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第七十五話
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白瀬は授業の時も、こんなクラスでの会合でも指名されなければ、発言を求める事ななど滅多になかった。その白瀬がわざわざ手を上げて発言を求め、こう言ったのだ。クラスの誰もが驚いた。もちろん、それは僕だって例外じゃなかった。
実は、かく言う僕だって密かに、白瀬の事を憎からず思っていた。緑川の様に、はきはきした目立つ美人の女の子は確かに魅力的だ。しかし年頃の男子は、白瀬の様な日陰にひっそりと咲く小さいけど綺麗なすみれの花の様な女の子にも惹かれる物なのだ。他の男達は気がつかないけれど、自分だけがその魅力を知っている。そんなシチュエーションに萌えるのだ。これって男子特有の『独占欲』の一種なのだと僕は思う。
結局、出し物を決定するまでには、まだ時間的余裕もあると言う事で、とりあえず基になると言う話を読んでから決めようと言う事になった。
白瀬は、すぐにあるURLと検索ワードを僕らに示した。
白瀬が示したURLとキーワードの一部には僕自身覚えがあった。そう、その頃僕が時々見ていた有名小説投稿サイトだったのだ。そしてそこは『小泉八千代』と言うペンネームを持つ作者のページだったのだ。そこには白瀬が指定した小説の他に、三つほど短編と長編の小説まで公開されていた。
そう、白瀬は『小泉八千代』と言う名でネット小説を書いていたのだ。たぶんそのペンネームは、『小泉八雲』のもじりであろう。小説好きの白瀬らしいペンネームだと僕は思った。ちなみに、白瀬の小説は競合ひしめくファンタジー部門でランカー(俗言われる10位以内)ではなかったが100位以内に入っていた。これは結構な数の読者が付いて結構人気がある事を示す数字なのだ。
最終決定は三日後となった。その間に各自が白瀬の小説を読んで判断する事になったのだ。
翌日朝、白瀬は気の毒の程、おどおどして教室に入って来た。そして顔を伏せ、隠れる様にして自分の席に着くといそいそと鞄から本を出し読みふけり始めた。僕には分かっていた。白瀬はああしているが、本など読んではいない。ただ他のクラスの人間たちと目を合わせるのが怖いのだ。そして、今、白瀬は自分が勢いだけで昨日、あんな事を言てしまった事をとても恥じているに違いない。激しい後悔と恥ずかしさで、今の白瀬は文字通り、穴があれば入りたい、いや天照大御神の様に岩戸に閉じこもりたい気持ちなのだろう。
「白瀬、すごく面白い話だったよ。
良いじゃないか、やろうぜ、お前が作った話で演劇」
僕はそんな白瀬をすぐにでも救ってやりたくて、他の奴らが白瀬に声を掛けようとするのも差し置いて真っ先に声を掛けた。
ちなみに、この頃の僕のクラスでの立ち位置は、今とは全く違う物だった。どちらかと言うと緑川に近いクラスのリーダー格、いつもクラスメイトからは緑川と対にされる立場だった。
僕の声に顔を上げた白瀬は、一瞬、驚いた顔になったが、すぐにぱぁっと明るい表情に変わって行くのが僕には分かった。それを見て僕自身も嬉しくなった。
「ホント、平泉君。
それ、お世辞じゃない?」
白瀬は少し照れくさそうに微笑みながらそう聞き返した。
「ああ、お世辞じゃない。
本当に面白いと少なくとも僕は思ってる。
それにあそこであのランクなんだから間違いなだろう」
「平泉君があそこを知ってたなんて意外」
僕の答えに、白瀬は本当に嬉しそうな笑みを浮かべながらそう言った。
「これでも僕は小説好きなんだぜ。
ただラノベ専門で、白瀬が読んでる純文学は苦手だけどな」
僕は少し恥ずかし気に頭を掻きながらそう答えた。
そして、僕とのやりとりを見て、他の奴らもわらわらと白瀬の席に駆け寄り、口々に彼女の小説を褒め称えた。三日後のクラス会議を待たずにもう結果は出たな、と僕はその時確信した。
もっとも僕自身は、昨夜、白瀬の小説を読んだ時にそう確信していた。多少の反論が出ても、僕自身が白瀬の小説原作の演劇をやれる様に根回ししようとまで決めていた。それほど白瀬の小説は面白かったのだ。まあ、この状況を見れば、僕の心配は完全に取り越し苦労だった様だ。
白瀬の小説は、今流行りの異世界転生小説に見えた。でも、実は今の僕ら自身を描いている物と僕はすぐに気がついた。この年代が持つ悩みや苦しみを上手く描いていた。ただ白瀬の小説は面白かったが、ただ一つその結末だけはやや僕には不満だった。
実は、かく言う僕だって密かに、白瀬の事を憎からず思っていた。緑川の様に、はきはきした目立つ美人の女の子は確かに魅力的だ。しかし年頃の男子は、白瀬の様な日陰にひっそりと咲く小さいけど綺麗なすみれの花の様な女の子にも惹かれる物なのだ。他の男達は気がつかないけれど、自分だけがその魅力を知っている。そんなシチュエーションに萌えるのだ。これって男子特有の『独占欲』の一種なのだと僕は思う。
結局、出し物を決定するまでには、まだ時間的余裕もあると言う事で、とりあえず基になると言う話を読んでから決めようと言う事になった。
白瀬は、すぐにあるURLと検索ワードを僕らに示した。
白瀬が示したURLとキーワードの一部には僕自身覚えがあった。そう、その頃僕が時々見ていた有名小説投稿サイトだったのだ。そしてそこは『小泉八千代』と言うペンネームを持つ作者のページだったのだ。そこには白瀬が指定した小説の他に、三つほど短編と長編の小説まで公開されていた。
そう、白瀬は『小泉八千代』と言う名でネット小説を書いていたのだ。たぶんそのペンネームは、『小泉八雲』のもじりであろう。小説好きの白瀬らしいペンネームだと僕は思った。ちなみに、白瀬の小説は競合ひしめくファンタジー部門でランカー(俗言われる10位以内)ではなかったが100位以内に入っていた。これは結構な数の読者が付いて結構人気がある事を示す数字なのだ。
最終決定は三日後となった。その間に各自が白瀬の小説を読んで判断する事になったのだ。
翌日朝、白瀬は気の毒の程、おどおどして教室に入って来た。そして顔を伏せ、隠れる様にして自分の席に着くといそいそと鞄から本を出し読みふけり始めた。僕には分かっていた。白瀬はああしているが、本など読んではいない。ただ他のクラスの人間たちと目を合わせるのが怖いのだ。そして、今、白瀬は自分が勢いだけで昨日、あんな事を言てしまった事をとても恥じているに違いない。激しい後悔と恥ずかしさで、今の白瀬は文字通り、穴があれば入りたい、いや天照大御神の様に岩戸に閉じこもりたい気持ちなのだろう。
「白瀬、すごく面白い話だったよ。
良いじゃないか、やろうぜ、お前が作った話で演劇」
僕はそんな白瀬をすぐにでも救ってやりたくて、他の奴らが白瀬に声を掛けようとするのも差し置いて真っ先に声を掛けた。
ちなみに、この頃の僕のクラスでの立ち位置は、今とは全く違う物だった。どちらかと言うと緑川に近いクラスのリーダー格、いつもクラスメイトからは緑川と対にされる立場だった。
僕の声に顔を上げた白瀬は、一瞬、驚いた顔になったが、すぐにぱぁっと明るい表情に変わって行くのが僕には分かった。それを見て僕自身も嬉しくなった。
「ホント、平泉君。
それ、お世辞じゃない?」
白瀬は少し照れくさそうに微笑みながらそう聞き返した。
「ああ、お世辞じゃない。
本当に面白いと少なくとも僕は思ってる。
それにあそこであのランクなんだから間違いなだろう」
「平泉君があそこを知ってたなんて意外」
僕の答えに、白瀬は本当に嬉しそうな笑みを浮かべながらそう言った。
「これでも僕は小説好きなんだぜ。
ただラノベ専門で、白瀬が読んでる純文学は苦手だけどな」
僕は少し恥ずかし気に頭を掻きながらそう答えた。
そして、僕とのやりとりを見て、他の奴らもわらわらと白瀬の席に駆け寄り、口々に彼女の小説を褒め称えた。三日後のクラス会議を待たずにもう結果は出たな、と僕はその時確信した。
もっとも僕自身は、昨夜、白瀬の小説を読んだ時にそう確信していた。多少の反論が出ても、僕自身が白瀬の小説原作の演劇をやれる様に根回ししようとまで決めていた。それほど白瀬の小説は面白かったのだ。まあ、この状況を見れば、僕の心配は完全に取り越し苦労だった様だ。
白瀬の小説は、今流行りの異世界転生小説に見えた。でも、実は今の僕ら自身を描いている物と僕はすぐに気がついた。この年代が持つ悩みや苦しみを上手く描いていた。ただ白瀬の小説は面白かったが、ただ一つその結末だけはやや僕には不満だった。
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