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第七十八話
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「分かってるよ。
平泉君なら、こういう事があれば当然……
『あの主人公二人には悲劇的な結末しかない』
……って思うよね」
白瀬は微笑みを浮かべながらそう続けた。それは僕の思ってた通りの事だった。
「だから、そこから読者、この場合、観客だけど、
人の運命や社会の非情さを見せつけて、その苦い余韻から、
ならどう行動すれば良かったかと考えさせる方が良いんじゃないか?
綺麗に終わっちゃうと、ああ良い話だ素晴らしいって終わってしまう。
ある意味、観客の心に爪痕を残す作品の方が僕は好きだな」
僕は白瀬の言葉に誘われる様に思っていた通りの事をそのまま口にした。
「いや、このままでも白瀬の物語は凄く良いし、綺麗だと思ってるよ。
これはあくまで僕個人的な考えだよ。
実際、クラスの皆は今のままですごく満足してる」
僕は思ってた事を口にしてから、思わずそう言い訳がましく付け加えて。
その時の僕はあまり、と言うかほとんど自覚が無かったが、本当はすごく白瀬の事が好きだったんだと今では思っている。大人の……自分ではそう思っていた……考えを出来る自分を白瀬に自慢したい一方で、それが原因で、自分の作品を否定した僕を嫌いになることを避けたかったのだ。これって一種の『好きな女の子に意地悪する男の子』って奴に近い感情なんじゃないかと今は思える。
「やっぱり平泉君はそう思ってたんだね。
なんだか稽古してる時から私、そう感じてたんだ」
僕の言葉を聞いても白瀬は微笑みを崩さず、そう穏やかな口調で言った。白瀬が先に僕の言おうとしている事を言い当てたのは、普段の僕の言動からだろうと思っていた。でも、僕自身は稽古中はそう言う事を表に出さない様にしていたから、白瀬のこの言葉に少なからず驚いた。同時に、白瀬がそれだけ僕の事を良く見ていてくれた事に、その時の僕はすごく嬉しい気持ちになっていた。そう、白瀬も僕に対して『特別な好意』を持っているんじゃないかと思えたのだ。
この時の僕はそれを知って、少し有頂天になっていたのかもしれない。だから、その時の僕は白瀬がその後言った言葉の意味を、深く考えずに聞き流してしまっていた。今思えば、この時、僕は気づくべきだったのだ。そして、白瀬もそれを僕に気づいてほしくてそう言ったのだ。その時、僕が白瀬の言葉の意味をきちんと理解していればあんな事をする事な絶対になかった。
そう、もし、あの時の僕が今の僕ならば、例えその後に起こったあの悲劇を知らずとも、あんな事はしなかったはずだ。でも、それは起こってしまった。いや、僕はそれを起こしてしまった。
「でもね、平泉君、
私、このお話はハッピーエンドにしたかったんだ。
せめてお話の中ぐらいは、みんなが幸せになれる結末があって欲しいから」
そう、あれは白瀬の切なくも哀しい『願い』だったのだ。
そして、その日は否応なしにやって来た。
時間と言う物はどんな時も止まらず進むのだから当たり前と言えば当たり前なのだ。
いつもより誰もの足取りが軽く、少しばかり浮足立っている様子の文化祭初日の朝。この時ばかりは大学受験と言う人生最大とも言える岐路が近い三年生すら、しばしその事を忘れる事が出来る様だ。
僕らの教室は文化祭期間中、他のクラスの出し物の為に使われる。その為、僕らは控室として三年生の教室をあてがわれていた。ちなみにその教室の三年生は、そのクラスが出し物で使う二年の教室が集合場所となる。と言うのも三年生の教室は体育館に一番近く、体育館で催される演劇など舞台を必要とする出し物を企画したクラスはこちらの教室が控室にあてがわれていたのだ。その為、なんだか妙に新鮮な気持ちでその教室に入った事を僕は覚えている。
僕らの演劇は初日の午後一。
僕らはやや緊張はしていたがそ、れでも準備万端と言う自負もあり、思ったより皆、落ち着いていた。その中にあって、僕はただ一人、他のクラスメイトよりかなり緊張していた。それでも僕はその緊張を他の者に悟られない様に細心の注意を払っていた。
こういう場合の緊張と言う物は非常に伝播しやすい。せっかくここまで順調に来て、誰もが自信をもって本番に臨める環境が出来ているのだ。だから、ここに来て僕の個人的緊張を他の者たちに伝播させない為と言うのがその理由の一つだった。
しかし、その本当の理由は、僕が密かに準備した計画を他の者に、特に白瀬に悟られない為だったのだ。
平泉君なら、こういう事があれば当然……
『あの主人公二人には悲劇的な結末しかない』
……って思うよね」
白瀬は微笑みを浮かべながらそう続けた。それは僕の思ってた通りの事だった。
「だから、そこから読者、この場合、観客だけど、
人の運命や社会の非情さを見せつけて、その苦い余韻から、
ならどう行動すれば良かったかと考えさせる方が良いんじゃないか?
綺麗に終わっちゃうと、ああ良い話だ素晴らしいって終わってしまう。
ある意味、観客の心に爪痕を残す作品の方が僕は好きだな」
僕は白瀬の言葉に誘われる様に思っていた通りの事をそのまま口にした。
「いや、このままでも白瀬の物語は凄く良いし、綺麗だと思ってるよ。
これはあくまで僕個人的な考えだよ。
実際、クラスの皆は今のままですごく満足してる」
僕は思ってた事を口にしてから、思わずそう言い訳がましく付け加えて。
その時の僕はあまり、と言うかほとんど自覚が無かったが、本当はすごく白瀬の事が好きだったんだと今では思っている。大人の……自分ではそう思っていた……考えを出来る自分を白瀬に自慢したい一方で、それが原因で、自分の作品を否定した僕を嫌いになることを避けたかったのだ。これって一種の『好きな女の子に意地悪する男の子』って奴に近い感情なんじゃないかと今は思える。
「やっぱり平泉君はそう思ってたんだね。
なんだか稽古してる時から私、そう感じてたんだ」
僕の言葉を聞いても白瀬は微笑みを崩さず、そう穏やかな口調で言った。白瀬が先に僕の言おうとしている事を言い当てたのは、普段の僕の言動からだろうと思っていた。でも、僕自身は稽古中はそう言う事を表に出さない様にしていたから、白瀬のこの言葉に少なからず驚いた。同時に、白瀬がそれだけ僕の事を良く見ていてくれた事に、その時の僕はすごく嬉しい気持ちになっていた。そう、白瀬も僕に対して『特別な好意』を持っているんじゃないかと思えたのだ。
この時の僕はそれを知って、少し有頂天になっていたのかもしれない。だから、その時の僕は白瀬がその後言った言葉の意味を、深く考えずに聞き流してしまっていた。今思えば、この時、僕は気づくべきだったのだ。そして、白瀬もそれを僕に気づいてほしくてそう言ったのだ。その時、僕が白瀬の言葉の意味をきちんと理解していればあんな事をする事な絶対になかった。
そう、もし、あの時の僕が今の僕ならば、例えその後に起こったあの悲劇を知らずとも、あんな事はしなかったはずだ。でも、それは起こってしまった。いや、僕はそれを起こしてしまった。
「でもね、平泉君、
私、このお話はハッピーエンドにしたかったんだ。
せめてお話の中ぐらいは、みんなが幸せになれる結末があって欲しいから」
そう、あれは白瀬の切なくも哀しい『願い』だったのだ。
そして、その日は否応なしにやって来た。
時間と言う物はどんな時も止まらず進むのだから当たり前と言えば当たり前なのだ。
いつもより誰もの足取りが軽く、少しばかり浮足立っている様子の文化祭初日の朝。この時ばかりは大学受験と言う人生最大とも言える岐路が近い三年生すら、しばしその事を忘れる事が出来る様だ。
僕らの教室は文化祭期間中、他のクラスの出し物の為に使われる。その為、僕らは控室として三年生の教室をあてがわれていた。ちなみにその教室の三年生は、そのクラスが出し物で使う二年の教室が集合場所となる。と言うのも三年生の教室は体育館に一番近く、体育館で催される演劇など舞台を必要とする出し物を企画したクラスはこちらの教室が控室にあてがわれていたのだ。その為、なんだか妙に新鮮な気持ちでその教室に入った事を僕は覚えている。
僕らの演劇は初日の午後一。
僕らはやや緊張はしていたがそ、れでも準備万端と言う自負もあり、思ったより皆、落ち着いていた。その中にあって、僕はただ一人、他のクラスメイトよりかなり緊張していた。それでも僕はその緊張を他の者に悟られない様に細心の注意を払っていた。
こういう場合の緊張と言う物は非常に伝播しやすい。せっかくここまで順調に来て、誰もが自信をもって本番に臨める環境が出来ているのだ。だから、ここに来て僕の個人的緊張を他の者たちに伝播させない為と言うのがその理由の一つだった。
しかし、その本当の理由は、僕が密かに準備した計画を他の者に、特に白瀬に悟られない為だったのだ。
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