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第百五十一話
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さらには、確かに表情は憮然としてるけど、それもなんかわざとらしいのだ。なんか、その口元は微かに笑ってる様にさえ見えた。
でも、それは当然なのだ。この女性なら、僕を『旦那様』と呼び、さらには緑川を『愛人』と呼んだって不思議じゃない。
「板額……?!」
僕はまるで喉の奥から絞り出す様にして、記憶の中にあった懐かしい、そして狂おしいほど愛おしいその名を口にした。
「今まで巴との甘い生活を容認してたけど、
僕は、旦那様が相手が巴ですら満足できず、
さらに多くの愛人を求めるなんて思わなかったよ。
まあ、僕みたいな素晴らしい正妻と離れ離れの生活が続けば、
そりゃ巴クラスでも満足できないのは分からないでないけどね」
板額はそう言って笑った。
いや、待て。これは違う。そう明らかに何かが間違ってる。
今の僕と板額は、こんな会話が成り立つような間柄じゃないはずだ。
「あれ、板額、やっと来たのね。
……ってまさか、前から板額の言ってた『旦那様』って彼なの?
しかも、それが巴の彼氏って、これひょっとして、いきなり修羅場?」
戸惑う僕をよそに、女の子たちのグループの一人がにやにやしながらそう言った。
「おいおい、これマジか?
京大の二大美人新入生『巴、板額』が揃い踏みとはなぁ!
そんなグループに声かけるとは、今夜の俺、ツイてるやん。
お前ら、俺に感謝せいや」
緑川だけじゃなく板額も来た事で、俄然、この合コンを急遽セッティングした香取が自慢げにそう言った。
「つうか、与一、お前、こんな美人二人を二股なんて、
こりゃ、完全に『犯罪者』やぞ」
意外な事の成り行きに、石黒たちもその騒動を煽る。
そんな中、僕はそうしたら良いか分からずただただオロオロしていた。
「だから与一は二股じゃないよ。
巴は高校時代から、僕、公認の『愛人さん』だからね」
そんな周りの騒動をよそに板額は平然と凄い事をさらりと言った。そして当然の様に空いていた僕の隣の席に座った。これで僕は緑川と板額に挟まれる事になった。つまり、僕は緑川と板額に両脇をしっかりと押さえられ、この場から逃走できない様になったのだ。
「久しぶりだね、与一、元気だった?」
隣に座った板額が、ごくごく普通にそう話しかけて来た。
「元気だったって……板額、これは一体……」
僕がそう口を開くと、すかさず板額はその人差し指で僕の唇を押さえ、微笑みながらこう言った。
「その話はまた後でゆっくり……」
ああ、この微笑みだ。
優しく美しい微笑み。
高校時代に何度もこの微笑みにやられた。
そして、それを見るたびに僕は、この微笑みを僕だけのものにしたいと思った。
板額が、元男の子でも、普通の人間じゃなくても、僕はそんな事どうでも良いんだ。
やっぱり、僕はただただ板額の事が大好きなんだ。
この微笑みが僕にその事を嫌と言う程想い出させる。
隣に居る緑川や、僕の肩辺りにふわふわ浮いている白瀬には、ちょっと悪い気もするけど、この気持ちばかりはどうする事も出来ない。
「ホント、板額、あんたねぇ何度も何度も私を『愛人』呼ばわりして。
今まで与一の世話は私と京子が、みぃ~んなやってたのよ。
詳しくその様子を言えば、あなた、絶対に嫉妬で悶絶死するわよ」
緑川がそう言うと、その言葉の端を聞き逃さなかった、女の子の一人が声を上げた。
「えっ……京子って!
じゃあ、この彼氏、二股どころか三股?!」
「おいおい、こりゃ、今日はただじゃ済ませへんで、与一。
今日は全員で、この鬼畜男のつるし上げパーティーじゃ!」
その言葉に自分の事を棚に上げた香取が乗った。
そう、この香取、自分も彼女が居るのにこの有様なのだ。その上、二股疑惑すらある。
しかし、緑川も少しばかりお酒が回っていたのであろう。普段なら第三者が居る所では絶対に口にしない白瀬の事をぽろりと口にしていた。
そして当の白瀬は、僕の肩辺りに浮かんだまま、僕を見て苦笑を浮かべていた。
いや、白瀬の事もそうだが、緑川の奴、今、もっと凄い事をさらり言ってた様な気もするぞ。
実際、ちらりと横目で見た板額の表情が一瞬、般若になっていたのは緑川には内緒だ。
結局、その香取の言葉通り、その夜の臨時合コンは僕をダシにして大いに盛り上がった。僕もダシにされ色々いじられて大変だったけど、本当に楽しい合コンになった。事実、この時の出会いがきっかけで、その後、お付き合いを始めた奴が二名ほど居た。しかもその内、一組はその後、結婚までしてる。
でも、それは当然なのだ。この女性なら、僕を『旦那様』と呼び、さらには緑川を『愛人』と呼んだって不思議じゃない。
「板額……?!」
僕はまるで喉の奥から絞り出す様にして、記憶の中にあった懐かしい、そして狂おしいほど愛おしいその名を口にした。
「今まで巴との甘い生活を容認してたけど、
僕は、旦那様が相手が巴ですら満足できず、
さらに多くの愛人を求めるなんて思わなかったよ。
まあ、僕みたいな素晴らしい正妻と離れ離れの生活が続けば、
そりゃ巴クラスでも満足できないのは分からないでないけどね」
板額はそう言って笑った。
いや、待て。これは違う。そう明らかに何かが間違ってる。
今の僕と板額は、こんな会話が成り立つような間柄じゃないはずだ。
「あれ、板額、やっと来たのね。
……ってまさか、前から板額の言ってた『旦那様』って彼なの?
しかも、それが巴の彼氏って、これひょっとして、いきなり修羅場?」
戸惑う僕をよそに、女の子たちのグループの一人がにやにやしながらそう言った。
「おいおい、これマジか?
京大の二大美人新入生『巴、板額』が揃い踏みとはなぁ!
そんなグループに声かけるとは、今夜の俺、ツイてるやん。
お前ら、俺に感謝せいや」
緑川だけじゃなく板額も来た事で、俄然、この合コンを急遽セッティングした香取が自慢げにそう言った。
「つうか、与一、お前、こんな美人二人を二股なんて、
こりゃ、完全に『犯罪者』やぞ」
意外な事の成り行きに、石黒たちもその騒動を煽る。
そんな中、僕はそうしたら良いか分からずただただオロオロしていた。
「だから与一は二股じゃないよ。
巴は高校時代から、僕、公認の『愛人さん』だからね」
そんな周りの騒動をよそに板額は平然と凄い事をさらりと言った。そして当然の様に空いていた僕の隣の席に座った。これで僕は緑川と板額に挟まれる事になった。つまり、僕は緑川と板額に両脇をしっかりと押さえられ、この場から逃走できない様になったのだ。
「久しぶりだね、与一、元気だった?」
隣に座った板額が、ごくごく普通にそう話しかけて来た。
「元気だったって……板額、これは一体……」
僕がそう口を開くと、すかさず板額はその人差し指で僕の唇を押さえ、微笑みながらこう言った。
「その話はまた後でゆっくり……」
ああ、この微笑みだ。
優しく美しい微笑み。
高校時代に何度もこの微笑みにやられた。
そして、それを見るたびに僕は、この微笑みを僕だけのものにしたいと思った。
板額が、元男の子でも、普通の人間じゃなくても、僕はそんな事どうでも良いんだ。
やっぱり、僕はただただ板額の事が大好きなんだ。
この微笑みが僕にその事を嫌と言う程想い出させる。
隣に居る緑川や、僕の肩辺りにふわふわ浮いている白瀬には、ちょっと悪い気もするけど、この気持ちばかりはどうする事も出来ない。
「ホント、板額、あんたねぇ何度も何度も私を『愛人』呼ばわりして。
今まで与一の世話は私と京子が、みぃ~んなやってたのよ。
詳しくその様子を言えば、あなた、絶対に嫉妬で悶絶死するわよ」
緑川がそう言うと、その言葉の端を聞き逃さなかった、女の子の一人が声を上げた。
「えっ……京子って!
じゃあ、この彼氏、二股どころか三股?!」
「おいおい、こりゃ、今日はただじゃ済ませへんで、与一。
今日は全員で、この鬼畜男のつるし上げパーティーじゃ!」
その言葉に自分の事を棚に上げた香取が乗った。
そう、この香取、自分も彼女が居るのにこの有様なのだ。その上、二股疑惑すらある。
しかし、緑川も少しばかりお酒が回っていたのであろう。普段なら第三者が居る所では絶対に口にしない白瀬の事をぽろりと口にしていた。
そして当の白瀬は、僕の肩辺りに浮かんだまま、僕を見て苦笑を浮かべていた。
いや、白瀬の事もそうだが、緑川の奴、今、もっと凄い事をさらり言ってた様な気もするぞ。
実際、ちらりと横目で見た板額の表情が一瞬、般若になっていたのは緑川には内緒だ。
結局、その香取の言葉通り、その夜の臨時合コンは僕をダシにして大いに盛り上がった。僕もダシにされ色々いじられて大変だったけど、本当に楽しい合コンになった。事実、この時の出会いがきっかけで、その後、お付き合いを始めた奴が二名ほど居た。しかもその内、一組はその後、結婚までしてる。
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