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第百五十六話
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その内の一枚がまるで糊でも塗ってあったみたいに白瀬の体にぺたりと張り付いた。
いや、待て。相手は実体のない霊である白瀬なんだ。なんでお札が張り付くんだ?
僕がそう思った刹那……
「うううううぅぅう……」
お札が体に張り付くや否や、白瀬は妙な声を上げてぱたりと床に落ちると、そのまま動かなくなった。
「悪いね、京子。
君が敵に回ると僕も色々やりにくいから」
床に落ちて動かなくなった白瀬を見て板額はそう言ってにやりと笑った。
その間にも、なだれ込んで来た他の男たちに僕は羽交い絞めにされた。
「こらぁ~! 放せぇ~!」
同じ様に女たちに取り押さえられた緑川が声を上げた。
すかさず女たちの一人が手慣れた手つきでガムテをちぎると、緑川の口にペタリと張り付けた。これで緑川は声を上げられなった。そしてそのまま女たちは緑川をロープでぐるぐる巻きにするとひょいと抱え上げて寝室へ運び込んでしまった。
それは、とても組織的な動きで、素人とは思えない感じだった。
「こら、板額、これはやりすぎだぞ!」
僕は屈強な男たちに羽交い絞めにされ身動きできないながらも、板額を睨みつけて怒鳴った。
「大丈夫だよ、与一。
京子のお札も、巴のロープも少しすれば解けるから。
二人とも傷つけたりしてないから大丈夫。
ちょっと僕らの邪魔をしない様にしただけ」
そんな僕に板額は優しい笑みを浮かべながらそう説明した。
「さあ、行こうか、与一」
そしてそう言ったあと、板額は僕の耳元に顔を近づけてそっとこう囁いた。
「今夜は僕たちのハニムーンだよ……」
熱い吐息が僕の耳に吹きかかった。
どくん、一瞬で、心臓がひときわ大きく鼓動し、下半身の一部が凄く熱くなった。同時に僕の理性が熱したフライパンの上のバターみたいに蕩けてゆくのが分かった。
これが僕の男としての正常な反応なのか、それとも板額が何かしらの媚薬的な術を使ったのかは、その時の僕には分からなかった。というよりそういう事すら考えることも出来なくなっていた。
その後、板額の実家へ拉致された僕がどうなったかは、あえて詳しくは言うまい。
まあ、今まで僕を緑川に独占させ、良い様にさせていた鬱憤が板額には溜まっていたんだ。それはまるで深い沼の底にたまった泥の様に。
そしてそれは『嫉妬』の塊でもある。日ごろは冷静な板額を狂わせるには十分すぎるモノだった。
その夜、板額は『元男の子』でも『鬼牙』でもない、まぎれもない『恋する一人の女の子』だった。
僕は溜まった鬱憤を晴らすかのように、板額に滅茶苦茶にされた。
「巴の事なんか忘れさせてやる……」
僕の耳元で板額はその夜、何度も何度もそう囁きかけた。それはまるで僕の心を縛る呪文の様だった。
実際、僕は緑川の事も、白瀬の事も、その夜、微塵も思い出すことはかった。
最後に一言だけ言っておくなら……今の板額は、色々な意味で間違いなく、『僕が初めての相手であった女の子』だった。
……と『詳しくは言うまい』と言いながら、結構詳しく語ってしまった僕である。
翌朝、畳の上に敷かれた高そうなお布団の中で僕は心地よい気怠さと共に目を覚ました。
こういう時、隣に板額が居て同じように気怠げで、でもすごく可愛らしい表情で僕を見て……
「おはよう……」
……って囁くように言うのがアニメやラノベじゃお約束のはずだ。
でも、そこに板額の姿はなかった。
でも板額の残り香はかなり残っていた。それが僕の鼻腔の奥をくすぐるだけで、ただでさえ朝は元気になる僕の下半身のアレが一瞬で再起動してしまった。
「与一、悪いんだけど急いでくれる」
半分、まだ昨夜の夢のような一夜から現実に戻れない僕の耳に、板額の声が響いた。
「……おはよう、板額。
今朝はゆっくりしたいのに……」
僕を覗き込んでいた板額をお布団の中へ引き戻そうと僕は手を伸ばした。
だって仕方ないだろう。僕だって若い男の子なんだ。昨夜の今朝で、そりゃ、またしたくなるのも仕方あるまい。
「ダメだよ、与一。
今日は君共々お婆様に呼ばれてるからね。
早く支度して朝ごはん食べないと……」
伸ばした僕の手を優しく、でもぴしゃりと払いのけて板額は笑いながらそう言った。その笑顔はすっごく可愛かった。
そう言われたって、その笑みをみたら今の僕はすんなりと従いたくはなかった。無理やりでも板額をベッドに引き入れて、そのまま、今着てる和服の帯を解いて……
……ってそこまで思った時、僕は急に頭が冷えた。若い本能で暴走しかかっていた下半身さえも一瞬で冷静さを取り戻していた。
いや、待て。相手は実体のない霊である白瀬なんだ。なんでお札が張り付くんだ?
僕がそう思った刹那……
「うううううぅぅう……」
お札が体に張り付くや否や、白瀬は妙な声を上げてぱたりと床に落ちると、そのまま動かなくなった。
「悪いね、京子。
君が敵に回ると僕も色々やりにくいから」
床に落ちて動かなくなった白瀬を見て板額はそう言ってにやりと笑った。
その間にも、なだれ込んで来た他の男たちに僕は羽交い絞めにされた。
「こらぁ~! 放せぇ~!」
同じ様に女たちに取り押さえられた緑川が声を上げた。
すかさず女たちの一人が手慣れた手つきでガムテをちぎると、緑川の口にペタリと張り付けた。これで緑川は声を上げられなった。そしてそのまま女たちは緑川をロープでぐるぐる巻きにするとひょいと抱え上げて寝室へ運び込んでしまった。
それは、とても組織的な動きで、素人とは思えない感じだった。
「こら、板額、これはやりすぎだぞ!」
僕は屈強な男たちに羽交い絞めにされ身動きできないながらも、板額を睨みつけて怒鳴った。
「大丈夫だよ、与一。
京子のお札も、巴のロープも少しすれば解けるから。
二人とも傷つけたりしてないから大丈夫。
ちょっと僕らの邪魔をしない様にしただけ」
そんな僕に板額は優しい笑みを浮かべながらそう説明した。
「さあ、行こうか、与一」
そしてそう言ったあと、板額は僕の耳元に顔を近づけてそっとこう囁いた。
「今夜は僕たちのハニムーンだよ……」
熱い吐息が僕の耳に吹きかかった。
どくん、一瞬で、心臓がひときわ大きく鼓動し、下半身の一部が凄く熱くなった。同時に僕の理性が熱したフライパンの上のバターみたいに蕩けてゆくのが分かった。
これが僕の男としての正常な反応なのか、それとも板額が何かしらの媚薬的な術を使ったのかは、その時の僕には分からなかった。というよりそういう事すら考えることも出来なくなっていた。
その後、板額の実家へ拉致された僕がどうなったかは、あえて詳しくは言うまい。
まあ、今まで僕を緑川に独占させ、良い様にさせていた鬱憤が板額には溜まっていたんだ。それはまるで深い沼の底にたまった泥の様に。
そしてそれは『嫉妬』の塊でもある。日ごろは冷静な板額を狂わせるには十分すぎるモノだった。
その夜、板額は『元男の子』でも『鬼牙』でもない、まぎれもない『恋する一人の女の子』だった。
僕は溜まった鬱憤を晴らすかのように、板額に滅茶苦茶にされた。
「巴の事なんか忘れさせてやる……」
僕の耳元で板額はその夜、何度も何度もそう囁きかけた。それはまるで僕の心を縛る呪文の様だった。
実際、僕は緑川の事も、白瀬の事も、その夜、微塵も思い出すことはかった。
最後に一言だけ言っておくなら……今の板額は、色々な意味で間違いなく、『僕が初めての相手であった女の子』だった。
……と『詳しくは言うまい』と言いながら、結構詳しく語ってしまった僕である。
翌朝、畳の上に敷かれた高そうなお布団の中で僕は心地よい気怠さと共に目を覚ました。
こういう時、隣に板額が居て同じように気怠げで、でもすごく可愛らしい表情で僕を見て……
「おはよう……」
……って囁くように言うのがアニメやラノベじゃお約束のはずだ。
でも、そこに板額の姿はなかった。
でも板額の残り香はかなり残っていた。それが僕の鼻腔の奥をくすぐるだけで、ただでさえ朝は元気になる僕の下半身のアレが一瞬で再起動してしまった。
「与一、悪いんだけど急いでくれる」
半分、まだ昨夜の夢のような一夜から現実に戻れない僕の耳に、板額の声が響いた。
「……おはよう、板額。
今朝はゆっくりしたいのに……」
僕を覗き込んでいた板額をお布団の中へ引き戻そうと僕は手を伸ばした。
だって仕方ないだろう。僕だって若い男の子なんだ。昨夜の今朝で、そりゃ、またしたくなるのも仕方あるまい。
「ダメだよ、与一。
今日は君共々お婆様に呼ばれてるからね。
早く支度して朝ごはん食べないと……」
伸ばした僕の手を優しく、でもぴしゃりと払いのけて板額は笑いながらそう言った。その笑顔はすっごく可愛かった。
そう言われたって、その笑みをみたら今の僕はすんなりと従いたくはなかった。無理やりでも板額をベッドに引き入れて、そのまま、今着てる和服の帯を解いて……
……ってそこまで思った時、僕は急に頭が冷えた。若い本能で暴走しかかっていた下半身さえも一瞬で冷静さを取り戻していた。
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