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新生活 2

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さらにはカウンター席やソファ席などが用意されているディスカッションスペースまで完備されていた。
会社で見ることはほとんどないドリンクバーなども配置されており驚きを隠せない。


こんな充実した設備が完備されているとは思っておらず動揺してしまう。
完全に気圧されている私に近づいてくるある1人の男性。


30代後半とも思える爽やかそうな男性が東雲くんに向かって一礼した。
私もそれに返すようにお辞儀をすると東雲くんが私を見つめて話し出す。


「ゲームチームリーダーの牧康弘まきやすひろさんだ」

「はじめまして。ゲームチームのリーダーの牧です。よろしくね加賀美さん」

「は、はじめまして。加賀美心春です。今日からよろしくお願いします」


短めの髪をしっかり整えたその姿は大人っぽくてとても優しそうな雰囲気だ。
話しやすそうで少しだけホッとした。


「牧さん、あとは頼みます。加賀美のことお願いしますね」

「はい、かしこまりました」


東雲くんは私に視線を落とすと小さく微笑みかける。
彼の瞳には私しか映っていないようで、真っ直ぐ見つめられドキドキとしてしまう。


「俺も行かないとだから。頑張れよ加賀美」

「⋯っ!」


そう言った次の瞬間、私の頭にポンっと温かい温度を感じた。
一瞬何をされたのか理解できなかったが、私は東雲くんに優しく頭を撫でられたようで思わず硬直してしまう。


私が固まっているのが面白かったのか東雲くんはふっ、と小さく声を出して微笑んでくれた。
こんな風に頭を撫でてくれるなんて思ってもいなくてドキドキし、心臓がバクバクと高鳴るのが分かる。


そのまま東雲くんはじゃあな、と言って部屋を出ていった。
隣に立つ牧さんは深々と頭を下げて彼を見送る。


「さて、加賀美さんが所属するチームのメンバーを紹介するね」

「はい、よろしくお願いします」


牧さんについていくと作業をするスペースになっているパソコンが大量に置かれたゾーンにやって来た。
みんなデスクに向き合いパソコンとひたすら睨めっこしている。


「まずこの東雲ホールディングスはシステム開発が1番大きな利益を生んでるけど2番はなんとゲーム開発なんだ。だから会社の利益を生む大事な役割を担ってるんだ」

「そうだったんですね」

「9階と10階がゲーム開発のフロアになってる。上の10階は主にキャラクターデザインや企画開発、仕様書作成などをしている。そしてこのフロアが主にプログラミング作業を行うフロアだ」


この9階にいる人たちはみんなゲーム構築の基盤をになっている人たちのようで、この人たち全員でひとつのものを作っているようだ。


私自身ゲームプログラミングを専門的にやってきたわけではないため、即戦力になれるかは不安だが今日まで勉強もしてきた。


「"剣と魔法のカタストロフィ"って知ってる?」

「はい、有名ですよね」

「あれの次作を今製作中なんだ」


"剣と魔法のカタストロフィ"といえばスマートフォンゲームの中ではかなり有名で長く愛されるRPGゲームだ。
あまりゲームをやらない私でも知っているほど有名な作品でクオリティも高いと聞いたことがある。


その製作に私もこれから携わると思うと気が引き締まる。
きっとゲーム開発は途方もない時間もかかるだろうし、これからハードな生活が待っていそうだ。
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