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プロポーズ 2

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家までの帰路に着いた私は散歩がてら、少しだけ遠回りをすることにした。
7月に入ると夜も蒸し暑く、ほんの少しだけ汗がにじみ出る。


ジャッケットを脱ぎ腕にかけ、黒いブラウスとブラウンのパンツ姿となった。
遠回りしているため繁華街の近くを通るといろんな人たちが歩いている。


飲みに行こうとする人たち、夜の街に誘おうとする露出高めの女性など色んな人たちがいた。
そんな楽しそうな人たちを見ているとまた寧々ちゃんと飲みに行きたいなと思える。


その中を歩いていると2人組の男性が私に近づいてきた。
スーツ姿で見た目だけはしっかりしており、悪い印象はない。


「お姉さん、1人なんですか?」

「⋯⋯」

「すみません、怪しいですよね。すごい綺麗な人だからつい声をかけてしまいました」


こういう手のナンパはチャラくていきなりタメ口で話しかけられるようなイメージがあったが、この人たちはそうでもなさそうだ。
腰は低く丁寧で髪もしっかり整えられており、スーツもシワなく高級感さえ感じられた。


「ホテル、行きませんか?」

「は?」

「お金もお支払いいたします」


どストレートな誘いに思わず狼狽えてしまう。
こんなハッキリ誘ってくるなんて誰が思うだろう。


男性2人組は時計も高級なものをしているし、足の先まで整えられた身なりでかなりお金は持っていそうだ。
1回寝るだけでお金をもらえるのであればそれはそれでいいかもしれない。


「どのくらいくれるんですか?私と寝るの、高いですよ」

「ふふっいいですね。あなたほどの美女であれば1人10、は出しますよ。ただし夜中付き合ってもらいますけどね」


正直そのお金には目がくらんでしまう。
2人で20はもらえると思えば、寝るのなんて容易いことに思える。


私ももう大人だし、一夜限りの関係であれば減るものもそんなにない。
それより冬麻の生活や大学の方がよっぽど大事だ。


「ちゃんと払ってもらえるんですよね?」

「もちろん。前払いしますよ」

「楽しみましょう、3人でね」


私を囲うように歩き出す男性2人。
この2人と私は今からセックスするんだ。
お金のために、初めて会ったこの人たちと身体を重ねようとしている。


こんな風に集めたお金だろうと、私は冬麻が幸せならどんなことだってできる。
だけど方法だけは冬麻に知られてはいけない。
知ればきっと彼はショックを受け、そんなお金なら必要ないと言うだろう。


私の腰に腕を回しスマートにエスコートするその流れに慣れを感じた。
今までも同じような手でワンナイトしてきたんだろうなと思う。


「───加賀美?」


突然名前を呼ばれたと思い振り返るとそこにいたのは思いもよらない人物だった。
無愛想な表情は珍しく歪められており、短い髪の隙間から覗いた瞳の奥には小さな怒りが伺える。


どうしてここに彼がいるのか。
こんなところを見られるなんて大失態だ。


(なんで、ここに⋯)


「その手を離せ」


腹の底に響くような声に思わず身体がビクッと震えた。
ここからでも彼が怒っていることが分かる。


「お前たちが触れていい女じゃない」

「⋯興醒めしちゃったね。また今度機会があれば」


2人組の男性はパッと私から腕を離し、足早に去っていく。
その姿をぽかーんと見つめたまま突っ立っていると私の目の前に黒いオーラを放つ彼が立ち止まる。


直接顔を見られない。
絶対怒ってる、私がこんなことをしたことを。


「⋯⋯東雲くん」

「加賀美⋯⋯」


私の名前を口に出した途端、私は大きな身体に一瞬ですっぽり包み込まれてしまった。
何が起こったか分からず、その状況を理解した途端身体中の熱が一気に上がるのが分かる。


鍛え抜かれた大きな東雲くんの身体は私をきつく抱きしめ、痛いほど隙間がなくなるくらい強く抱きしめられた。
人の目も気にせず私の身体を力いっぱい抱きしめるその腕は少しだけ震えているようにも感じる。
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