7 / 48
第5話 ラマナス海洋国家史(1)
しおりを挟む
このラマナス海洋王国は、ラマナス海(旧名称:南シナ海)に浮かぶ一つの小島を核とした直径およそ25kmの円形をした巨大な人工島であるエドワード島を首都とする海洋国家である。エドワード島を中心としたその周辺にある大小さまざまな人工島を含む島々と海域がその領土となり、それはかつて中国共産党政府が九段線として自身の領海を主張していた海域とほぼ重なる。
それは2020年に突然の様に表に現れた一つの文書が発端だった。その時は誰もがこの事件がその後、アジアの、いや世界のパワーバランスを根底から揺るがす様な大事件になるとは思ってもみなかった。単なる、TVのワイドショーで一時的に騒がられだけの、かなり怪しげなタブロイド記事の様な物だと思われたのだ。
通称『ラマナスチャイナ極秘合意文書』。それは太平洋戦争勃発して間もない頃(1938年頃)に、当時、帝政日本軍と戦っていた蒋介石の率いる国民党中華民国が、イギリス人商人『リチャード=ラマナス』からの援助を得る見返として、南シナ海の一部の島々とその周辺海域を割譲する約束した公式極秘文書だった。
結果、一時は非常に苦戦を強いられた中国であったが、連合国側の金銭的および軍事的援助と参戦もあって無事、帝政日本を退ける事が出来た。ただ同時に、中国側も蒋介石率いる国民党と毛沢東らが率いる共産党との間に内戦が勃発し、この『ラマナスチャイナ極秘合意文書』は、事実上の棚上げ状態になった。そして、そのまま、戦後の混乱でこの文書自体が高度な極秘性を持っていたことが災いし、連合国側、中国側(国民党、および共産党両側を含む)、両方の歴史上から完全に忘れ去られてしまった。
その後、毛沢東が率いる共産党によって統一支配された大陸側の中華人民共和国は、徐々に実力を付け2010年代になると旧日本帝国が行った様な積極的海外進出をする様になった。もちろん、それは表向きは軍事力ではなく経済力を持って行われる平和的な物だったが、南シナ海においては1953年から中華人民共和国がその領有を主張していた九段線と言われる海域の実効支配を強めていた。もちろん、これには周辺諸国や欧米諸国も反発し2016年にはハーグ常設仲裁裁判所が『法的根拠がなく、国際法に違反する』と判決を下したが、中国側はまったく意を介さず島々に軍事的基地や港、宿泊施設等を建設するなど支配を進めていた。
そんな中、代々商人として莫大な富と名声を得ていたイギリス人の『エドワード=ラマナス』卿が2020年10月15日に突然、歴史の闇に消え去っていたラマナスチャイナ極秘合意文書の存在を明らかにした。エドワードは、合意文書に署名した祖父リチャード=ラマナスの、『友人である中国がまだその足で歩き出せるまではこの文章の存在は固く秘し、その権利もこれを保留し続ける事』と言う遺言に従って秘していたが、その中国が当時の帝政日本と同じことをするのであればこの遺言は無効になるとして、この合意文書を公表し、即時、約束された島々と海域の領有を宣言した。後に、この日(10月25日)が『ラマナス海洋王国』建国の日とされる事となる。
もちろん、中国側は『頭の狂ったイギリス人の妄想』と一蹴し相手にしなかった。そして世界中の国々も同じ様に、TVのワイドショーやネットでは話題にこそなったが誰一人、その文書が正規の物であるとは思っていなかった。ここに至りエドワードは世界中の笑い者にされた。
しかし、年が明けた翌年一月、突如、台湾の中華民国が、重要度が低く近日中に廃棄予定の文書の中からこのラマナスチャイナ極秘合意文書の写しを発見したと発表した事で事態は一転した。すぐさま世界中は騒然となった。今まで狂人の世迷言と笑っていた文書が、突如、公式文書となる可能性が出て来たのだ。しかも、これが公式文書となると中国(中華人民共和国)が領有を主張する九段線内のほぼ中央に他国の領土領海が出現する事になるのだ。もちろん中国政府(中国共産党政府)は猛反発し、文書は台湾政府による捏造品だと主張した。
そこでこの問題は、国連にて調査チームが編成され、この文書の一年に及ぶ徹底的な精査が行われる事となった。調査が始まった当初は、中国共産党政府に対して有利に立ち回りたい台湾国民党政府が、ラマナスチャイナ極秘合意文書事件に便乗して捏造したとする中国共産党政府の主張が正しいだろうと誰もが思っていた。
ところが結果は驚くべきことに、この文書は紛れもなく本物だと結論付けられたのだ。
国連安全保障理事会では当時、常任理事国であった中国の反対で可決される事はなかったが、中国を除く世界の主要国の大多数はこのラマナスチャイナ極秘合意文書を根拠とするエドワード=ラマナスの該当島々および海域の領有を認める流れとなった。
そして、2023年3月1日にエドワード=ラマナスは割譲が約束されていた現エドワード島の中核となった小島に上陸した。もちろん中国政府の人民解放軍はそれを実力で排除しようとしたが、エドワードを支持する台湾政府軍だけでなく、アメリカ軍、ロシア軍、さらには後方援助として日本の自衛隊まで出動し、上陸を支援し、エドワードが生活を開始したエドワード島を保護した。これにより世界は、中国共産党政府VS世界連合軍と言う世界規模の大戦に発達する危険な状況となった。この一触即発の事態において、水面下で何度も交渉が行われ、世界を相手にする危険を自覚した中国共産党政府が折れる形で、人民解放軍は撤退し、同時に世界連合軍も海域から撤退した。
とりあえず平和になった島での生活を開始したエドワードは、割譲された島々の本格的な調査に乗り出した。そして、同時に現エドワード島の礎となる人口島の建設を始めた。それから三年、現エドワード島の1/3規模ではあったが世界でも類を見ない人口島が出来上がり、エドワードは自らが王となり『ラマナス海洋王国』を名乗り小規模ながら国家としての機能も果たし始めた。
その矢先だった。再び、このラマナス海洋王国から世界を揺るがす発表がなされた。
それは2020年に突然の様に表に現れた一つの文書が発端だった。その時は誰もがこの事件がその後、アジアの、いや世界のパワーバランスを根底から揺るがす様な大事件になるとは思ってもみなかった。単なる、TVのワイドショーで一時的に騒がられだけの、かなり怪しげなタブロイド記事の様な物だと思われたのだ。
通称『ラマナスチャイナ極秘合意文書』。それは太平洋戦争勃発して間もない頃(1938年頃)に、当時、帝政日本軍と戦っていた蒋介石の率いる国民党中華民国が、イギリス人商人『リチャード=ラマナス』からの援助を得る見返として、南シナ海の一部の島々とその周辺海域を割譲する約束した公式極秘文書だった。
結果、一時は非常に苦戦を強いられた中国であったが、連合国側の金銭的および軍事的援助と参戦もあって無事、帝政日本を退ける事が出来た。ただ同時に、中国側も蒋介石率いる国民党と毛沢東らが率いる共産党との間に内戦が勃発し、この『ラマナスチャイナ極秘合意文書』は、事実上の棚上げ状態になった。そして、そのまま、戦後の混乱でこの文書自体が高度な極秘性を持っていたことが災いし、連合国側、中国側(国民党、および共産党両側を含む)、両方の歴史上から完全に忘れ去られてしまった。
その後、毛沢東が率いる共産党によって統一支配された大陸側の中華人民共和国は、徐々に実力を付け2010年代になると旧日本帝国が行った様な積極的海外進出をする様になった。もちろん、それは表向きは軍事力ではなく経済力を持って行われる平和的な物だったが、南シナ海においては1953年から中華人民共和国がその領有を主張していた九段線と言われる海域の実効支配を強めていた。もちろん、これには周辺諸国や欧米諸国も反発し2016年にはハーグ常設仲裁裁判所が『法的根拠がなく、国際法に違反する』と判決を下したが、中国側はまったく意を介さず島々に軍事的基地や港、宿泊施設等を建設するなど支配を進めていた。
そんな中、代々商人として莫大な富と名声を得ていたイギリス人の『エドワード=ラマナス』卿が2020年10月15日に突然、歴史の闇に消え去っていたラマナスチャイナ極秘合意文書の存在を明らかにした。エドワードは、合意文書に署名した祖父リチャード=ラマナスの、『友人である中国がまだその足で歩き出せるまではこの文章の存在は固く秘し、その権利もこれを保留し続ける事』と言う遺言に従って秘していたが、その中国が当時の帝政日本と同じことをするのであればこの遺言は無効になるとして、この合意文書を公表し、即時、約束された島々と海域の領有を宣言した。後に、この日(10月25日)が『ラマナス海洋王国』建国の日とされる事となる。
もちろん、中国側は『頭の狂ったイギリス人の妄想』と一蹴し相手にしなかった。そして世界中の国々も同じ様に、TVのワイドショーやネットでは話題にこそなったが誰一人、その文書が正規の物であるとは思っていなかった。ここに至りエドワードは世界中の笑い者にされた。
しかし、年が明けた翌年一月、突如、台湾の中華民国が、重要度が低く近日中に廃棄予定の文書の中からこのラマナスチャイナ極秘合意文書の写しを発見したと発表した事で事態は一転した。すぐさま世界中は騒然となった。今まで狂人の世迷言と笑っていた文書が、突如、公式文書となる可能性が出て来たのだ。しかも、これが公式文書となると中国(中華人民共和国)が領有を主張する九段線内のほぼ中央に他国の領土領海が出現する事になるのだ。もちろん中国政府(中国共産党政府)は猛反発し、文書は台湾政府による捏造品だと主張した。
そこでこの問題は、国連にて調査チームが編成され、この文書の一年に及ぶ徹底的な精査が行われる事となった。調査が始まった当初は、中国共産党政府に対して有利に立ち回りたい台湾国民党政府が、ラマナスチャイナ極秘合意文書事件に便乗して捏造したとする中国共産党政府の主張が正しいだろうと誰もが思っていた。
ところが結果は驚くべきことに、この文書は紛れもなく本物だと結論付けられたのだ。
国連安全保障理事会では当時、常任理事国であった中国の反対で可決される事はなかったが、中国を除く世界の主要国の大多数はこのラマナスチャイナ極秘合意文書を根拠とするエドワード=ラマナスの該当島々および海域の領有を認める流れとなった。
そして、2023年3月1日にエドワード=ラマナスは割譲が約束されていた現エドワード島の中核となった小島に上陸した。もちろん中国政府の人民解放軍はそれを実力で排除しようとしたが、エドワードを支持する台湾政府軍だけでなく、アメリカ軍、ロシア軍、さらには後方援助として日本の自衛隊まで出動し、上陸を支援し、エドワードが生活を開始したエドワード島を保護した。これにより世界は、中国共産党政府VS世界連合軍と言う世界規模の大戦に発達する危険な状況となった。この一触即発の事態において、水面下で何度も交渉が行われ、世界を相手にする危険を自覚した中国共産党政府が折れる形で、人民解放軍は撤退し、同時に世界連合軍も海域から撤退した。
とりあえず平和になった島での生活を開始したエドワードは、割譲された島々の本格的な調査に乗り出した。そして、同時に現エドワード島の礎となる人口島の建設を始めた。それから三年、現エドワード島の1/3規模ではあったが世界でも類を見ない人口島が出来上がり、エドワードは自らが王となり『ラマナス海洋王国』を名乗り小規模ながら国家としての機能も果たし始めた。
その矢先だった。再び、このラマナス海洋王国から世界を揺るがす発表がなされた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
漆黒の万能メイド
化野 雫
ファンタジー
初代女帝が英雄だった実の姉を大悪人として処刑する事で成立した血塗られた歴史を持つ最強にして偉大なるクレサレス帝国。そこを行商しながら旅する若き商人と珍しい黒髪を持つ仮面の国家公認万能メイド。世間知らずのボンボンとそれをフォローするしっかり者の年上メイドと言う風体の二人。彼らはゆく先々では起こる様々な難事件を華麗に解決してゆく。そう、二人にはその見かけとは違うもう一つの隠された顔があったのだ。
感想、メッセージ等は気楽な気持ちで送って頂けると嬉しいです。
気にいって頂けたら、『お気に入り』への登録も是非お願いします。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる