18 / 161
第十八話
しおりを挟む
「お、お前……悪い冗談はよせ!」
「じゃあ、黙ってる代わりにここで僕にキスしてよ」
僕がわざと少し怒った風を装ってそう答えた。しかし、板額はまったく動じずにさらに僕に追い打ちを掛けて来た。しかし、僕だって並みの男じゃない。ここで怯めば、この先ずっとこいつに主導権を握られるのは火を見るより明らかである。
そうだ、攻撃は最大の防御なのだ。
僕は幸い、人通りが途絶えていたのを確認して、素早く板額の唇に自分の唇を一瞬だけ触れさせた。
僕は、僕の人生上、自分の意思で自分からしたと言う意味では『初めて』となる電光石火のキスして板額の顔を見た。すると板額は目をぱちくりとさせて半分放心状態の様になっていた。
「与一が……こんな所で僕にキスを……」
「何言ってんだ、自分からしてくれと言ったくせに!
それに衆人環視の教室でキスしたお前が言われたかないぞ」
本当は顔から火が出るほど恥ずかしかったが、ここはあえてそれを板額に悟らせぬ様に畳み込む様に僕は強気のポーカーフェイスでそう言った。
「なんかすっごく嬉しい!」
僕がそう言うと、一旦は放心状態みたいになっていた板額の表情がぱぁっと明るくなった。そして、僕の左腕に自分の腕を絡ませて来た。
「さあ、一緒に帰ろう、与一」
するとぴたりと僕の二の腕にくっついた板額の胸の柔らかさが否が応でも伝わって来た。でも板額のそれは、柔らかさは確かに感じたが、大きさを意識させるほどではなかった。
普通に制服の上から見てても板額の胸は決して大きい様には見えない。胸だけなら緑川の方が大きいのは一目瞭然だった。その緑川だって決して大きいって訳じゃない。僕のクラスには歩くだけでゆさゆさ揺れる『躍動する肉団子』なんてあだ名で呼ばれる女の子すらいる。どう贔屓目に見ても板額は俗に言う『ちっぱい』って奴だ。その事と板額が『僕っ娘』と言う事もあり、時折、板額は中性的に感じる事が多々ある。でも、板額の場合、この胸は決して欠点になってない。この長身とその纏う雰囲気がこの小さめの胸すら板額を魅力的に見せるのだ。スレンダー美人とはまさに板額の為にある言葉じゃないかと思う程だ。
それも惚れた男の贔屓目なのかもしれない。やっぱり僕は板額に惚れてしまったのだろうか?
ただ不思議なのは、前にもちょっと言ったが、板額が持つ中性的な感じは言葉からすれば色気って物が感じられなくなる様な気がする。しかし、板額を前にするとそれが正しくない事が分かる。本当に板額には男をどきっとさせる様な妙な色気を感じる事があるのだ。胸が小さい事も、そこを意識するとこれと同じ様な妙な色気を感じてしまう。片手にすっぽり収まってしまうだろうコンパクトな膨らみを想像すると、妙にドキドキするのだ。いやドキドキと言うよりムラムラと言ってしまった方が良い位に。
まあ、こっちも野郎どもに言わせれば『単なるちっぱい好き』で片づけられそうではあるが。
色々と常識外れの事をしでかす板額とは言え、僕の心の中までは読めないだろう。しかし、あまり胸の事ばっか考えているのも変態っぽくて嫌になった。そこで僕は気を紛らわす為に、ふと板額の居る方向に顔を向けた。するといきなり板額と目が合ったのだ。
「ん?」
僕と目があった板額が『どうしたの?』と言いたげに小首を傾げた。
僕はこの時、初めて板額の身長が本当にかなり高い事に気がついた。いや、板額がこの年頃の女の子としては長身である事は分かったいたつもりだ。でも、それは漠然と『背が高い女の子』と思ってただけなのだ。ところが今、こうして腕を組んで隣を歩いていて目の高さが僕とぴったり合ってる。その事で身長の高さが急に具体的な形で体感する事になったのだ。
僕はクラスでも背が飛びぬけて高い訳じゃない。それでもクラスの平均よりはちょっとばかし背が高いと言うポジションに居る。その僕と目が合うと言う事は少なくとも板額の身長が170センチ近くはある事になる。これはこの年頃の女の子としては普通に『背が高い』と言うより、『かなり背が高い』と言う範疇だ。そう言えば、クラスの女子よりいつも頭一つ上に抜けてた。例の公開告白の時もバスケットの選手でもあった望月先輩を前にしてもあまり身長差が無かった気がする。
「じゃあ、黙ってる代わりにここで僕にキスしてよ」
僕がわざと少し怒った風を装ってそう答えた。しかし、板額はまったく動じずにさらに僕に追い打ちを掛けて来た。しかし、僕だって並みの男じゃない。ここで怯めば、この先ずっとこいつに主導権を握られるのは火を見るより明らかである。
そうだ、攻撃は最大の防御なのだ。
僕は幸い、人通りが途絶えていたのを確認して、素早く板額の唇に自分の唇を一瞬だけ触れさせた。
僕は、僕の人生上、自分の意思で自分からしたと言う意味では『初めて』となる電光石火のキスして板額の顔を見た。すると板額は目をぱちくりとさせて半分放心状態の様になっていた。
「与一が……こんな所で僕にキスを……」
「何言ってんだ、自分からしてくれと言ったくせに!
それに衆人環視の教室でキスしたお前が言われたかないぞ」
本当は顔から火が出るほど恥ずかしかったが、ここはあえてそれを板額に悟らせぬ様に畳み込む様に僕は強気のポーカーフェイスでそう言った。
「なんかすっごく嬉しい!」
僕がそう言うと、一旦は放心状態みたいになっていた板額の表情がぱぁっと明るくなった。そして、僕の左腕に自分の腕を絡ませて来た。
「さあ、一緒に帰ろう、与一」
するとぴたりと僕の二の腕にくっついた板額の胸の柔らかさが否が応でも伝わって来た。でも板額のそれは、柔らかさは確かに感じたが、大きさを意識させるほどではなかった。
普通に制服の上から見てても板額の胸は決して大きい様には見えない。胸だけなら緑川の方が大きいのは一目瞭然だった。その緑川だって決して大きいって訳じゃない。僕のクラスには歩くだけでゆさゆさ揺れる『躍動する肉団子』なんてあだ名で呼ばれる女の子すらいる。どう贔屓目に見ても板額は俗に言う『ちっぱい』って奴だ。その事と板額が『僕っ娘』と言う事もあり、時折、板額は中性的に感じる事が多々ある。でも、板額の場合、この胸は決して欠点になってない。この長身とその纏う雰囲気がこの小さめの胸すら板額を魅力的に見せるのだ。スレンダー美人とはまさに板額の為にある言葉じゃないかと思う程だ。
それも惚れた男の贔屓目なのかもしれない。やっぱり僕は板額に惚れてしまったのだろうか?
ただ不思議なのは、前にもちょっと言ったが、板額が持つ中性的な感じは言葉からすれば色気って物が感じられなくなる様な気がする。しかし、板額を前にするとそれが正しくない事が分かる。本当に板額には男をどきっとさせる様な妙な色気を感じる事があるのだ。胸が小さい事も、そこを意識するとこれと同じ様な妙な色気を感じてしまう。片手にすっぽり収まってしまうだろうコンパクトな膨らみを想像すると、妙にドキドキするのだ。いやドキドキと言うよりムラムラと言ってしまった方が良い位に。
まあ、こっちも野郎どもに言わせれば『単なるちっぱい好き』で片づけられそうではあるが。
色々と常識外れの事をしでかす板額とは言え、僕の心の中までは読めないだろう。しかし、あまり胸の事ばっか考えているのも変態っぽくて嫌になった。そこで僕は気を紛らわす為に、ふと板額の居る方向に顔を向けた。するといきなり板額と目が合ったのだ。
「ん?」
僕と目があった板額が『どうしたの?』と言いたげに小首を傾げた。
僕はこの時、初めて板額の身長が本当にかなり高い事に気がついた。いや、板額がこの年頃の女の子としては長身である事は分かったいたつもりだ。でも、それは漠然と『背が高い女の子』と思ってただけなのだ。ところが今、こうして腕を組んで隣を歩いていて目の高さが僕とぴったり合ってる。その事で身長の高さが急に具体的な形で体感する事になったのだ。
僕はクラスでも背が飛びぬけて高い訳じゃない。それでもクラスの平均よりはちょっとばかし背が高いと言うポジションに居る。その僕と目が合うと言う事は少なくとも板額の身長が170センチ近くはある事になる。これはこの年頃の女の子としては普通に『背が高い』と言うより、『かなり背が高い』と言う範疇だ。そう言えば、クラスの女子よりいつも頭一つ上に抜けてた。例の公開告白の時もバスケットの選手でもあった望月先輩を前にしてもあまり身長差が無かった気がする。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
瞬間、青く燃ゆ
葛城騰成
ライト文芸
ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。
時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。
どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?
狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。
春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。
やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。
第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~
ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。
「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。
世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった!
次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で
幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──!
「この世に、幽霊事件なんてありえません」
幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の
ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる