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第12話

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 さて、我が家からの要求を全て陛下に飲ませたあと、私がどうなったかと言うと…。

 残念ながら逃げ遅れた。

 陛下と王妃、2人は私の目の前で痴話喧嘩を始めたのだ。まぁ、私と話している間、陛下の王妃への不満が蓄積されていたのは気付いていた。

 陛下の王妃を見る目が徐々に厳しくなっていったから…。

 だからと言って、せめて私が部屋を出た後にして欲しかった…。

「其方の事は兎も角として、まさかエドモンドまで執務を王太子妃に任せていたとは…。いいか。エドモンドには少しずつでも政務をさせる様にしなさい。これは命令だ。あれは軈て、私に代わって王となるのだ。これ以上甘やかしてどうする?」

 陛下は呆れた様にもう一度ため息を吐き、王妃にそうつげる。

「あの子はあの子なりに精一杯やっていますよ!」

 王妃は王妃でエドモンドを庇う。

「何度も言うがお前はあれを甘やかし過ぎなんだ!」

 陛下は声を荒げる。そんなやり取りの繰り返しだ。本当に勘弁して欲しい。

 私からしてみれば2人とも同じ穴の狢。陛下だって後先考えず、ルルナレッタとの事を許したではないか…。

 仕方なく私は少しだけ2人の口撃が止んだ瞬間を見計らって「では失礼します!」と声だけ掛けて、そそくさとその場から逃げ出した。

 ただ、2人の話を聞く限り、陛下は王妃が政務を私に丸投げしていた事にはとうの昔に気付いていた様だ。

 それはそうだろう。

 橋の再建なんて普通に考えても王太子妃の仕事ではない。

 だから、陛下は少なくとも私が橋の再建費用の話をした時には、王妃の政務を私が代わりにこなしている事には気付いていたはずなのだ。

 でもそれを見て見ぬ振りをしていた。

 何故なら金の無い王家には何も出来ないから…。

 王でありながら金がないからと側妃に頼り、側妃がいなくなると今度は私に頼る。

 今回、私が出した条件を全て飲んだのも、ルクソール公爵家からの援助を失いたくないからに他ならない。

 完全なる依存体質。本当に呆れたものである。

『どうやら、私があの男を馬鹿と呼ぶ本当の理由がお前にも分かった様だな』

 実家である公爵邸に戻った私にそう話を切り出した父は、その後、告げた。

『オスマンサスが王家から手を引いたのは18年も前の話だ。問題なのはその18年間もの間、あの男がそれを解決する為に何の行動も起こさなかった事の方だ。だから、オスマンサスはあの男を見限ったのだよ。あの男は王の器ではないと…』

 
 私はあの日の、父との話しに思いを馳せた…。







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