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第百五十話
しおりを挟む「報告させていただきます。使用人に扮していたのはまだ14歳の少年でした。彼は平民で、妹と平民街で買い物をしている時に貴族の女性に声をかけかられ、事情はよく知らずにここへ来たそうです」
「その女性というのは?」
「名は名乗らなかったそうです。黒いマントを羽織り、フードも深く被っていたようで、顔も分からなかったと。彼の母親は病に倒れており、父親は地方貴族の屋敷で使用人として働き、治療費を稼いでいるそうです。事情を知った女性にある人物に飲み物を手渡すだけで、母親の治療費を全額負担するからと雇われたようでして」
おそらくメアリーかルーシーでしょうけど、確認する方法がなさそうね。
「メアリー様には、気分が悪そうな人は3階にある客室へ案内するようにと指示されただけのようです」
「それについてはメアリーも同じように証言しております。ただ、新しい使用人だと思ったという証言については疑念の余地がありますが」
3階までその少年にアルフレッド様を連れてきてもらい、ルーシーと変わって部屋まで連れてくる計画だったのかしら。
「手渡す相手がアルフレッド様だとはいつ指示があったのですか?」
「はい。どうやら自宅に手紙が届いたようで、そこには指示された飲み物を金髪金目の青年にリリーナからだと言って飲ませること。全て飲み切るのを見届けること。数分してその青年の気分が悪くなったら客室へ連れてくること。と記載されていたようです」
その他にも、公爵邸への行き方や着替えは着いてから手渡すこと、この手紙は読んだら焼き捨てるように、と書かれていたそうで。
「公爵邸内にはメイドが入れてくれたそうなのですが、初めて見た公爵家本邸に圧倒されメイドの容姿は覚えていないようです。また、飲ませる相手が殿下であるとは知らなかったようで、知った時は怯えていました」
その少年も何かおかしいと思ったけれど、治療費が必要だから指示通りに動いたみたい。
証拠が何も残っていないから誰も罪に問えないわね。薬草の入ったグラスにはどちらかの指紋が付いているでしょうけど、指紋を取る技術がないし、仮に取れたとしても照合できないし証拠物としてなりたたないのよね…。
私もルーシーから得た情報を共有しておきましょう。
「ホワイトさんですが、メアリーが王都で雇ったメイドとして邸内に入ったと思われます。彼女を同じ馬車に乗せるため、メアリーは私と共に乗るのを拒否したのでしょう。また、彼女が私のドレスを着ていた理由ですが、アルフレッド様が私と間違えるから、だそうです」
「なんだって?」
まぁ…驚くわよね。
「何も分かってないのね、とも言われました。もしかすると二人が協力関係だと思っているのはメアリーだけかもしれません」
「その可能性は高いと私も思います。メアリーはホワイト嬢がリリーナのドレスを着て会場内にいることには気付いていなかったようなので。彼女を公爵邸内に入れたのは脅されたからだと言っていましたが、恐らくその少年を入れるために連れてきたのでしょう」
お兄様も私と同じ考えのようね。やっぱりメアリーの計画を知った上でルーシーはメアリーを裏切るつもりでいるんだわ。それにしても、メアリーはルーシーを信用し過ぎじゃない?
「必ずまた仕掛けてくるだろうな」
早急に薬草の成分を調べ、分かり次第今後の動きを話し合おうと約束し、今日は解散となった。
*
*
「お兄様。メアリーは利用されていることに気付いていないようですが、教えてさしあげないのですか?」
「教えたらメアリーはホワイト嬢を切るだろうな。動きにくくなった彼女は必ず他に使える人間を見つけるだろう。でもそれはメアリーにも言える話だ。このまま二人で動いてもらった方が一番被害が少なく済む」
メアリーが心を入れ替えてくれるといいんだがと言ったお兄様は、どこか寂しそうな顔をしていた。正直私はどっちでもいいけれど、確かに家族を壊したいわけじゃないなと思いながら自室に戻り眠りについた。
------------------
※余談※
利用された少年の母親の治療費はレオニールが利息無しで貸し出し、少年の家族を公爵家の下級使用人として雇った。返済が終わるまで給料は減額支払いになるけど、公爵家の使用人宿舎に食事付きで部屋を与えられ、また家族みんなで住めるので、少年の家族はレオニールに大変感謝しているそう。
レオニールは、この件で恨まれ行動を起こされてから消すよりも、先回りして動いたほうが処理が楽だからそうしただけ。リリーナは兄だけは敵に回したくないと改めて思ったらしい。
「その女性というのは?」
「名は名乗らなかったそうです。黒いマントを羽織り、フードも深く被っていたようで、顔も分からなかったと。彼の母親は病に倒れており、父親は地方貴族の屋敷で使用人として働き、治療費を稼いでいるそうです。事情を知った女性にある人物に飲み物を手渡すだけで、母親の治療費を全額負担するからと雇われたようでして」
おそらくメアリーかルーシーでしょうけど、確認する方法がなさそうね。
「メアリー様には、気分が悪そうな人は3階にある客室へ案内するようにと指示されただけのようです」
「それについてはメアリーも同じように証言しております。ただ、新しい使用人だと思ったという証言については疑念の余地がありますが」
3階までその少年にアルフレッド様を連れてきてもらい、ルーシーと変わって部屋まで連れてくる計画だったのかしら。
「手渡す相手がアルフレッド様だとはいつ指示があったのですか?」
「はい。どうやら自宅に手紙が届いたようで、そこには指示された飲み物を金髪金目の青年にリリーナからだと言って飲ませること。全て飲み切るのを見届けること。数分してその青年の気分が悪くなったら客室へ連れてくること。と記載されていたようです」
その他にも、公爵邸への行き方や着替えは着いてから手渡すこと、この手紙は読んだら焼き捨てるように、と書かれていたそうで。
「公爵邸内にはメイドが入れてくれたそうなのですが、初めて見た公爵家本邸に圧倒されメイドの容姿は覚えていないようです。また、飲ませる相手が殿下であるとは知らなかったようで、知った時は怯えていました」
その少年も何かおかしいと思ったけれど、治療費が必要だから指示通りに動いたみたい。
証拠が何も残っていないから誰も罪に問えないわね。薬草の入ったグラスにはどちらかの指紋が付いているでしょうけど、指紋を取る技術がないし、仮に取れたとしても照合できないし証拠物としてなりたたないのよね…。
私もルーシーから得た情報を共有しておきましょう。
「ホワイトさんですが、メアリーが王都で雇ったメイドとして邸内に入ったと思われます。彼女を同じ馬車に乗せるため、メアリーは私と共に乗るのを拒否したのでしょう。また、彼女が私のドレスを着ていた理由ですが、アルフレッド様が私と間違えるから、だそうです」
「なんだって?」
まぁ…驚くわよね。
「何も分かってないのね、とも言われました。もしかすると二人が協力関係だと思っているのはメアリーだけかもしれません」
「その可能性は高いと私も思います。メアリーはホワイト嬢がリリーナのドレスを着て会場内にいることには気付いていなかったようなので。彼女を公爵邸内に入れたのは脅されたからだと言っていましたが、恐らくその少年を入れるために連れてきたのでしょう」
お兄様も私と同じ考えのようね。やっぱりメアリーの計画を知った上でルーシーはメアリーを裏切るつもりでいるんだわ。それにしても、メアリーはルーシーを信用し過ぎじゃない?
「必ずまた仕掛けてくるだろうな」
早急に薬草の成分を調べ、分かり次第今後の動きを話し合おうと約束し、今日は解散となった。
*
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「お兄様。メアリーは利用されていることに気付いていないようですが、教えてさしあげないのですか?」
「教えたらメアリーはホワイト嬢を切るだろうな。動きにくくなった彼女は必ず他に使える人間を見つけるだろう。でもそれはメアリーにも言える話だ。このまま二人で動いてもらった方が一番被害が少なく済む」
メアリーが心を入れ替えてくれるといいんだがと言ったお兄様は、どこか寂しそうな顔をしていた。正直私はどっちでもいいけれど、確かに家族を壊したいわけじゃないなと思いながら自室に戻り眠りについた。
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※余談※
利用された少年の母親の治療費はレオニールが利息無しで貸し出し、少年の家族を公爵家の下級使用人として雇った。返済が終わるまで給料は減額支払いになるけど、公爵家の使用人宿舎に食事付きで部屋を与えられ、また家族みんなで住めるので、少年の家族はレオニールに大変感謝しているそう。
レオニールは、この件で恨まれ行動を起こされてから消すよりも、先回りして動いたほうが処理が楽だからそうしただけ。リリーナは兄だけは敵に回したくないと改めて思ったらしい。
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