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第百十五話
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「「『意味が分かると怖い話』?」」
またしても僕と緑川は同じことを聞き返してしまった。
『意味が分かると怖い話』……それはネットでかなり流行ったジャンルだ。
最初に聞いた(読んだ)時は、さほど怖さも感じないちょっとだけ奇妙な話。しかし、もう一度、注意深く読み返してみると、身の毛もよだつ様な恐怖が隠されている話の事である。高度な物になると、普通の人では開設サイトを読まないと本当の意味が分からない程、作り込まれたものすらある。
「そう、意味が分かると怖い話。
これ、実際にあった事を聞き手に実体験させてる話なんだよ」
僕らの問いに板額はそう言って少し笑った。
「実体験させる……って言われてもねぇ……」
「さらっと聞いただけだと、出来の悪い昔話にしか聞こえない気が……」
板額の言った言葉の真意が理解できず、緑川と僕はそう呟いていた。
「いや、実際に君たちは言ったろ『角のある猿の事が触れられてない』って。
実際、その通りだったんだよ、君たち人類から見たらね」
えっ……板額、君は今、何と言った? 『君たち人類』って確かに言ったよね。という事は、この言葉の裏には、この言葉を口にした板額は『人類ではない』って事になるんじゃないのか?
「「君たち人類?」」
たぶん、頭の回転が速い緑川の事だ、瞬時に僕と同じことに気が付いたのだろう。またしても僕らは同じ言葉を聞き返していた。
「そう、『角のある猿』は僕ら『鬼牙』の事だよ」
板額はこともなげにそう答えた。
その答えに、僕はあまり驚かない自分に少し驚いた。いや、僕だけではない。緑川も大して驚いてはいない様だった。
普通考えれば、友人、いや、恋人が『私は人ではありません』と言えば驚くはずだ。まあ、中にはその後に『ただの兵器です』なんて定番化された言葉を思いつく者多いだろう。実際、僕もそれはちょっと思ってしまった。
「『角のある猿』である鬼牙は恐竜が神によって滅ぼされたのを見て、
瞬時に神の意図を理解したんだ」
板額はそう話し始めた。
「『知恵』しかもたぬ人類に対して、
『知恵』と『力』の両方を持つ上位種である鬼牙が彼らを抑えて、
この地上を支配するのはさほど難しい事ではない。
しかし、特定の種が他の種に対して絶対的な有利な状況になれば、
必ず『神』、いやそれは『自然の摂理』なのかもしれない、
巨大な力がその種を滅ぼし世界をリセットしようとする。
それなら、もし鬼牙が人類を抑えて地上の支配権を確立すれば、
必ず『神』は鬼牙を滅ぼそうとする動きに出るに違いない。
もちろん、人類がそうであった様にそれに抗う事も鬼牙なら十分可能だ。
しかし、それには膨大な犠牲と労力が必要になる。
それならば……」
板額がそこまで言った時だった。
「まさか……あなた達、鬼牙って、人類の上位互換種って事?」
緑川が突然、そう声を上げた。
『上位互換種』。
それはパソコンなどを弄ってる人間なら見当のつく言葉だった。より高性能なパーツで最新の上位機種用のパーツありながら、在来の機種にも使えるパーツなどをさす言葉だ。
じゃあ緑川の言った『人類の上位互換種』って言うのなんだ。
「そう、さすが巴だね。もう気が付いたんだ。
鬼牙は単種で地上の支配をすることを諦めた。
その代わりに人類に擬態し紛れる事を選んだんだ。
表立って支配者になり神からの攻撃を受ける事より、
裏方に回り密かに種としての存続と繁栄を選んだんだ。
幸い、人類との交配が可能だった僕ら鬼牙は、
巴の言う様に人類に対して『上位互換種』となったんだ」
そういって板額は微笑んだ。ただ、そんな話を聞いた後だと、板額の微笑みが僕にはちょっと怖かった。
「でもその通りなら、この世の中もっと鬼牙が沢山いるはずじゃない?
『上位互換種』なら今頃はむしろ純粋な人類より多くなってるはず。
そうなれば、擬態する必要はもうないんじゃない。
たとえ擬態しててもその存在はもっとメジャーになってる気がするけど。
特にさっきの板額を見てると、
完全に人類を圧倒できる身体能力持ってる様だし」
そんな板額に緑川がそう言って怪訝な顔つきをした。
しかし、緑川の奴、今羽織ってる僕の上着の下は、ブラとショーツだけと言うかなり危ない状態なのに妙に落ち着いてるんだよな。一刻も早くまともな服に着替えたいと思ってそわそわするのが普通なのにこの落ち着き様は何なんだろう、って僕はこの時思った。今の緑川はそんな事より、板額との議論を楽しんでる風に僕には見えたのだ。
またしても僕と緑川は同じことを聞き返してしまった。
『意味が分かると怖い話』……それはネットでかなり流行ったジャンルだ。
最初に聞いた(読んだ)時は、さほど怖さも感じないちょっとだけ奇妙な話。しかし、もう一度、注意深く読み返してみると、身の毛もよだつ様な恐怖が隠されている話の事である。高度な物になると、普通の人では開設サイトを読まないと本当の意味が分からない程、作り込まれたものすらある。
「そう、意味が分かると怖い話。
これ、実際にあった事を聞き手に実体験させてる話なんだよ」
僕らの問いに板額はそう言って少し笑った。
「実体験させる……って言われてもねぇ……」
「さらっと聞いただけだと、出来の悪い昔話にしか聞こえない気が……」
板額の言った言葉の真意が理解できず、緑川と僕はそう呟いていた。
「いや、実際に君たちは言ったろ『角のある猿の事が触れられてない』って。
実際、その通りだったんだよ、君たち人類から見たらね」
えっ……板額、君は今、何と言った? 『君たち人類』って確かに言ったよね。という事は、この言葉の裏には、この言葉を口にした板額は『人類ではない』って事になるんじゃないのか?
「「君たち人類?」」
たぶん、頭の回転が速い緑川の事だ、瞬時に僕と同じことに気が付いたのだろう。またしても僕らは同じ言葉を聞き返していた。
「そう、『角のある猿』は僕ら『鬼牙』の事だよ」
板額はこともなげにそう答えた。
その答えに、僕はあまり驚かない自分に少し驚いた。いや、僕だけではない。緑川も大して驚いてはいない様だった。
普通考えれば、友人、いや、恋人が『私は人ではありません』と言えば驚くはずだ。まあ、中にはその後に『ただの兵器です』なんて定番化された言葉を思いつく者多いだろう。実際、僕もそれはちょっと思ってしまった。
「『角のある猿』である鬼牙は恐竜が神によって滅ぼされたのを見て、
瞬時に神の意図を理解したんだ」
板額はそう話し始めた。
「『知恵』しかもたぬ人類に対して、
『知恵』と『力』の両方を持つ上位種である鬼牙が彼らを抑えて、
この地上を支配するのはさほど難しい事ではない。
しかし、特定の種が他の種に対して絶対的な有利な状況になれば、
必ず『神』、いやそれは『自然の摂理』なのかもしれない、
巨大な力がその種を滅ぼし世界をリセットしようとする。
それなら、もし鬼牙が人類を抑えて地上の支配権を確立すれば、
必ず『神』は鬼牙を滅ぼそうとする動きに出るに違いない。
もちろん、人類がそうであった様にそれに抗う事も鬼牙なら十分可能だ。
しかし、それには膨大な犠牲と労力が必要になる。
それならば……」
板額がそこまで言った時だった。
「まさか……あなた達、鬼牙って、人類の上位互換種って事?」
緑川が突然、そう声を上げた。
『上位互換種』。
それはパソコンなどを弄ってる人間なら見当のつく言葉だった。より高性能なパーツで最新の上位機種用のパーツありながら、在来の機種にも使えるパーツなどをさす言葉だ。
じゃあ緑川の言った『人類の上位互換種』って言うのなんだ。
「そう、さすが巴だね。もう気が付いたんだ。
鬼牙は単種で地上の支配をすることを諦めた。
その代わりに人類に擬態し紛れる事を選んだんだ。
表立って支配者になり神からの攻撃を受ける事より、
裏方に回り密かに種としての存続と繁栄を選んだんだ。
幸い、人類との交配が可能だった僕ら鬼牙は、
巴の言う様に人類に対して『上位互換種』となったんだ」
そういって板額は微笑んだ。ただ、そんな話を聞いた後だと、板額の微笑みが僕にはちょっと怖かった。
「でもその通りなら、この世の中もっと鬼牙が沢山いるはずじゃない?
『上位互換種』なら今頃はむしろ純粋な人類より多くなってるはず。
そうなれば、擬態する必要はもうないんじゃない。
たとえ擬態しててもその存在はもっとメジャーになってる気がするけど。
特にさっきの板額を見てると、
完全に人類を圧倒できる身体能力持ってる様だし」
そんな板額に緑川がそう言って怪訝な顔つきをした。
しかし、緑川の奴、今羽織ってる僕の上着の下は、ブラとショーツだけと言うかなり危ない状態なのに妙に落ち着いてるんだよな。一刻も早くまともな服に着替えたいと思ってそわそわするのが普通なのにこの落ち着き様は何なんだろう、って僕はこの時思った。今の緑川はそんな事より、板額との議論を楽しんでる風に僕には見えたのだ。
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