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第四十四話
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この後、僕らは三人で仲良く市電の停留所まで帰った。学校でも評判の美人二人を連れての下校は、なんだか少し男として誇らしかった。実際、部活等で帰りが遅くなった連中は僕らを見て、男女問わずほとんどの奴らが振り返って二度見していた。あの望月先輩を振った事で有名な板額だが、緑川の所にだってメッセンジャーは何度も来ている程なのだ。本人は無自覚だが、緑川人気は板額に負けず劣らず男子に限らず女子までもかなりの物なのだ。板額登場以前は密かに『葵高三大美女』の一人に上げられる程なのだ。もちろん今だって、そこに上げる生徒は多い。今までの僕は、こんな事、何の意味も見出さなかったばかりか、面倒な事程度にしか思わなかった。それがこの短期間でよくもこれだけ変わった物だと自分の事ながら感心してしまう。
またこの時の緑川も心なしかいつもより生き生きとした表情をしてる様に思えた。緑川はいつも周りに気を使って笑顔でいる。僕にちょっかい出してくる時でもそうだ。でも、僕は気がついていたんだ。その緑川の表情は何となく作り物っぽく感じていた。もちろんそれは本当に微妙な所で、僕以外のクラスメイトはその事にまったく気付いてはいなかった様だ。ところが、この時の、いや、この時から後の緑川の表情はまるで一枚ベールが剥げ落ちたかのように透明感のあるものになった気がする。
結局、今回の事は僕と緑川が板額にまんまと乗せられたみたいだ。板額の計略に乗った僕と緑川は、自分たちでは絶対に越えられなかった壁の様な物をするりと通り抜けてしまった気がした。特に緑川の場合は、もう一枚変な壁までブレイクスルーしちゃった気はするのだが、まあ日常生活上は特に支障もないので良しとする。
それでもまだ僕は、周りとの関係を完全に修復するまでには至ってはいなかった。まだ心に纏った鎧をすべて脱ぎ捨ててしまうには怖いのだ。安心した後にあんなことがまた起こったら、今度こそ僕は壊れてしまって二度と元にはもどれない恐怖がどうしても拭えないのだ。ただ、前と違って僕も少しだけ大人になった。それに今は、傍に板額と緑川と言う素敵な女の子も居てくれる。だから、二人が傍に居てくれるなら自分自身でもう少しだけ努力してみようかと思うようになった。
そうそう、ちなみにあの日、一旦は他の女の子達と教室を出た板額だったが下駄箱でスマホに急用が入ったと言って彼女らとは別れたそうだ。まあ、板額にかかればその辺りは巴クラスでない限りころりと騙されてしまうだろう。さほど怪しまれる事もなく、板額はあらかじめ予想していたあの場所へとやって来たのだった。まさに、愛人との密会現場を押さえる頭の切れる本妻って奴だ。本当に板額と言う女の子は、怖い奴だとその事を知ってしみじみと思った。
あんな大事件が起こっても表面上は僕と板額、緑川の様子はそれ以前とほとんど変わらなかった。多くの生徒の前で公開告白した板額はともかく、緑川まで僕の彼女になった事に気づく者は居なかった。僕自身、緑川が自分の彼女になった事を時折忘れてるくらいだ。それでも、時折、他のクラスメイトの目を盗んで緑川は僕に触れる事が多くなった。以前は言葉ではしょっちゅうちょっかいを出していたが、肌と肌との触れ合いはまったくなかった。しかも、他人の目を盗んでの短時間の触れ合いながら、板額が僕の机に座りながらする様に、それは優しく愛おしく、そして少しだけえっちな感じがする感触だった。触れられる僕からすればそれは明らかに彼女のするそれに違いないと確信出来るものだった。
板額には絶対に言えないが、正直に話すと緑川とはそれだけではないのだ。朝学校に来ると机の中に小さなメモが忍ばされてることが数回あった。もちろんそれは緑川からの物で内容は前に入ってた封筒と似た様な物だった。最初は時間と密会場所だけ、二度目からは時間だけが事務連絡の様に書いてあるだけメモ。
でも、その指示通りにその場所へ行くと必ず緑川が待っていた。そしてそこは生徒が滅多に来ない学校の空白スポットなのだ。
またこの時の緑川も心なしかいつもより生き生きとした表情をしてる様に思えた。緑川はいつも周りに気を使って笑顔でいる。僕にちょっかい出してくる時でもそうだ。でも、僕は気がついていたんだ。その緑川の表情は何となく作り物っぽく感じていた。もちろんそれは本当に微妙な所で、僕以外のクラスメイトはその事にまったく気付いてはいなかった様だ。ところが、この時の、いや、この時から後の緑川の表情はまるで一枚ベールが剥げ落ちたかのように透明感のあるものになった気がする。
結局、今回の事は僕と緑川が板額にまんまと乗せられたみたいだ。板額の計略に乗った僕と緑川は、自分たちでは絶対に越えられなかった壁の様な物をするりと通り抜けてしまった気がした。特に緑川の場合は、もう一枚変な壁までブレイクスルーしちゃった気はするのだが、まあ日常生活上は特に支障もないので良しとする。
それでもまだ僕は、周りとの関係を完全に修復するまでには至ってはいなかった。まだ心に纏った鎧をすべて脱ぎ捨ててしまうには怖いのだ。安心した後にあんなことがまた起こったら、今度こそ僕は壊れてしまって二度と元にはもどれない恐怖がどうしても拭えないのだ。ただ、前と違って僕も少しだけ大人になった。それに今は、傍に板額と緑川と言う素敵な女の子も居てくれる。だから、二人が傍に居てくれるなら自分自身でもう少しだけ努力してみようかと思うようになった。
そうそう、ちなみにあの日、一旦は他の女の子達と教室を出た板額だったが下駄箱でスマホに急用が入ったと言って彼女らとは別れたそうだ。まあ、板額にかかればその辺りは巴クラスでない限りころりと騙されてしまうだろう。さほど怪しまれる事もなく、板額はあらかじめ予想していたあの場所へとやって来たのだった。まさに、愛人との密会現場を押さえる頭の切れる本妻って奴だ。本当に板額と言う女の子は、怖い奴だとその事を知ってしみじみと思った。
あんな大事件が起こっても表面上は僕と板額、緑川の様子はそれ以前とほとんど変わらなかった。多くの生徒の前で公開告白した板額はともかく、緑川まで僕の彼女になった事に気づく者は居なかった。僕自身、緑川が自分の彼女になった事を時折忘れてるくらいだ。それでも、時折、他のクラスメイトの目を盗んで緑川は僕に触れる事が多くなった。以前は言葉ではしょっちゅうちょっかいを出していたが、肌と肌との触れ合いはまったくなかった。しかも、他人の目を盗んでの短時間の触れ合いながら、板額が僕の机に座りながらする様に、それは優しく愛おしく、そして少しだけえっちな感じがする感触だった。触れられる僕からすればそれは明らかに彼女のするそれに違いないと確信出来るものだった。
板額には絶対に言えないが、正直に話すと緑川とはそれだけではないのだ。朝学校に来ると机の中に小さなメモが忍ばされてることが数回あった。もちろんそれは緑川からの物で内容は前に入ってた封筒と似た様な物だった。最初は時間と密会場所だけ、二度目からは時間だけが事務連絡の様に書いてあるだけメモ。
でも、その指示通りにその場所へ行くと必ず緑川が待っていた。そしてそこは生徒が滅多に来ない学校の空白スポットなのだ。
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