118 / 161
第百十八話
しおりを挟む
「うん、それは半分合ってて、半分違ってる。
僕は元々『両性具有』なんだ。
君と居たあの時は『男』の性を自身も両親も選択し、
もう少ししたら手術を受けてちゃんとした『男の子』になる予定だったんだ」
板額は僕にそう言って、ゆっくりと顔を離した。
板額の答えに僕は驚いた。
でも不思議と『驚愕した』と言う感じはなかった。後で思えば『ああやっぱりそうか』っていうような感じだった。ちなみに、ちらりと見た緑川も同じ様な表情をしていた。そして後で聞いたら、僕と同じことを言っていた。
思えば、前に緑川が板額とキスしたことがあったっけ。あの時は、やっぱりこの年頃の女の子は誰でも百合の気が多少はあるもんだ、なんて思ってた。でも実際には、緑川と板額は女の子と綺麗な男の子でもあったんだ。だから緑川は、本能的に、そして無意識に板額が隠し持っていた『男』に女の子として反応してしまったじゃないだろうか。それ以降も、緑川は板額に女の子同士の友情と共に、半分、意識せずに板額と男女の恋愛感情に近いものをずっと持ち続けていた様な気がする。
逆に、こうなるとヤバいのは僕の方だ。僕も、板額に関しては男女の恋愛感情を持つ一方、なんだかすごくもやもやする、でもとても心地良いものを感じていた。女の子が持つ色気以上の色気。それは男の子だからこそ出す事のできる、男の子の心の微妙な部分をくすぐる色気だ。そしてそれは『男の娘』に惹かれる男心って奴そのものだ。僕の男としての本能は板額の中に男を見つけていたのかもしれない。それでも板額にどんどん魅了されていった僕は、ある意味、それはとっても危ない性癖を持っていたのかも、なんて少し思った。
「じゃ、やっぱり君はあの『タレちゃん』なんだ」
そして僕は、板額が僕の知る可愛い弟だった『タレちゃん』である事を意外にすんなり受け入れた。だって、言われてみれば、板額の顔にはあの『タレちゃん』の面影がかなり色濃く残っていたんだ。元々『タレちゃん』はすごく中性的な男の子だった。そういえば、あの時からすごく綺麗な顔つきの男の子だったっけ。最初にあんな事になっちゃったのも、その綺麗な顔が他の男子だけじゃなく女子の嫉妬まで掻き立ててしまったからかもしれない。
「でも、色々驚いたよ。
性別が変わっちゃったのは言うまでもないけど、
もっと驚いたのは、その性格だよ。
とてもあの時の『タレちゃん』とは似ても似つかない。
今思えばそれが一番の原因で『タレちゃん』と君が結びつかなかったんだ」
僕がそう言って微笑むと板額が突然、僕の胸に飛び込んできて僕にしがみついた。
「やっと……やっと……本当に与一にまた会えた!」
そう言って板額は僕の胸で泣きじゃくり始めた。
それを見て、また緑川の表情がいっそう厳しくなったのは言うまでもない。
それでも僕はそんな板額が、そう今、板額が元男の子で、しかも弟と思って可愛がっていた『タレちゃん』と分かっても、僕はたまらなく愛しく感じた。
「もしかして君の性別が変わったのは、
前に話してくれた事故とその後のお祖母さんとの絡みかい?」
僕は板額の頭を優しくなでながらそう囁く様に尋ねた。
「そうだよ、与一。
でも、性格が変わったのは君が居たからだよ。
僕はあの時、大好きで憧れていた君みたいになりたかったんだ。
それで、いっぱい、いっぱい、努力したんだ。
君に再び会えた時に、いっぱい、いっぱい褒めてもらう為にね。
なのに与一ったら僕の事、忘れてた……」
板額は僕にしがみついたまま、僕を見上げてそう甘えた声で言った。そして最後の部分は少し頬を膨らませて、あからさまな不満を僕に示していた。
同時に、僕は視界の隅に捉えていた緑川が完全に鬼の形相と化しているのに気が付いた。
しかし、あの時、確かに『タレちゃん』は男の子だった。しかもあの時、僕が通っていた学校は普通の公立小学校だった。その学校側の様子からしても公的書類も『男の子』になっていたはず。
正式に調べたわけじゃないし、今のご時世、僕みたいな素人が公的な書類を調べることは難しいだろう。それでも今の葵高の様子からすると、今の板額は公式の書類上でも『女の子』になっている気がする。だいぶ色々な面で融通が付く世の中にはなってるけど、そうでなければ色々不便すぎるだろう。
となると、やっぱり、板額は身体的には今は完全に『女の子』になっていて、さらには公式な性別も『女の子』に変更されていると考えるのが自然だ。これも烏丸家の影響力の強さ故出来た事だろうか、なんて僕は少し感心していた。
僕は元々『両性具有』なんだ。
君と居たあの時は『男』の性を自身も両親も選択し、
もう少ししたら手術を受けてちゃんとした『男の子』になる予定だったんだ」
板額は僕にそう言って、ゆっくりと顔を離した。
板額の答えに僕は驚いた。
でも不思議と『驚愕した』と言う感じはなかった。後で思えば『ああやっぱりそうか』っていうような感じだった。ちなみに、ちらりと見た緑川も同じ様な表情をしていた。そして後で聞いたら、僕と同じことを言っていた。
思えば、前に緑川が板額とキスしたことがあったっけ。あの時は、やっぱりこの年頃の女の子は誰でも百合の気が多少はあるもんだ、なんて思ってた。でも実際には、緑川と板額は女の子と綺麗な男の子でもあったんだ。だから緑川は、本能的に、そして無意識に板額が隠し持っていた『男』に女の子として反応してしまったじゃないだろうか。それ以降も、緑川は板額に女の子同士の友情と共に、半分、意識せずに板額と男女の恋愛感情に近いものをずっと持ち続けていた様な気がする。
逆に、こうなるとヤバいのは僕の方だ。僕も、板額に関しては男女の恋愛感情を持つ一方、なんだかすごくもやもやする、でもとても心地良いものを感じていた。女の子が持つ色気以上の色気。それは男の子だからこそ出す事のできる、男の子の心の微妙な部分をくすぐる色気だ。そしてそれは『男の娘』に惹かれる男心って奴そのものだ。僕の男としての本能は板額の中に男を見つけていたのかもしれない。それでも板額にどんどん魅了されていった僕は、ある意味、それはとっても危ない性癖を持っていたのかも、なんて少し思った。
「じゃ、やっぱり君はあの『タレちゃん』なんだ」
そして僕は、板額が僕の知る可愛い弟だった『タレちゃん』である事を意外にすんなり受け入れた。だって、言われてみれば、板額の顔にはあの『タレちゃん』の面影がかなり色濃く残っていたんだ。元々『タレちゃん』はすごく中性的な男の子だった。そういえば、あの時からすごく綺麗な顔つきの男の子だったっけ。最初にあんな事になっちゃったのも、その綺麗な顔が他の男子だけじゃなく女子の嫉妬まで掻き立ててしまったからかもしれない。
「でも、色々驚いたよ。
性別が変わっちゃったのは言うまでもないけど、
もっと驚いたのは、その性格だよ。
とてもあの時の『タレちゃん』とは似ても似つかない。
今思えばそれが一番の原因で『タレちゃん』と君が結びつかなかったんだ」
僕がそう言って微笑むと板額が突然、僕の胸に飛び込んできて僕にしがみついた。
「やっと……やっと……本当に与一にまた会えた!」
そう言って板額は僕の胸で泣きじゃくり始めた。
それを見て、また緑川の表情がいっそう厳しくなったのは言うまでもない。
それでも僕はそんな板額が、そう今、板額が元男の子で、しかも弟と思って可愛がっていた『タレちゃん』と分かっても、僕はたまらなく愛しく感じた。
「もしかして君の性別が変わったのは、
前に話してくれた事故とその後のお祖母さんとの絡みかい?」
僕は板額の頭を優しくなでながらそう囁く様に尋ねた。
「そうだよ、与一。
でも、性格が変わったのは君が居たからだよ。
僕はあの時、大好きで憧れていた君みたいになりたかったんだ。
それで、いっぱい、いっぱい、努力したんだ。
君に再び会えた時に、いっぱい、いっぱい褒めてもらう為にね。
なのに与一ったら僕の事、忘れてた……」
板額は僕にしがみついたまま、僕を見上げてそう甘えた声で言った。そして最後の部分は少し頬を膨らませて、あからさまな不満を僕に示していた。
同時に、僕は視界の隅に捉えていた緑川が完全に鬼の形相と化しているのに気が付いた。
しかし、あの時、確かに『タレちゃん』は男の子だった。しかもあの時、僕が通っていた学校は普通の公立小学校だった。その学校側の様子からしても公的書類も『男の子』になっていたはず。
正式に調べたわけじゃないし、今のご時世、僕みたいな素人が公的な書類を調べることは難しいだろう。それでも今の葵高の様子からすると、今の板額は公式の書類上でも『女の子』になっている気がする。だいぶ色々な面で融通が付く世の中にはなってるけど、そうでなければ色々不便すぎるだろう。
となると、やっぱり、板額は身体的には今は完全に『女の子』になっていて、さらには公式な性別も『女の子』に変更されていると考えるのが自然だ。これも烏丸家の影響力の強さ故出来た事だろうか、なんて僕は少し感心していた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
瞬間、青く燃ゆ
葛城騰成
ライト文芸
ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。
時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。
どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?
狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。
春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。
やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。
第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~
ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。
「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。
世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった!
次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で
幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──!
「この世に、幽霊事件なんてありえません」
幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の
ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる