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第三話
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そして、緑川は、この学校では、先輩後輩、クラスを問わず、多くの男子から告白などされる事も多く大変モテていた。もっとも、緑川は今までその告白を全て袖にして、いまだに特定の『彼氏』と言う物を持っていない。だから、彼女は学校中の男どもからは『難攻不落の巴御前』とも言われている。
そんな緑川はこの学校では非常に少ない僕と同じ中学出身者だった。それだからであろうか、何故かこいつはやたら僕に絡んでくる。まあ、たぶん、緑川はああいう性格だから、あいつはあいつで僕の事を心配しての事だろうとは僕は思っていた。
「与一って、ああ言う娘がタイプなんだ……」
不意に緑川が珍しく小声でそう声を掛けて来た。
放課などならまだしも、授業中などこういう時には滅多に話しかけてこない緑川の声に驚いて僕は彼女の方を見た。
すると、緑川は彼女には珍しく口元ににやにやと少し下卑た笑いを浮かべて僕を見ていた。
「ふん、僕は女って奴は全部が嫌いだ。
容姿は性格は関係ない。
何故なら色々めんどくさいから。
例外はない」
僕はぶっきらぼうにそう言って緑川から、そして教壇に居た板額からも目を逸らせて窓の外に視線を移した。
「あらそう、無理しちゃって……。
今、他の男子以上にあの娘に熱い視線送ってた癖に」
視線を逸らせて後、緑川の声とその後にクスリと小さく笑う声が聞こえた。
「じゃあ、烏丸さん、とりあえず右の列の一番後ろの席に……」
教壇に立つ板額を杉下が促した様だ。板額が教壇から降りて席へと歩き始めた。
僕はあのままいつもの様に窓の外の風景をぼんやり見ていたから、板額が歩き始めたのはその足音で知った。
しかし、その足音は何故か途中で止まった。見てたわけじゃないからはっきとは分からないが、僕の横を通り過ぎる前に止まってしまった気がした。同時に、教室中がざわざわとし始めた。
ふわりとフルーツの様な甘い香りが微かにした。
不審に思った僕はふと顔を教室の方へを向けた。
すると僕の席のすぐ脇に、今、教壇で挨拶をした板額が立っていた。
僕が見上げると、板額はじっと僕を見下ろしていた。
どうやらクラスの連中は、この美人転校生が突如、クラスでもボッチで目立たない男の横で立ち止まった事を訝しく思った様だった。
「やっと会えた……」
その時、板額の唇が小さくそう動いた。いや、正確には声は聞こえなかった。何故か僕にはそう彼女がそう囁いた様に思えたのだ。
「えっ?」
僕が驚いて小さくそう声を漏らすと、板額はその整った美しい顔に微笑みを浮かべた。そして、何事もなかった様に杉下の示した席へを再び歩き始めた。
「知り合いなの?」
再び緑川の声がした。
無意識に板額の背を目で追っていた僕はその声で緑川の方を見た。
すると緑川は何故か少し不機嫌な顔で僕を見ていた。いや、それは僕が勝手にそう感じただけで、後に緑川にその時の事を尋ねても、彼女はそんな事はなかったと何故か全力でその事を否定した。
「いや、知らない……」
「ふうん、それなら良いけど……」
僕がそう答えると、緑川はぶっきらぼうにそう言って僕から顔を背けて前を向いてしまった。
その後、こんな重大なイベントの後なのにその後の一時限目の授業は、何事もなかったかの様にいつも通りに終わった。この辺りはさすが県下のみならず全国的にも結構名の知れた進学校である。頭と雰囲気の切換えは先生も生徒もきちんと出来ている。そう言う僕だって、ホームルームなどでは気だるげに窓の外を眺めてるボッチ生徒だが、高校生も二年となれば授業中は真剣に正面を向いて勉強をしている。
「それじゃ、ここまで]
そして、杉下も滞りなく今日の分の授業を終える事が出来たのであろう、チャイムと共にこう言った。
「起立! 礼!」
それを合図に、今日の日直当番の八神が声を上げた。
すると、全員が起立し、教壇に立つ杉下に向かって一礼した。それを確認した杉下もワンテンポ遅れて頭を下げた。
「お前らが転校生に興味津々なのは、
この後、烏丸さんを質問攻めなんかにするんじゃないぞ」
そして杉下は自分の生徒達にそう笑いながら声を掛けて教室を出て行った。
そんな緑川はこの学校では非常に少ない僕と同じ中学出身者だった。それだからであろうか、何故かこいつはやたら僕に絡んでくる。まあ、たぶん、緑川はああいう性格だから、あいつはあいつで僕の事を心配しての事だろうとは僕は思っていた。
「与一って、ああ言う娘がタイプなんだ……」
不意に緑川が珍しく小声でそう声を掛けて来た。
放課などならまだしも、授業中などこういう時には滅多に話しかけてこない緑川の声に驚いて僕は彼女の方を見た。
すると、緑川は彼女には珍しく口元ににやにやと少し下卑た笑いを浮かべて僕を見ていた。
「ふん、僕は女って奴は全部が嫌いだ。
容姿は性格は関係ない。
何故なら色々めんどくさいから。
例外はない」
僕はぶっきらぼうにそう言って緑川から、そして教壇に居た板額からも目を逸らせて窓の外に視線を移した。
「あらそう、無理しちゃって……。
今、他の男子以上にあの娘に熱い視線送ってた癖に」
視線を逸らせて後、緑川の声とその後にクスリと小さく笑う声が聞こえた。
「じゃあ、烏丸さん、とりあえず右の列の一番後ろの席に……」
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どうやらクラスの連中は、この美人転校生が突如、クラスでもボッチで目立たない男の横で立ち止まった事を訝しく思った様だった。
「やっと会えた……」
その時、板額の唇が小さくそう動いた。いや、正確には声は聞こえなかった。何故か僕にはそう彼女がそう囁いた様に思えたのだ。
「えっ?」
僕が驚いて小さくそう声を漏らすと、板額はその整った美しい顔に微笑みを浮かべた。そして、何事もなかった様に杉下の示した席へを再び歩き始めた。
「知り合いなの?」
再び緑川の声がした。
無意識に板額の背を目で追っていた僕はその声で緑川の方を見た。
すると緑川は何故か少し不機嫌な顔で僕を見ていた。いや、それは僕が勝手にそう感じただけで、後に緑川にその時の事を尋ねても、彼女はそんな事はなかったと何故か全力でその事を否定した。
「いや、知らない……」
「ふうん、それなら良いけど……」
僕がそう答えると、緑川はぶっきらぼうにそう言って僕から顔を背けて前を向いてしまった。
その後、こんな重大なイベントの後なのにその後の一時限目の授業は、何事もなかったかの様にいつも通りに終わった。この辺りはさすが県下のみならず全国的にも結構名の知れた進学校である。頭と雰囲気の切換えは先生も生徒もきちんと出来ている。そう言う僕だって、ホームルームなどでは気だるげに窓の外を眺めてるボッチ生徒だが、高校生も二年となれば授業中は真剣に正面を向いて勉強をしている。
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