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第八話
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僕はその後、すぐにまたいつもの様につまらなそうに窓の外をぼんやりと見ていた。でも、こんな状況下である。他の者が見れば、自分の彼女がカッコいい先輩に横取りされそうになって不貞腐れている様に見えたかもしれない。
「強がる癖に不貞腐れちゃって可愛い奴……」
事実、緑川が小さな声でそう呟いたのが聞こえた。
「君に相談せずに答えちゃったけど与一は良いのかい?」
メッセンジャーが板額の返事を聞いて帰った後、教室中がまだ騒然とする中、板額が僕の席まで来て僕にこう尋ねた。
「さあ、与一君はどう答えるのかな?」
緑川がそう言ってくすくすと含み笑いをした。
本音を言えば、僕はとにかく早くこう尋ねた板額の表情から彼女の本心を確かめたかった。しかし、緑川の態度も見て、やっぱり妙な自尊心がむらむらと湧いてきてしまった。僕は、わざとゆっくりとそしてめんどくさそうな表情で彼女を見上げた。板額は微かに微笑みを浮かべて僕を見下ろして答えを待っていた。微笑む板額の顔を本当に美しい。こんな切羽詰まった状況なのに僕はその時、そうぼんやりと思った。
「そんな事いちいち僕に聞く事もないだろう。
僕はまだお前の彼氏になった覚えはないからな」
僕は板額を見上げて一呼吸置いてから、わざとぶっきらぼうにそう答えた。しかしすぐに僕は、しまったと思った。そう、これじゃ傍から見たらどう見ても彼女に浮気されそうになって不貞腐れてる彼氏じゃないか。実際、緑川はそう思ったんだろう。その瞬間、ぷっと吹き出し笑いをした。
「さすが与一、どんと構えてるんだね」
しかし板額はそんな僕の答えを聞いてそう言ってから、さも嬉しそうにケラケラと声を出して笑った。そう普通の彼女なら、ここは『どうして止めてくれなかったの?』と食って掛かってくるパターンなのだ。そしてこっちが余計に虚勢を張ると逆ギレして痴話喧嘩って奴。しかし、板額は僕以上に……いや実際には僕はそう見える様にしてただけで内心はなかり動揺してた……平然としている様だった。
「お、おう……」
初対面に僕に『彼女にして!』宣告をするほどの板額だから、当然、僕が止めなかった事に不満を行って来るものだと思っていた。それが見事にはぐらかされて僕はまた妙に声を出してしまった。
「ここはこんなに有名進学校なのに、
また変な『しきたり』があるんだね。
驚いたよ」
ちょっとどぎまぎしている僕をよそに板額はそう言って微笑んだ。
「与一、その時は必ず見に来てよね」
そして僕を見てこう言った。
「そう言うの、僕はあまり興味ない。
まあ、気が向いたら見に行かない事も無いかもな」
この期に及んで僕はまだ虚勢を張りつつこう答えた。緑川には完全に見透かされている様でそんな僕を彼女はくすくす笑いながら見ていた。
「そう言っても君は必ず見に来ると僕は信じてるよ」
板額は何かすごく自信ありげにそう言った。それはまるで、ずっと昔から、そう今の僕になる以前の僕、もっと他者と積極的に関わろうとしていた頃を知ってるかの様だった。
「ちなみに、もう一度聞くけれど……」
そして板額は真面目な顔になって僕の顔を見てからそう切り出した。
「何だよ」
しかしこいつ本当に綺麗な顔してるな、と僕は僕を見詰める板額の顔を見て思った。こいつ、男心をくすぐる妙な色気があるのだ。しかもそれは普通の女子が持ってない、ちょっと独特の色気って気がした。
「本当に与一とって僕はまだ彼女じゃないのかい?」
「だから言ったろ、まず友達からだって。
でも別に嫌がってるわけじゃない。
どっちかって言うとその……何だ。
お前なら彼女にしやっても良い思ってる部分もある」
板額の妙な色気にあてられたからだろうか、後半部分はまったく言うつもりが無かったのに本音がつるりと口から滑り出てしまった感じだった。
「与一にそう言ってもらえて僕は嬉しいよ」
僕の答えを聞いて、板額はそう言ってまたびっきり素敵な笑顔を浮かべた。
出来れば、この時に軽くキスでもしてくれれば良いのにって僕はその時、ちょっと思った。
「強がる癖に不貞腐れちゃって可愛い奴……」
事実、緑川が小さな声でそう呟いたのが聞こえた。
「君に相談せずに答えちゃったけど与一は良いのかい?」
メッセンジャーが板額の返事を聞いて帰った後、教室中がまだ騒然とする中、板額が僕の席まで来て僕にこう尋ねた。
「さあ、与一君はどう答えるのかな?」
緑川がそう言ってくすくすと含み笑いをした。
本音を言えば、僕はとにかく早くこう尋ねた板額の表情から彼女の本心を確かめたかった。しかし、緑川の態度も見て、やっぱり妙な自尊心がむらむらと湧いてきてしまった。僕は、わざとゆっくりとそしてめんどくさそうな表情で彼女を見上げた。板額は微かに微笑みを浮かべて僕を見下ろして答えを待っていた。微笑む板額の顔を本当に美しい。こんな切羽詰まった状況なのに僕はその時、そうぼんやりと思った。
「そんな事いちいち僕に聞く事もないだろう。
僕はまだお前の彼氏になった覚えはないからな」
僕は板額を見上げて一呼吸置いてから、わざとぶっきらぼうにそう答えた。しかしすぐに僕は、しまったと思った。そう、これじゃ傍から見たらどう見ても彼女に浮気されそうになって不貞腐れてる彼氏じゃないか。実際、緑川はそう思ったんだろう。その瞬間、ぷっと吹き出し笑いをした。
「さすが与一、どんと構えてるんだね」
しかし板額はそんな僕の答えを聞いてそう言ってから、さも嬉しそうにケラケラと声を出して笑った。そう普通の彼女なら、ここは『どうして止めてくれなかったの?』と食って掛かってくるパターンなのだ。そしてこっちが余計に虚勢を張ると逆ギレして痴話喧嘩って奴。しかし、板額は僕以上に……いや実際には僕はそう見える様にしてただけで内心はなかり動揺してた……平然としている様だった。
「お、おう……」
初対面に僕に『彼女にして!』宣告をするほどの板額だから、当然、僕が止めなかった事に不満を行って来るものだと思っていた。それが見事にはぐらかされて僕はまた妙に声を出してしまった。
「ここはこんなに有名進学校なのに、
また変な『しきたり』があるんだね。
驚いたよ」
ちょっとどぎまぎしている僕をよそに板額はそう言って微笑んだ。
「与一、その時は必ず見に来てよね」
そして僕を見てこう言った。
「そう言うの、僕はあまり興味ない。
まあ、気が向いたら見に行かない事も無いかもな」
この期に及んで僕はまだ虚勢を張りつつこう答えた。緑川には完全に見透かされている様でそんな僕を彼女はくすくす笑いながら見ていた。
「そう言っても君は必ず見に来ると僕は信じてるよ」
板額は何かすごく自信ありげにそう言った。それはまるで、ずっと昔から、そう今の僕になる以前の僕、もっと他者と積極的に関わろうとしていた頃を知ってるかの様だった。
「ちなみに、もう一度聞くけれど……」
そして板額は真面目な顔になって僕の顔を見てからそう切り出した。
「何だよ」
しかしこいつ本当に綺麗な顔してるな、と僕は僕を見詰める板額の顔を見て思った。こいつ、男心をくすぐる妙な色気があるのだ。しかもそれは普通の女子が持ってない、ちょっと独特の色気って気がした。
「本当に与一とって僕はまだ彼女じゃないのかい?」
「だから言ったろ、まず友達からだって。
でも別に嫌がってるわけじゃない。
どっちかって言うとその……何だ。
お前なら彼女にしやっても良い思ってる部分もある」
板額の妙な色気にあてられたからだろうか、後半部分はまったく言うつもりが無かったのに本音がつるりと口から滑り出てしまった感じだった。
「与一にそう言ってもらえて僕は嬉しいよ」
僕の答えを聞いて、板額はそう言ってまたびっきり素敵な笑顔を浮かべた。
出来れば、この時に軽くキスでもしてくれれば良いのにって僕はその時、ちょっと思った。
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