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第百三十四話
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「白瀬、君は間違いなく僕の初恋の相手なんだ。
それは板額は言うに及ばず、緑川よりも君の方が確実に先。
もし君が生きて一緒に居たなら、
今、緑川や板額の所に居るのは君だったと思うよ」
僕はすっごく臭いセリフとは思ったけど、あえて精一杯カッコよく白瀬に囁きかけた。
「まあ、もっとも優柔不断な僕だから、
板額、緑川も同じ彼女になっちゃてるだろうけどね」
そう言ったあと、少し照れ隠しで僕はそう言って笑った。
「うれしい!」
そう言い終わるや否や、白瀬が僕に抱き着いて来た。
僕が彼女を抱きしめようとした時は僕の両手は空を切った。しかし、今度は不思議な事に白瀬の両手が僕を抱きしめるをちゃんと感じられた。それに少しだけ冷ややかではあったけど、白瀬の体の柔らかささえ僕の胸には感じられたのだ。
「巴には言ったけど、私、平泉君と合作であの劇出来て、
すっごく嬉しかったんだよ。
あの時は、私、もう何度もお義父さんに酷い目にあわされて、
生きているのが辛い毎日だったけど、
あの時だけは本当に生きていて良かったって思えた」
そう言って白瀬は微笑んだ。僕にはその微笑みが少し悲しそうに見えた。
そして、あの時、僕が白瀬がそんな苦しい毎日を送っていた事を知っていたなら、どうしていただろうとふと思った。
あの劇の結末をあのままにしていただろうか?
いや、違う。いくらあの時の少しうぬぼれていた僕だってそんな事はしなかった。
きっと、白瀬が最初に書いたあの小説の通り、いや、もっと美しく救いのある結末にしていたはずだ。
……とそこまで思って僕は、最後の言葉をおもわず口にしていた。
「……はずだ」
「えっ?何か言った、平泉君?」
僕の胸に顔をうずめていた白瀬が、その顔を上げて不思議そうな顔で聞き返して来た。
「いや、何でもないよ」
でも僕はそう言ってごまかした。
いまさら過去は変えられない。
白瀬は、白瀬の自殺に僕は関係ない、あの劇に満足してたと断言してくれた。
それでもなお、やはり僕は僕自身を完全に許すことは出来ない様だ。
以前の様に、それで自分自身を縛り付け白瀬の声を呪いと受け止め、彼女を怨霊として見る事はもう二度とないだろう。それでも、僕は、白瀬の怨霊(と思い込んでいた)に誓った言葉は今でも否定する事は出来ない。いや、真実を知ってなおさらあの誓いを違う意味でもう一度、白瀬にしたいと思った。
やっぱり、白瀬京子は僕の初恋の女の子なんだ。
例え、あの時にはすでに義父の手でその身を汚されていたとしても、僕の彼女に対する気持ちはこれっぽっちも変わらない。生きていてさえくれれば……僕はもう二度と叶わぬ想いを今一度心に刻んだ。
「おいおい、巴。
僕らがちょっと目を離した隙に京子の奴、
さっそく抜け駆けしてるぞ」
「……って、初めて見た京子の霊が自分の彼氏とあんな事って!
あれって完全に浮気よね!」
白瀬を胸に抱きながら僕がそんな事をつらつら思っていると、突然、板額と緑川の声が響いた。
初恋の相手だった白瀬との再会で二人だけの世界に浸りきっていた僕は、その声で現実に引き戻された。
そこには、こちらをじっと凝視している板額と緑川が居た。
「だから言ったろ、京子は僕らにとって
最強のライバルだって」
「私だって、あの頃の与一が京子に気があるだけじゃなく、
京子の方も与一が好きだった事くらい気づいてたわよ。
だから二人が再会すればどうなるかくらいある程度は予想はしてた。
でも、こうしてあんな姿見せられると……やっぱり納得行かない」
板額は相変わらずに何やら楽し気ににやにや笑っていた。
その一方、緑川は何やら不満げな表情だった。いや不満げと言うより、あれは明らかに怒っている感じがした。
二人の言葉に僕は、今自分がどれだけ危ない事をしているのかに気が付いた。緑川が口にした様に、今のこの状況は、二人にとって完全に『浮気』だ。確かに、板額、そして緑川に対しても白瀬は最優先権があるとも言える。
しかしだ。
実際には、白瀬は現実世界では勝利を目前にしながらシュートを打つことなく自ら退場してしまった。そして、その後、板額が華麗に僕というゴールにシュートを決め、続いて緑川までもシュートを決めてしまったのだ。
それが現実なのだ。
もっか正妻戦争を静かに繰り広げてる板額と緑川にすれば、やっぱり、白瀬は後からやって来て、いいとこどりしようとしている泥棒猫って事になる。
このままでは間違いなく修羅場だ……僕のゴーストがアラームを鳴らし始めた。
それは板額は言うに及ばず、緑川よりも君の方が確実に先。
もし君が生きて一緒に居たなら、
今、緑川や板額の所に居るのは君だったと思うよ」
僕はすっごく臭いセリフとは思ったけど、あえて精一杯カッコよく白瀬に囁きかけた。
「まあ、もっとも優柔不断な僕だから、
板額、緑川も同じ彼女になっちゃてるだろうけどね」
そう言ったあと、少し照れ隠しで僕はそう言って笑った。
「うれしい!」
そう言い終わるや否や、白瀬が僕に抱き着いて来た。
僕が彼女を抱きしめようとした時は僕の両手は空を切った。しかし、今度は不思議な事に白瀬の両手が僕を抱きしめるをちゃんと感じられた。それに少しだけ冷ややかではあったけど、白瀬の体の柔らかささえ僕の胸には感じられたのだ。
「巴には言ったけど、私、平泉君と合作であの劇出来て、
すっごく嬉しかったんだよ。
あの時は、私、もう何度もお義父さんに酷い目にあわされて、
生きているのが辛い毎日だったけど、
あの時だけは本当に生きていて良かったって思えた」
そう言って白瀬は微笑んだ。僕にはその微笑みが少し悲しそうに見えた。
そして、あの時、僕が白瀬がそんな苦しい毎日を送っていた事を知っていたなら、どうしていただろうとふと思った。
あの劇の結末をあのままにしていただろうか?
いや、違う。いくらあの時の少しうぬぼれていた僕だってそんな事はしなかった。
きっと、白瀬が最初に書いたあの小説の通り、いや、もっと美しく救いのある結末にしていたはずだ。
……とそこまで思って僕は、最後の言葉をおもわず口にしていた。
「……はずだ」
「えっ?何か言った、平泉君?」
僕の胸に顔をうずめていた白瀬が、その顔を上げて不思議そうな顔で聞き返して来た。
「いや、何でもないよ」
でも僕はそう言ってごまかした。
いまさら過去は変えられない。
白瀬は、白瀬の自殺に僕は関係ない、あの劇に満足してたと断言してくれた。
それでもなお、やはり僕は僕自身を完全に許すことは出来ない様だ。
以前の様に、それで自分自身を縛り付け白瀬の声を呪いと受け止め、彼女を怨霊として見る事はもう二度とないだろう。それでも、僕は、白瀬の怨霊(と思い込んでいた)に誓った言葉は今でも否定する事は出来ない。いや、真実を知ってなおさらあの誓いを違う意味でもう一度、白瀬にしたいと思った。
やっぱり、白瀬京子は僕の初恋の女の子なんだ。
例え、あの時にはすでに義父の手でその身を汚されていたとしても、僕の彼女に対する気持ちはこれっぽっちも変わらない。生きていてさえくれれば……僕はもう二度と叶わぬ想いを今一度心に刻んだ。
「おいおい、巴。
僕らがちょっと目を離した隙に京子の奴、
さっそく抜け駆けしてるぞ」
「……って、初めて見た京子の霊が自分の彼氏とあんな事って!
あれって完全に浮気よね!」
白瀬を胸に抱きながら僕がそんな事をつらつら思っていると、突然、板額と緑川の声が響いた。
初恋の相手だった白瀬との再会で二人だけの世界に浸りきっていた僕は、その声で現実に引き戻された。
そこには、こちらをじっと凝視している板額と緑川が居た。
「だから言ったろ、京子は僕らにとって
最強のライバルだって」
「私だって、あの頃の与一が京子に気があるだけじゃなく、
京子の方も与一が好きだった事くらい気づいてたわよ。
だから二人が再会すればどうなるかくらいある程度は予想はしてた。
でも、こうしてあんな姿見せられると……やっぱり納得行かない」
板額は相変わらずに何やら楽し気ににやにや笑っていた。
その一方、緑川は何やら不満げな表情だった。いや不満げと言うより、あれは明らかに怒っている感じがした。
二人の言葉に僕は、今自分がどれだけ危ない事をしているのかに気が付いた。緑川が口にした様に、今のこの状況は、二人にとって完全に『浮気』だ。確かに、板額、そして緑川に対しても白瀬は最優先権があるとも言える。
しかしだ。
実際には、白瀬は現実世界では勝利を目前にしながらシュートを打つことなく自ら退場してしまった。そして、その後、板額が華麗に僕というゴールにシュートを決め、続いて緑川までもシュートを決めてしまったのだ。
それが現実なのだ。
もっか正妻戦争を静かに繰り広げてる板額と緑川にすれば、やっぱり、白瀬は後からやって来て、いいとこどりしようとしている泥棒猫って事になる。
このままでは間違いなく修羅場だ……僕のゴーストがアラームを鳴らし始めた。
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