結婚は破談になりそうな予感がしている。
それであれば短い時間でも甘えられるところは甘えてみようか、というのも私がこの提案に乗る1つの理由だ。
「こはるん、顔が暗いですよどうしたんですか?」
「え、そう?普通だよ」
「いや絶対普通じゃないです。パソコン見てる顔がめちゃくちゃ険しかったです。まさか攻略キャラとうまくいってないんですか?」
翔くんと尚くんはお昼休憩に先に行っており、私と雛菊ちゃんは残って作業を続けている。
私の顔を覗き込んで心配そうに眉を八の字にさせるのは乙女ゲームオタクの同僚だ。
乙女ゲームオタクである彼女なら私のような状況のゲームをやったことあるかもしれない。
そう思った私は雛菊ちゃんに何気なく聞いてみる。
「雛菊ちゃんさ、今まで契約結婚系の乙女ゲームとかやったことある?」
「もちろんですよ!そのジャンルが好きなんですか?」
「いや、好きというかその、少し気になって」
「なるほど⋯いいですね。オススメですよ。イケメンとひとつ屋根の下、契約結婚がスタートしていつの間にか想い合う関係になる、王道ですが人気の設定です」
「そ、そうなんだ。雛菊ちゃん的にはありってこと?」
「大ありですよ!実際にあるなら体験してみたいくらいです!」
思ったよりノリノリな雛菊ちゃんに圧倒されるものの、意外といい展開なのでは?と思わせてくれた。
乙女ゲームのような夢のような展開なのであれば、それに身を任せてみるのもいいかもしれない。
私にとってのデメリットは一切ないし、なんならメリットしかないのだから。
そんなことを考えながら再び作業を再開するとお昼から戻ってきた翔くんたちの姿が見えた。
「お先~心春ちゃんと雛菊もよければお昼行ってきてな」
「うん、ありがとう」
突然のプロポーズに私は動揺することしかできず、返事すら保留にしてもらっている。
東雲くんの提案から1週間、今日は仕事終わりに彼と会う約束をしていた。
彼の提案はとても分かりやすく簡単なものだ。
提案内容はこの先、私にかかる全てのお金を東雲くんが出してくれるということ。
それは私個人にかかるものだけでなく、弟の学費や生活費全てを含むらしい。
逆に私が働くお金は私の自由に使ってもいいとのことで、もちろんそれを弟の学費に費やすのも自分に使うのも好きにしていいとのことだ。
どうして彼がそこまでしてくれるのか、それが気になり聞いてみると彼なりの理由を話してくれた。
いい年齢のため結婚を勧められ面倒に思っており、女避けやお見合い避けのために結婚することが彼にとっては都合がいいらしい。
お互いの利益が一致している状態のためその提案をしてくれたとのことだ。
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だけど私がそれをどうこう言える立場にいないことは分かっている。
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それに私としてはお金を助けてくれることが何よりも大きい報酬だ。
お金に目がくらみ、私は彼の提案を受けようとしている。
ただ1つ、この契約結婚の破談条件を提示されていた。
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それであれば短い時間でも甘えられるところは甘えてみようか、というのも私がこの提案に乗る1つの理由だ。
「こはるん、顔が暗いですよどうしたんですか?」
「え、そう?普通だよ」
「いや絶対普通じゃないです。パソコン見てる顔がめちゃくちゃ険しかったです。まさか攻略キャラとうまくいってないんですか?」
翔くんと尚くんはお昼休憩に先に行っており、私と雛菊ちゃんは残って作業を続けている。
私の顔を覗き込んで心配そうに眉を八の字にさせるのは乙女ゲームオタクの同僚だ。
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そう思った私は雛菊ちゃんに何気なく聞いてみる。
「雛菊ちゃんさ、今まで契約結婚系の乙女ゲームとかやったことある?」
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「いや、好きというかその、少し気になって」
「なるほど⋯いいですね。オススメですよ。イケメンとひとつ屋根の下、契約結婚がスタートしていつの間にか想い合う関係になる、王道ですが人気の設定です」
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私にとってのデメリットは一切ないし、なんならメリットしかないのだから。
そんなことを考えながら再び作業を再開するとお昼から戻ってきた翔くんたちの姿が見えた。
「お先~心春ちゃんと雛菊もよければお昼行ってきてな」
「うん、ありがとう」
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