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第13話
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「オスマンサス公爵と言う人はな。情に厚い傑出した人物だと私は思う。だからこそ、商いの殆どを他国に移した今でさえ、国一番の商人なんだよ。対して王家はどうだ? 王家と言う特別な立場でなかったら、今頃とっくに没落しておるわ」
あの日、父は苦々しい顔をしてそう言い捨てた。
「ここだけの話だが、お前は何故オスマンサスが理不尽なまでに王家と、王妃の実家である伯爵家を憎んでいるんだと思う? 」
理不尽…。
そう言われれば確かにそうだ。陛下とオスマンサスの令嬢の間には当時縁談話が持ち上がっていた。だが、その時2人はまだ正式な婚約を結んでいた訳では無かった。それなのにオスマンサス公爵は、商会の殆どを他国に移し、王妃の実家とは取引を辞めた。たとえその縁談が王家からの要望に沿ったものだったとしても余りにも過剰な反応に思えた。
「さぁ…何故でしょうか? 分かりません…」
私は戸惑いながらに答えた。
「当時、令嬢と陛下は既に男女の関係にあったんだよ」
「まさか…」
私は息を飲んだ。
「それにも関わらず陛下は王妃とも関係を持ち、あろうことか腹に子を孕ませた。婚姻前の令嬢が男と既に関係を持っているなど醜聞以外の何ものでもない。公爵家が言い出せるはずのない事が分かっていた王妃の実家は、愚かにも娘が未来の国母となる野望を持ち、自ら娘が陛下の子を孕んだと吹聴し騒ぎたてた」
「そんな…」
「だがな。令嬢にも悲はある。貴族の令嬢にとって純潔である事がどれ程大切な事か、公爵家に産まれた者が解らぬはずはない。それが分かっていながら、令嬢は易々とあんな馬鹿にそれをくれてやったのだ。やむを得ず公爵は怒りを飲み込んだ。だがあの男は性懲りも無くまた同じ事を繰り返した。あの男は全く反省などしていなかったんだよ。純潔を失った貴族令嬢の末路などお前にも分かるだろう? ましてや娘は彼を愛していた。目の前で苦しむ娘を見て、公爵は流石に許せなかった。だから行動を起こした。その気持ちは、同じ娘を持つ親だ。痛い程分かる」
オスマンサス公爵は、陛下と伯爵家に娘の復讐したんだ…。
「これに心を痛めたのが先王だ。彼は体の弱い人だった。この騒動で、心労のあまり体を壊し、あろう事かあの男を早々と王位に就ける結果となってしまった。だが、そうは言っても王は王だ。王となったあの男に謝罪されれば無碍には出来ない。公爵は先王が病に倒れた責も感じていた。だから彼が関係の修復に動くなら許すつもりだったのだよ」
そうか…。オスマンサス公爵は2度も殿下を許そうとしていた。
「だが、彼が謝罪に訪れる事は無かった。流石に3度目はない。オスマンサスとの関係を修復しようともせず、だからと言って国を建て直す為に何か施策を行う訳でも無い。18年もの間、側妃の実家に頼るだけのヒモに成り下がりおった。なぁ? これ程の馬鹿はおるまい?」
「……そうですね」
私は父の話に頷いた。
「あんな馬鹿に国を任せておけば国は弱体化の一途だ。そうなれば他国にもつけ込まれ、外交もやり難い。ましてや国力の低下は国を危機に陥れる。戦を仕掛けられるやも知れん。だから我らは王の首をすげ替える事にした。だがそのすげ替えるべき首がないのだ。そこで我らは首が育つのを待った。王家の外から国を守りながら…な」
なる程、父とオスマンサス公爵が育つのを待ち望んだすげ替えるべき首。それがエドモンド殿下とリシャール殿下だったのだ。
「だが、お前の手紙を読む限り、エドモンドは我らが待ち望んだ首ではなかった様だな。政治よりも下半身を優先する。馬鹿の子は馬鹿だったと言う事だ」
父はがっかりした様な表情で、ため息を吐いた。
あの日、父は苦々しい顔をしてそう言い捨てた。
「ここだけの話だが、お前は何故オスマンサスが理不尽なまでに王家と、王妃の実家である伯爵家を憎んでいるんだと思う? 」
理不尽…。
そう言われれば確かにそうだ。陛下とオスマンサスの令嬢の間には当時縁談話が持ち上がっていた。だが、その時2人はまだ正式な婚約を結んでいた訳では無かった。それなのにオスマンサス公爵は、商会の殆どを他国に移し、王妃の実家とは取引を辞めた。たとえその縁談が王家からの要望に沿ったものだったとしても余りにも過剰な反応に思えた。
「さぁ…何故でしょうか? 分かりません…」
私は戸惑いながらに答えた。
「当時、令嬢と陛下は既に男女の関係にあったんだよ」
「まさか…」
私は息を飲んだ。
「それにも関わらず陛下は王妃とも関係を持ち、あろうことか腹に子を孕ませた。婚姻前の令嬢が男と既に関係を持っているなど醜聞以外の何ものでもない。公爵家が言い出せるはずのない事が分かっていた王妃の実家は、愚かにも娘が未来の国母となる野望を持ち、自ら娘が陛下の子を孕んだと吹聴し騒ぎたてた」
「そんな…」
「だがな。令嬢にも悲はある。貴族の令嬢にとって純潔である事がどれ程大切な事か、公爵家に産まれた者が解らぬはずはない。それが分かっていながら、令嬢は易々とあんな馬鹿にそれをくれてやったのだ。やむを得ず公爵は怒りを飲み込んだ。だがあの男は性懲りも無くまた同じ事を繰り返した。あの男は全く反省などしていなかったんだよ。純潔を失った貴族令嬢の末路などお前にも分かるだろう? ましてや娘は彼を愛していた。目の前で苦しむ娘を見て、公爵は流石に許せなかった。だから行動を起こした。その気持ちは、同じ娘を持つ親だ。痛い程分かる」
オスマンサス公爵は、陛下と伯爵家に娘の復讐したんだ…。
「これに心を痛めたのが先王だ。彼は体の弱い人だった。この騒動で、心労のあまり体を壊し、あろう事かあの男を早々と王位に就ける結果となってしまった。だが、そうは言っても王は王だ。王となったあの男に謝罪されれば無碍には出来ない。公爵は先王が病に倒れた責も感じていた。だから彼が関係の修復に動くなら許すつもりだったのだよ」
そうか…。オスマンサス公爵は2度も殿下を許そうとしていた。
「だが、彼が謝罪に訪れる事は無かった。流石に3度目はない。オスマンサスとの関係を修復しようともせず、だからと言って国を建て直す為に何か施策を行う訳でも無い。18年もの間、側妃の実家に頼るだけのヒモに成り下がりおった。なぁ? これ程の馬鹿はおるまい?」
「……そうですね」
私は父の話に頷いた。
「あんな馬鹿に国を任せておけば国は弱体化の一途だ。そうなれば他国にもつけ込まれ、外交もやり難い。ましてや国力の低下は国を危機に陥れる。戦を仕掛けられるやも知れん。だから我らは王の首をすげ替える事にした。だがそのすげ替えるべき首がないのだ。そこで我らは首が育つのを待った。王家の外から国を守りながら…な」
なる程、父とオスマンサス公爵が育つのを待ち望んだすげ替えるべき首。それがエドモンド殿下とリシャール殿下だったのだ。
「だが、お前の手紙を読む限り、エドモンドは我らが待ち望んだ首ではなかった様だな。政治よりも下半身を優先する。馬鹿の子は馬鹿だったと言う事だ」
父はがっかりした様な表情で、ため息を吐いた。
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