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第11話

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 私は体の角度を替え、陛下の隣に立つ王妃を真っ直ぐに見つめた。

「酷い事ですか? 確かにそうですね。ですが先にそれを私に望まれたのは、王妃様ではありませんか? 初夜の床、これから共に生きていくのだと信じて嫁いだ相手に、触れても頂けず、お前との間に子をなす事は無いと言われた時の私の気持ちが分かりますか? どれ程悔しく悲しかったか…。然もそれを子を持つ母親であり、同じ女性である王妃様が指図していただなんて…。王妃様と殿下にはその意味をきちんと知って頂きたいのです」

 私が怒りを滲ませながらそう告げると、王妃は悔しそうに視線を逸らした。私は今度は陛下に問いかける。

「それに後継なら心配ありませんわ。陛下はエドモンド殿下の立太子が決定した際、側妃様のご実家への対応を父にお任せになった事は覚えておられますか?」

「……ああ…勿論、覚えている…」

 私が急に話題を変えたからだろう。陛下は訝し気な目をして頷いた。

「父が側妃様のご実家へと赴いた際、伯爵は仰っていたそうですよ。陛下は王妃様と側妃様、2人を同列に扱うと伯爵に仰ったそうですね? 因みにですが、父はこの話を其方に控える陛下の側近の方からもお聞きした事があると言っておりましたわ」

 私がそう告げると、陛下は彼を睨みつけた。彼は縮こまっている。先程、私をこの部屋に案内した侯爵家の男だ。

 貴族同士と言うのは意外と横の繋がりがあるものだ。それにこの話は、別に隠さなければならない様な類いの話でもない。彼は何も考えず父に話したのだろう。

 勿論、陛下の側近と言う立場から考えれば、それはとても褒められた行動ではないが…。

「口の軽い奴め」

 陛下はそう言って彼を咎めたが、今更どうしようもない。

「ああ…言ったな」

 陛下はその事を認めた。

 私はそれを確認してから、話をすすめる。

「では2つ目の条件です。その約束を守って頂きたいのです。王妃様のお産みになられた王太子殿下は、陛下の次の国王となられます。ではその後継を、リシャール様もしくはリシャール様のお子と定めて頂かなければ、王妃様と側妃様。2人を同列に扱っているとは言えないのではありませんか?」

 私がそう告げた途端、王妃の目にいびつな光が宿った。

「リシャールをエドモンドの次の王に…?」

 彼女は顔をゆがめ呟いた。

 だが私はそれに気付かない振りをして、陛下に詰め寄った。

「如何ですか?」

 私の問いに陛下は首を振った。

「如何も何も…私に選択肢などないのであろう?」

「そうですね」

 私は頷く。

「なら、それ以外に道は無かろう。今、ルクソールに手を引かれたら王家は立ち行かん。それにエドモンドもリシャールも私の血を分けた子。私に依存はない。お前も良いな?」

 陛下は王妃に向かって確認する。

「…分かりましたわ」

 王妃も渋々納得した。

 これで少しは側妃の仇が討てたかしら…。私はそう思った。

「して、もう一つの条件とは何だ? この際だ。勿体ぶらずに早く言え」

 陛下は腹立たし気にそう言って、逆に私を急かした。

 彼が腹を立てているのは私にか、それとも王でありながら、本来家臣であるはずの公爵家の言いなりになっている自分にか…。もしくはその原因を作った王妃とエドモンドにか…。

 恐らくその全てにであろう…。

 ともあれ、私は陛下の言葉に従って先を続ける。

「では最後の1つ。これは私ごとなのですが、リシャール殿下に私の執務を手伝って頂きたいのです。正直、こちらに回って来る書類の量が多すぎて、私1人ではとても捌ききれません」

「何? リシャールに其方の執務をか…?」

 陛下は探る様な眼差しを浮かべて私を見た。

 私は先程、リシャール殿下がエドモンドの次の王となる事を認めさせたばかりだ。その私がリシャールと接点を持つ事になる。陛下がその裏を探ろうとするのは当然の事だ。

「はい。陛下はご存知かどうか分かりませんが、今まで王妃様の執務は側妃様がこなしてこられました。そして王子としての公務はリシャール殿下が…。ですがお2人が後宮に移られてからその執務が滞っております。ですからせめて王太子殿下の分の仕事をリシャール様に引き継いで頂きたいのです」

 折角の機会なので此処で2人の功績をアピールする。

 すると陛下が怪訝な顔をする

「其方は何を言っておる? エドモンドの分とはどう言う事だ…?」

「現在、その執務のを私が引き継いでおります」

 2人は私が持って行った種類を確認してサインするだけ…。その確認も何処までしているのか怪しいレベルだ。

 私の話しを聞いた瞬間、陛下は眉間に皺を寄せ、王妃を見た。

「其方、自分の執務だけではなく、王太子の執務まで、王太子妃にやらせていたのか!? 側妃が離宮へ移る事になった時、私は執務は大丈夫かと尋ねたな? 其方、大丈夫だと答えたではないか!」

 陛下は言葉を荒らげたが、私は陛下のこの言葉から分かった。

 なる程。後宮の実権を握りたかった王妃は早く側妃を追い出したかった。だから大丈夫だと嘘をついて、後は私に丸投げしたんだ…。

「勿論、王妃様と殿下がご自分の仕事をこなして頂けるのでしたら構いませんが…」

 そう私が言うと、王妃は何度も首を振った。

 そもそも彼女に出来るはずがない。側妃の様に金を出してくれる後ろ盾がいないのだから…。

 その様子を見た陛下は、呆れた様に一つため息を吐いてから言った。

「分かった、それも認めよう」と…。

 その瞬間、私はで父から託された目的を果たしたのである。


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 ホットランキング1位!!

 本当に嬉しいです。こんな拙い私の作品を読んで頂いた皆様のおかげす。本当にありがとうございます。


              まるまる
















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