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第百十九話
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さて、ここで僕は『タレちゃん』の事を話さないわけにはゆくまい。
『タレちゃん』、それは僕が小学校5年生の半年間だけ一緒に居た友達。ずっと言い続けてはいるけれど、一人っ子の僕にとって初めて出来た弟みたにすっごく可愛がっていた子のあだ名だ。本当の名前は確か……『風祭 忍』っだったはず。
あの時、僕は地方の小さな街にある、とある小学校に転校していた。僕がその学校に転校したのは五年生が始まる4月だった。そしてタレちゃんこと『風祭 忍』はその数か月後のGW明けに僕の居たクラスに転校して来た。当時の父と同じく忍の父親も転勤の多い職業だったらしい。
その頃の僕は、今の様に他人とのかかわりを嫌うボッチではなかった。すでに話したように僕がこうなったのはあの『白瀬 京子』の事件以降だ。あの頃は、かなり積極的性分で、今の緑川に近い感じだった。もっと言うなら板額に近い、いや板額そのものと言う感じだった。
その為、四月からの転校生ではあったが、僕はGWが始まる前にはすでにクラスの中心的役割を演じる存在にまでなっていた。もちろん、それは自分がそう思っているだけの空回りではなく、周りも僕を認めて転校生ながらクラスのリーダー役と認めてくれていた。まったくあの頃の僕は本当にアクティブでポジティブな奴だった。典型的なクラスの人気者と言う奴だ。しかも、転校生である事を常に意識し、今まで居たそう言うポジションの者に気を遣う事も忘れてはいなかった。だから変な嫉妬を買う事もほとんどなかったのだ。
自慢じゃないが、思春期に入り、何かと自分中心に考えがちになるあの歳にしてはとても良くできた子供だった感心する。
忍はGW明け直後に、僕が居たクラスに転校して来た。
GW明けでまだ少し浮ついた感じが残るクラスに、担任の先生が忍を伴って入って来た時の事は良く覚えている。
当然、見知らぬ生徒を伴って担任がクラスに入って来れば、それが転校生だと気が付くのが当然だ。学年最初の始業式からの転入であった僕だったが、やはり同じ様に一人、担任に伴われて朝クラスにやって来た。それがたった数か月前の事なので、僕らのクラスでは慣れっ子になっていた。一方、立て続けの転校生はちょっとした驚きでもあった。
こちらの方は軽く種明かしをすれば、GW前に一人、僕同様に親の転勤で転校していった子が居のだ。その為、偶然が重なって僕の居るクラスにこんな短期間に二人の転入生が来る珍事が起こったのだ。
いや、実際にはそれだけじゃない。
担任に伴われてはいって来たその子供は、真っ白なYシャツに小さなネクタイ黒い半ズボンと言う姿だった。それはまるでどこかいいところの子女が通う私学の制服の様でもあった。それはそれで結構、珍しくはあるが問題はそこじゃない。見るからに男の子と言う服装ではあったが、その子の顔つきが普通とは違っていた。
そう、その頃のまだ知識に乏しい僕らでも誰もがそう感じたんだ。少し長め、そう、活発な女の子する様なショートカット風の髪型の影響もあるからだろうとは思った。でも、後で聞いて誰もが真っ先に思ったのだが『綺麗な子』だって事。
その子は、きりりした切れ長の目と長いまつ毛。ほりの深い顔立ち。もし、この子を一言で言い現わすならこの頃の女の子がよく言われる『可愛い子』とは明らかに違う。細身の体と長い手足も相まって、まだ幼さが残る顔立ちが多いこの年頃にあって、明らかに『美しい子』と言い表すべき独特の大人びた雰囲気を持っていた。
「ちょっと前に平泉君の事もあったらみんなも、もう想像はついてるね。
今日から一緒に勉強することになった『風祭 忍』君だ。
みんな、平泉君同様に仲良くしてあげてくれ」
そう担任が忍の名を黒板に書きながら僕らに忍を紹介した。
「さあ、風祭君、簡単に自己紹介して……」
しかしながら、この担任の言葉の後、クラスのみんなが持つ忍の印象が180度変わることになるとはその時は誰もが思わなかった。
「……あの……あの……僕……」
その瞬間、クラス中の者の頭の中に大きな『?』が浮かんだ。
だって、誰もがその外見から僕同様、いやそれ以上に大人びた低く落ち着いた声と理路整然とした自己紹介が始まると勝手に思っていたのだ。
しかし、その予想に反して、忍は恥ずかし気に俯き、胸の前で組んだ両手を、まるでおしっこでも我慢してるかの様にもじもじさせ、消え入りそうな声でそう囁いたのだ。
『タレちゃん』、それは僕が小学校5年生の半年間だけ一緒に居た友達。ずっと言い続けてはいるけれど、一人っ子の僕にとって初めて出来た弟みたにすっごく可愛がっていた子のあだ名だ。本当の名前は確か……『風祭 忍』っだったはず。
あの時、僕は地方の小さな街にある、とある小学校に転校していた。僕がその学校に転校したのは五年生が始まる4月だった。そしてタレちゃんこと『風祭 忍』はその数か月後のGW明けに僕の居たクラスに転校して来た。当時の父と同じく忍の父親も転勤の多い職業だったらしい。
その頃の僕は、今の様に他人とのかかわりを嫌うボッチではなかった。すでに話したように僕がこうなったのはあの『白瀬 京子』の事件以降だ。あの頃は、かなり積極的性分で、今の緑川に近い感じだった。もっと言うなら板額に近い、いや板額そのものと言う感じだった。
その為、四月からの転校生ではあったが、僕はGWが始まる前にはすでにクラスの中心的役割を演じる存在にまでなっていた。もちろん、それは自分がそう思っているだけの空回りではなく、周りも僕を認めて転校生ながらクラスのリーダー役と認めてくれていた。まったくあの頃の僕は本当にアクティブでポジティブな奴だった。典型的なクラスの人気者と言う奴だ。しかも、転校生である事を常に意識し、今まで居たそう言うポジションの者に気を遣う事も忘れてはいなかった。だから変な嫉妬を買う事もほとんどなかったのだ。
自慢じゃないが、思春期に入り、何かと自分中心に考えがちになるあの歳にしてはとても良くできた子供だった感心する。
忍はGW明け直後に、僕が居たクラスに転校して来た。
GW明けでまだ少し浮ついた感じが残るクラスに、担任の先生が忍を伴って入って来た時の事は良く覚えている。
当然、見知らぬ生徒を伴って担任がクラスに入って来れば、それが転校生だと気が付くのが当然だ。学年最初の始業式からの転入であった僕だったが、やはり同じ様に一人、担任に伴われて朝クラスにやって来た。それがたった数か月前の事なので、僕らのクラスでは慣れっ子になっていた。一方、立て続けの転校生はちょっとした驚きでもあった。
こちらの方は軽く種明かしをすれば、GW前に一人、僕同様に親の転勤で転校していった子が居のだ。その為、偶然が重なって僕の居るクラスにこんな短期間に二人の転入生が来る珍事が起こったのだ。
いや、実際にはそれだけじゃない。
担任に伴われてはいって来たその子供は、真っ白なYシャツに小さなネクタイ黒い半ズボンと言う姿だった。それはまるでどこかいいところの子女が通う私学の制服の様でもあった。それはそれで結構、珍しくはあるが問題はそこじゃない。見るからに男の子と言う服装ではあったが、その子の顔つきが普通とは違っていた。
そう、その頃のまだ知識に乏しい僕らでも誰もがそう感じたんだ。少し長め、そう、活発な女の子する様なショートカット風の髪型の影響もあるからだろうとは思った。でも、後で聞いて誰もが真っ先に思ったのだが『綺麗な子』だって事。
その子は、きりりした切れ長の目と長いまつ毛。ほりの深い顔立ち。もし、この子を一言で言い現わすならこの頃の女の子がよく言われる『可愛い子』とは明らかに違う。細身の体と長い手足も相まって、まだ幼さが残る顔立ちが多いこの年頃にあって、明らかに『美しい子』と言い表すべき独特の大人びた雰囲気を持っていた。
「ちょっと前に平泉君の事もあったらみんなも、もう想像はついてるね。
今日から一緒に勉強することになった『風祭 忍』君だ。
みんな、平泉君同様に仲良くしてあげてくれ」
そう担任が忍の名を黒板に書きながら僕らに忍を紹介した。
「さあ、風祭君、簡単に自己紹介して……」
しかしながら、この担任の言葉の後、クラスのみんなが持つ忍の印象が180度変わることになるとはその時は誰もが思わなかった。
「……あの……あの……僕……」
その瞬間、クラス中の者の頭の中に大きな『?』が浮かんだ。
だって、誰もがその外見から僕同様、いやそれ以上に大人びた低く落ち着いた声と理路整然とした自己紹介が始まると勝手に思っていたのだ。
しかし、その予想に反して、忍は恥ずかし気に俯き、胸の前で組んだ両手を、まるでおしっこでも我慢してるかの様にもじもじさせ、消え入りそうな声でそう囁いたのだ。
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