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第十九話
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「お前って、背がこんなに高かったんだ」
僕は思ったままの事をそのまま口にした。
「どうせ名前の通り『不細工の大女』ですよ!」
突然、板額は明らかに不愉快そうな表情に変わった。そして僕の腕から振り払うように手を離すとそう吐き捨てる様に言った。その瞬間、僕は『背が高い』は板額にとって誉め言葉ではなく、地雷だと確信した。しかし『名前の通り』って何だ? こればかりは僕にはまったく見当も付かなかった。確かに僕にとって、『板額』と言う名前は女の子の名前としてはかなり違和感があった。しかし、その名前にどんな由来や意味があるかなんて、まったく知らなかったのだ。
「与一にはそう言われたくない」
でもすぐに板額はすっごく悲し気な表情になって僕を上目使いに見てそう小さく呟いた。それこそ、今にも泣き出しそうだった。
「ごめん、もうその事は言わないよ、板額」
僕はそんな板額の表情を見てすぐさま謝った。
僕は女の子はめんどくさくて鬱陶しい存在と日ごろから公言している。それでも心の中では、今でも女の子に対し、体はもちろん心だって傷つけるのは大嫌いなんだ。それは他人に対してだけじゃなく、自分に対してでも同じだ。絶対に口にはしないけど僕は今も昔もフェミニストである事には変わりない。
「君は自分の名前が嫌いなのかい?」
僕は板額の言った事がが気になってストレートにそう尋ねてみた。
「半分、好きで……半分、嫌い」
板額は小声でそう答えた。
「どうしてだい。
もし良かったら教えてくれないか?」
板額の表情が少しづつ普通に戻り始めているのを見て僕はさらに尋ねてみた。
「だって……この名前は与一との絆を表すものだから、そこは大好き。
でも、女の子としては全然可愛くない響きだし、
『不細工の大女』って意味で使われる事もあるから、そこは大嫌い」
「僕との絆?」
当然、後半部分も気になったけど、それより前半部分が強く気になってまた尋ねた。
「後は自分で調べて見ると良いよ。
あっ……めんどくさかったら巴に聞いてみたらすぐわかるかもね」
そう言った後、板額はいつもの笑顔に戻ってまた僕の腕に自分の腕を絡ませて来た。
この時、僕は板額がいつの間にか緑川の事を『巴』と呼ぶ様になるほど親しくなっている事にちょっと安堵した。だって、板額みたいなタイプの女の子は下手するとクラスで浮いてハブられる危険もあるからだ。まあ、前も言ったが板額は賢そうなので自分自身でもその事は十分自覚して動いている様な気はする。それでもこいつは時々こっちの思いもよらぬ事を平気でやってのける。なので僕は、内心少しはらはらしてる所はあったのだ。
「でも板額って名前、僕はなんかカッコいいと思うぞ。
うん……お前らしくて凛としてカッコいい」
「与一がそう言ってくれるなら僕も自分の名前をもっと好きになれそうだよ」
また隣にぺたりとくっついて来た板額の横顔を見て僕がそう言うと、板額はまたいつもの本当に嬉しそうな素敵な笑顔でそう答えた。
どうやら機嫌が直った様で僕は一安心した。まだ僕は板額とこう言う付き合いを初めて一週間、いや、正確には数時間と言う方が正しいかもしれない。それでも、あんな一言で板額との仲が壊れてしまう事は僕にとってあまりに悲しい事だと思った。きっと、板額と出会う前なら、女と絡むとこんなめんどくさい事があるから嫌なんだって自分に言い聞かせて、さっさと片づけてしまっただろう。どうやらは僕は板額と出会った事で変わってきているのかもしれない。いやそれだけでなく板額が僕にとって、彼女と言うだけではない何か特別な存在なのかもしれないと僕はその時思った。
「ねえ、与一。
僕に意地悪な事言ったんだから、
あの餅屋さんでみたらし団子奢ってよ。
あそこのお団子、前から気になってたんだ」
そんな事を考えていたら板額が思い立った様にそう甘えて来た。そうこれは彼女が彼氏に甘える常とう句だ。実体験はなかったが、アニメやラノベでなら何度もお目見かかるセリフのたぐいだ。
僕は思ったままの事をそのまま口にした。
「どうせ名前の通り『不細工の大女』ですよ!」
突然、板額は明らかに不愉快そうな表情に変わった。そして僕の腕から振り払うように手を離すとそう吐き捨てる様に言った。その瞬間、僕は『背が高い』は板額にとって誉め言葉ではなく、地雷だと確信した。しかし『名前の通り』って何だ? こればかりは僕にはまったく見当も付かなかった。確かに僕にとって、『板額』と言う名前は女の子の名前としてはかなり違和感があった。しかし、その名前にどんな由来や意味があるかなんて、まったく知らなかったのだ。
「与一にはそう言われたくない」
でもすぐに板額はすっごく悲し気な表情になって僕を上目使いに見てそう小さく呟いた。それこそ、今にも泣き出しそうだった。
「ごめん、もうその事は言わないよ、板額」
僕はそんな板額の表情を見てすぐさま謝った。
僕は女の子はめんどくさくて鬱陶しい存在と日ごろから公言している。それでも心の中では、今でも女の子に対し、体はもちろん心だって傷つけるのは大嫌いなんだ。それは他人に対してだけじゃなく、自分に対してでも同じだ。絶対に口にはしないけど僕は今も昔もフェミニストである事には変わりない。
「君は自分の名前が嫌いなのかい?」
僕は板額の言った事がが気になってストレートにそう尋ねてみた。
「半分、好きで……半分、嫌い」
板額は小声でそう答えた。
「どうしてだい。
もし良かったら教えてくれないか?」
板額の表情が少しづつ普通に戻り始めているのを見て僕はさらに尋ねてみた。
「だって……この名前は与一との絆を表すものだから、そこは大好き。
でも、女の子としては全然可愛くない響きだし、
『不細工の大女』って意味で使われる事もあるから、そこは大嫌い」
「僕との絆?」
当然、後半部分も気になったけど、それより前半部分が強く気になってまた尋ねた。
「後は自分で調べて見ると良いよ。
あっ……めんどくさかったら巴に聞いてみたらすぐわかるかもね」
そう言った後、板額はいつもの笑顔に戻ってまた僕の腕に自分の腕を絡ませて来た。
この時、僕は板額がいつの間にか緑川の事を『巴』と呼ぶ様になるほど親しくなっている事にちょっと安堵した。だって、板額みたいなタイプの女の子は下手するとクラスで浮いてハブられる危険もあるからだ。まあ、前も言ったが板額は賢そうなので自分自身でもその事は十分自覚して動いている様な気はする。それでもこいつは時々こっちの思いもよらぬ事を平気でやってのける。なので僕は、内心少しはらはらしてる所はあったのだ。
「でも板額って名前、僕はなんかカッコいいと思うぞ。
うん……お前らしくて凛としてカッコいい」
「与一がそう言ってくれるなら僕も自分の名前をもっと好きになれそうだよ」
また隣にぺたりとくっついて来た板額の横顔を見て僕がそう言うと、板額はまたいつもの本当に嬉しそうな素敵な笑顔でそう答えた。
どうやら機嫌が直った様で僕は一安心した。まだ僕は板額とこう言う付き合いを初めて一週間、いや、正確には数時間と言う方が正しいかもしれない。それでも、あんな一言で板額との仲が壊れてしまう事は僕にとってあまりに悲しい事だと思った。きっと、板額と出会う前なら、女と絡むとこんなめんどくさい事があるから嫌なんだって自分に言い聞かせて、さっさと片づけてしまっただろう。どうやらは僕は板額と出会った事で変わってきているのかもしれない。いやそれだけでなく板額が僕にとって、彼女と言うだけではない何か特別な存在なのかもしれないと僕はその時思った。
「ねえ、与一。
僕に意地悪な事言ったんだから、
あの餅屋さんでみたらし団子奢ってよ。
あそこのお団子、前から気になってたんだ」
そんな事を考えていたら板額が思い立った様にそう甘えて来た。そうこれは彼女が彼氏に甘える常とう句だ。実体験はなかったが、アニメやラノベでなら何度もお目見かかるセリフのたぐいだ。
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