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第百五十四話
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僕は思い切って口を開いた。
「板額、これはいったいどういう事なんだ?
いや、板額だけじゃない、緑川も、白瀬も……」
と、ここまで言って、今だに酔いがさめないのか僕の肩の高さ辺りをふわふわ漂っている白瀬に目が行った。
「……まあ、今の白瀬に何聞いても無駄か……」
僕は思わずそう言って苦笑いを浮かべた。
「んっ?」
すると白瀬は無邪気な笑顔を浮かべて小首を傾げた。そしてこう言った。
「与一君、聞きたい?」
ちなみに白瀬が僕の事を『与一』と呼ぶのは初めてだった。どうやら酔った勢いでそう呼んだようだ。きっと白瀬も、僕の事を板額や緑川みたいに名前で呼びたかったんだなって僕はその時、思った。
「私も巴も、最初からみんな知ってたんだよぉ~♪
板額は、与一の気持ちを、きちんと確かめたかったんだよぉ~♪
どんなに離れ離れになっても、ちゃんと追っかけてきてくれるかってね~♪
だって板額って見かけによらず実はすっごくツンデレさんなんだからねぇ~♪」
そうして白瀬は、事も無げに酔った勢いのままぺらぺらとしゃべてしまった。
その瞬間の板額と緑川の顔は、今でも忘れない。
まさに顔全体に『あちゃぁ~!』って書かれてるみたいだった。
「いやはや、京子がこれほど上機嫌で酔っぱらうとは想定外だったよ」
緑川の淹れたミルクティーのカップを受けとった板額が、一口飲んでからため息交じりにそう言った。
「ホントホント、まさか、京子が真っ先に口割っちゃうなんてね」
レモンの香りが零れるティーカップを手にした緑川も、ソファーに腰を下ろしながらそう答えた。
「どういう事なんだよ、コレ。
白瀬の言ってることが間違ってないなら、
僕以外はみんなグルだったって事かよ」
僕は、酔い覚ましには必ず飲む冷えたドクペを取りに席を立っった。そして冷蔵庫に向かいながら、みんなに聞こえるように独り言を不満げに口にした。
「まあ、そういう事。
与一、あなた、板額に試されたのよ」
緑川はレモンティーを飲みながらそう言って、くくっと楽し気に笑った。
「じゃあ最初から板額は僕とまた再開できることを知ってて僕を騙したのか?」
僕は少し怒った風でそう言うと、ジロリと板額を睨んだ。
「まあ、そう怒らないでよ、与一。
最初は本当にあれが最後になるかもしれなかったんだ。
お婆様から、烏丸家当主教育を徹底するために、
京都本宅に呼び戻されてたからね。
彼氏といちゃつきながらの浮ついた気分では、
絶対にダメだときつく言われてたんだ。
さらには僕のお相手も、お婆様自身がきちんと決めるってね。
それを説得するのには、本当に苦労したよ。
元々、君に会うために葵高に転校するのだって、かなり苦労したんだ。
結局、転校して君に会えたのだって、
たまたま、あの事件が発生したからなんだよ。
その事件で、僕がどの程度出来るか試す為ってのがお婆様の目的。
決して僕の願いを受け入れてくれたからじゃなかったからね」
すると、板額はその時を思い出すように、でも楽し気ににこにこしながらそう語った。
「板額が居なくなる前、時折、板額が学校休む事あったでしょ。
あれ、板額がわざわざ京都の本宅まで行って、
まだ現当主であるお婆様を必死に説得してたのよ」
すると緑川も、思い出すようにくくっ笑ってそう補足した。
「結局、お婆様は……
僕の意思と、与一、君の男としての『誠』を確かめる為、
僕が大学に行くまで会う事はもちろん連絡も一切させない。
それでも、僕がきちんと当主としての教育をこなし、
なおかつ、与一、君がちゃんと努力をして、
僕を忘れず、ここまで探しに来るなら、
僕と君の事も考えてやっても良い。
……って事にしてくれたんだ」
「それで、その間、与一に悪い虫が付いたり浮気しないように、
監視する様に、私と京子が板額から頼まれたわけ」
「巴だけなら、与一君が言葉などで騙して浮気できても、
私が居れば大丈夫だしねぇ~♪」
板額の言葉に、緑川と白瀬が合わせる。白瀬は相変わらず酔ったまま上機嫌の様だ。
「結局、巴はとても優秀な監視役だったけど、
同時に、僕にとってはとっても『悪い虫』になったみたいだけどね。
でも烏丸家次期当主の僕としては、
夫に愛人の一人くらい居たって認める度量もあるけど」
二人の言葉を聞いて、板額はちらりと緑川を横目で見ながらそう言って意味ありげな笑みを浮かべた。
「板額、これはいったいどういう事なんだ?
いや、板額だけじゃない、緑川も、白瀬も……」
と、ここまで言って、今だに酔いがさめないのか僕の肩の高さ辺りをふわふわ漂っている白瀬に目が行った。
「……まあ、今の白瀬に何聞いても無駄か……」
僕は思わずそう言って苦笑いを浮かべた。
「んっ?」
すると白瀬は無邪気な笑顔を浮かべて小首を傾げた。そしてこう言った。
「与一君、聞きたい?」
ちなみに白瀬が僕の事を『与一』と呼ぶのは初めてだった。どうやら酔った勢いでそう呼んだようだ。きっと白瀬も、僕の事を板額や緑川みたいに名前で呼びたかったんだなって僕はその時、思った。
「私も巴も、最初からみんな知ってたんだよぉ~♪
板額は、与一の気持ちを、きちんと確かめたかったんだよぉ~♪
どんなに離れ離れになっても、ちゃんと追っかけてきてくれるかってね~♪
だって板額って見かけによらず実はすっごくツンデレさんなんだからねぇ~♪」
そうして白瀬は、事も無げに酔った勢いのままぺらぺらとしゃべてしまった。
その瞬間の板額と緑川の顔は、今でも忘れない。
まさに顔全体に『あちゃぁ~!』って書かれてるみたいだった。
「いやはや、京子がこれほど上機嫌で酔っぱらうとは想定外だったよ」
緑川の淹れたミルクティーのカップを受けとった板額が、一口飲んでからため息交じりにそう言った。
「ホントホント、まさか、京子が真っ先に口割っちゃうなんてね」
レモンの香りが零れるティーカップを手にした緑川も、ソファーに腰を下ろしながらそう答えた。
「どういう事なんだよ、コレ。
白瀬の言ってることが間違ってないなら、
僕以外はみんなグルだったって事かよ」
僕は、酔い覚ましには必ず飲む冷えたドクペを取りに席を立っった。そして冷蔵庫に向かいながら、みんなに聞こえるように独り言を不満げに口にした。
「まあ、そういう事。
与一、あなた、板額に試されたのよ」
緑川はレモンティーを飲みながらそう言って、くくっと楽し気に笑った。
「じゃあ最初から板額は僕とまた再開できることを知ってて僕を騙したのか?」
僕は少し怒った風でそう言うと、ジロリと板額を睨んだ。
「まあ、そう怒らないでよ、与一。
最初は本当にあれが最後になるかもしれなかったんだ。
お婆様から、烏丸家当主教育を徹底するために、
京都本宅に呼び戻されてたからね。
彼氏といちゃつきながらの浮ついた気分では、
絶対にダメだときつく言われてたんだ。
さらには僕のお相手も、お婆様自身がきちんと決めるってね。
それを説得するのには、本当に苦労したよ。
元々、君に会うために葵高に転校するのだって、かなり苦労したんだ。
結局、転校して君に会えたのだって、
たまたま、あの事件が発生したからなんだよ。
その事件で、僕がどの程度出来るか試す為ってのがお婆様の目的。
決して僕の願いを受け入れてくれたからじゃなかったからね」
すると、板額はその時を思い出すように、でも楽し気ににこにこしながらそう語った。
「板額が居なくなる前、時折、板額が学校休む事あったでしょ。
あれ、板額がわざわざ京都の本宅まで行って、
まだ現当主であるお婆様を必死に説得してたのよ」
すると緑川も、思い出すようにくくっ笑ってそう補足した。
「結局、お婆様は……
僕の意思と、与一、君の男としての『誠』を確かめる為、
僕が大学に行くまで会う事はもちろん連絡も一切させない。
それでも、僕がきちんと当主としての教育をこなし、
なおかつ、与一、君がちゃんと努力をして、
僕を忘れず、ここまで探しに来るなら、
僕と君の事も考えてやっても良い。
……って事にしてくれたんだ」
「それで、その間、与一に悪い虫が付いたり浮気しないように、
監視する様に、私と京子が板額から頼まれたわけ」
「巴だけなら、与一君が言葉などで騙して浮気できても、
私が居れば大丈夫だしねぇ~♪」
板額の言葉に、緑川と白瀬が合わせる。白瀬は相変わらず酔ったまま上機嫌の様だ。
「結局、巴はとても優秀な監視役だったけど、
同時に、僕にとってはとっても『悪い虫』になったみたいだけどね。
でも烏丸家次期当主の僕としては、
夫に愛人の一人くらい居たって認める度量もあるけど」
二人の言葉を聞いて、板額はちらりと緑川を横目で見ながらそう言って意味ありげな笑みを浮かべた。
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