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第29話
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離宮は王宮や後宮に比べてそもそも使用人の数が少ない。それに加えて、ルルナレッタの叔母と言う位だから、年齢は恐らく40歳前後と言ったところか…。更に3年程前から、離宮で働き始めた女性で、恐らくは下女…。
その様にして篩にかけていくと、恐ろしい程あっさりと疑わしい人物は特定出来た。
「やはり父の読み通り、離宮で下女をしていましたか…。しかもまだ居座っている…」
アレクサンダーはそう言って目の前で平然と洗濯物を干す彼女を、困惑の表情を浮かべ見つめた。
「そうなのよね。大体こう言う時って、犯人は発覚を恐れて、逃げるか隠れるかするものじゃない?」
それにしても居座るって…。面白い事を言うものだ。彼は父であるオスマンサス公爵と違って、案外毒舌の様だ。
あれからアレクサンダーを側近に迎えた私は、疑わしい人物が特定されると直ぐに離宮へと向かった。
だが、それはあくまでも彼女のその後の手がかりや証拠を探すため…。まさか本人がまだ、何事もないかの様に働いているなんて思いもよらなかったのである。
「だが、そうなると厄介ですね。彼女が此処に居座る理由なんて1つしか考えられない…」
「そうね…」
彼の言葉に私は相槌を打った。
そう…。それは即ち、目的はまだ終わっていない。リシャールは再び狙われると言う事に他ならない。
何故なら、彼はまだ生きているから…。相手はどうしてもリシャールを亡き者にしたい様だ。
彼女が捕まるかも知れない危険を犯してまで未だに此処にいる理由なんて、それ以外には考えられなかった。
「そもそも王宮で流れている噂だって可笑しいとは思いませんか? 妃殿下と殿下の関係を揶揄う一方で、殊更リシャール殿下の容態について言及している」
確かにそうだ。
『リシャール殿下の容態、それ程お悪いのかしら…』
『あら、私はもう殿下は長くは持たないって聞いたわよ』
そもそもリシャールは、重い病を患い療養中と言う事になっている。陛下がそう公表したからだ。だからもし今、彼が亡くなったとしても、周りの者達は皆、彼の死を病死として認識するだろう。
まさか…。リシャールが助かったと知ったから、王妃やエドモンドは態とあんな噂を流したの…? この後、リシャールを亡き者にしたとしても誰にも怪しまれない様に…?
そう考えると恐ろしくなった。
「でもどうやって? リシャールは1度毒を盛られているのよ? 周りも警戒しているわ」
「そうですね。ですが相手も必死だ。どんな手を使ってくるか分からない。ただ1つだけ言える事は相手には時間が無い。リシャール殿下が元気な姿を周りにお見せになれば、その時点でもう病死と偽る事は出来ませんからね」
確かにアレクサンダーの言う通りだ。
「それなら、彼女が行動を起こす日は近い…と言う事ね?」
「ええ…。俺はそう思います。ただ、心配には及びませんよ。前回とは違い相手は特定されている。しかも、ターゲットである殿下がおられるのは、離宮と言う狭い空間…。彼女に出来る事は限られます。まずは側妃様と殿下にお話しして、協力を仰ぎましょう。兎に角、今はまだ彼女を捉えるだけの明確な証拠がない。上手くいけば、反対に相手を追い詰める為の動かぬ証拠となります」
とは言え、彼女を捉えるためリシャールを囮に使う様なものだ。
私は側妃は難色を示すだろうと考えていた。
でも、寧ろそうでは無かった。
彼女は反対に私達に頭を下げたのだ。
「分かりました。常に彼女とリシャールに目を行き届かせる様に致します。お教え頂きありがとうございました。感謝申し上げます。必ずや彼女を捕らえ、リシャールの命を守ってみせます」
たじろぐ私を他所に、側妃は決意の籠もった瞳で私を見た。
「ですが、殿下を囮に使う様な事になります。危険を伴うかも知れません。それでも宜しいのですか?」
私の問いに側妃は悲しそうに目を伏せた。
「宜しいも何も捕まえなければリシャールはまた狙われるのでしょう? こうして気を付けるべき相手も教えて頂いております。でしたら、ご安心下さい。子を守るのは親の勤めでございます。幸いこの離宮には、私が信頼を寄せる使用人が沢山おります。その者達に協力してもらい、必ず彼女を捕らえます」
そう宣言した側妃の言葉通り、彼女は捕らえられた。
何でもリシャールを階段から突き落とそうとしたらしい。
なり振り構わずとは正にこの事だ。
だが案の定、彼女はそんな事は知らない! 私は無関係だと言い張っているらしい。
リシャールを階段から突き落とそうとしたのも、偶々ぶつかってしまっただけだと…。
そう側妃から報告を受けた私は、アレクサンダーと共に彼女の元へと向かった。
その様にして篩にかけていくと、恐ろしい程あっさりと疑わしい人物は特定出来た。
「やはり父の読み通り、離宮で下女をしていましたか…。しかもまだ居座っている…」
アレクサンダーはそう言って目の前で平然と洗濯物を干す彼女を、困惑の表情を浮かべ見つめた。
「そうなのよね。大体こう言う時って、犯人は発覚を恐れて、逃げるか隠れるかするものじゃない?」
それにしても居座るって…。面白い事を言うものだ。彼は父であるオスマンサス公爵と違って、案外毒舌の様だ。
あれからアレクサンダーを側近に迎えた私は、疑わしい人物が特定されると直ぐに離宮へと向かった。
だが、それはあくまでも彼女のその後の手がかりや証拠を探すため…。まさか本人がまだ、何事もないかの様に働いているなんて思いもよらなかったのである。
「だが、そうなると厄介ですね。彼女が此処に居座る理由なんて1つしか考えられない…」
「そうね…」
彼の言葉に私は相槌を打った。
そう…。それは即ち、目的はまだ終わっていない。リシャールは再び狙われると言う事に他ならない。
何故なら、彼はまだ生きているから…。相手はどうしてもリシャールを亡き者にしたい様だ。
彼女が捕まるかも知れない危険を犯してまで未だに此処にいる理由なんて、それ以外には考えられなかった。
「そもそも王宮で流れている噂だって可笑しいとは思いませんか? 妃殿下と殿下の関係を揶揄う一方で、殊更リシャール殿下の容態について言及している」
確かにそうだ。
『リシャール殿下の容態、それ程お悪いのかしら…』
『あら、私はもう殿下は長くは持たないって聞いたわよ』
そもそもリシャールは、重い病を患い療養中と言う事になっている。陛下がそう公表したからだ。だからもし今、彼が亡くなったとしても、周りの者達は皆、彼の死を病死として認識するだろう。
まさか…。リシャールが助かったと知ったから、王妃やエドモンドは態とあんな噂を流したの…? この後、リシャールを亡き者にしたとしても誰にも怪しまれない様に…?
そう考えると恐ろしくなった。
「でもどうやって? リシャールは1度毒を盛られているのよ? 周りも警戒しているわ」
「そうですね。ですが相手も必死だ。どんな手を使ってくるか分からない。ただ1つだけ言える事は相手には時間が無い。リシャール殿下が元気な姿を周りにお見せになれば、その時点でもう病死と偽る事は出来ませんからね」
確かにアレクサンダーの言う通りだ。
「それなら、彼女が行動を起こす日は近い…と言う事ね?」
「ええ…。俺はそう思います。ただ、心配には及びませんよ。前回とは違い相手は特定されている。しかも、ターゲットである殿下がおられるのは、離宮と言う狭い空間…。彼女に出来る事は限られます。まずは側妃様と殿下にお話しして、協力を仰ぎましょう。兎に角、今はまだ彼女を捉えるだけの明確な証拠がない。上手くいけば、反対に相手を追い詰める為の動かぬ証拠となります」
とは言え、彼女を捉えるためリシャールを囮に使う様なものだ。
私は側妃は難色を示すだろうと考えていた。
でも、寧ろそうでは無かった。
彼女は反対に私達に頭を下げたのだ。
「分かりました。常に彼女とリシャールに目を行き届かせる様に致します。お教え頂きありがとうございました。感謝申し上げます。必ずや彼女を捕らえ、リシャールの命を守ってみせます」
たじろぐ私を他所に、側妃は決意の籠もった瞳で私を見た。
「ですが、殿下を囮に使う様な事になります。危険を伴うかも知れません。それでも宜しいのですか?」
私の問いに側妃は悲しそうに目を伏せた。
「宜しいも何も捕まえなければリシャールはまた狙われるのでしょう? こうして気を付けるべき相手も教えて頂いております。でしたら、ご安心下さい。子を守るのは親の勤めでございます。幸いこの離宮には、私が信頼を寄せる使用人が沢山おります。その者達に協力してもらい、必ず彼女を捕らえます」
そう宣言した側妃の言葉通り、彼女は捕らえられた。
何でもリシャールを階段から突き落とそうとしたらしい。
なり振り構わずとは正にこの事だ。
だが案の定、彼女はそんな事は知らない! 私は無関係だと言い張っているらしい。
リシャールを階段から突き落とそうとしたのも、偶々ぶつかってしまっただけだと…。
そう側妃から報告を受けた私は、アレクサンダーと共に彼女の元へと向かった。
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