愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️

文字の大きさ
上 下
10 / 38

第10話

しおりを挟む
「馬鹿にしている? それは王家の方で御座いましょう? 我が家はこの婚姻を結ぶ際、ルルナレッタ様の事はお聞き致しましたわ。殿下と彼女が恋仲である事は、学院中の誰もが知っておりましたから。陛下はその時お約束になったではありませんか? 2人は別れさせると…。それがいざ嫁いでみれば、王家は般例を破ってまでもルルナレッタ様を側妃にお迎えされると言う…。これは明らかにルクソールの顔に泥を塗る行為ですわ。父が怒るのも無理の無い事だと思いますが、いかがでしょう!?」

「…う…。それは…」

 私が語気を強めて反論すると、陛下と王妃は少し狼狽え始めた。

 当たり前だ。明らかに非は婚姻を結ぶ際の約束事を反故にした王家にある。

 これを機会にと私は一気に畳み掛けた。

「陛下にお聞きしたい。寧ろ我が家がそれを飲むとでも思っておられたのですか? もしや嫁いだ後、直ぐに離縁となれば私の醜聞になる。ならば何をしても許されるとでも思われた? だとしたらそれはとても愚かな行為です!」

「愚か…」

 陛下は私の言葉を繰り返し呆然としている。バカ、詐欺、愚か…。一国の王に向けるには余りにも無礼な言葉だ。だが、ここまで言われてやっと我が家の怒りに気付いたようだ。

「陛下と王妃様は過去オスマンサスの顔に泥を塗り、王家とオスマンサスは今や絶縁状態です。今の王家の窮状は全てそれに起因すると言う事はお分かりですよね? その上で更に我が家とも争うおつもりですか? 陛下のお許しを頂き、今や縁戚となった2つの公爵家。その両方を敵に回し、王家はこの先、どうされたいのでしょうか?」

 私が詰め寄ると陛下は顔を青く染めた。

「すまなかった。エドモンドがその様な愚かな行為をし、其方に恥をかかせたなど私は知らなかったのだ。あいつには其方を大切にする様、きつく申し聞かせる。側妃の件も無しだ! だからどうか怒りの矛を収めてもらえる様、公爵にとりなしては貰えまいか?」

 陛下はそう言って私に詫びながら、父へのとりなしを請うた。その様子を隣に立つ王妃は呆然と見ている。

「いいえ。それには及びません」

 私は静かに答えた。

 私の答えに陛下は眉を寄せ、じっと私を見つめる。意味が分からないのか、私の次の言葉を待っている様だ。

「私はもう殿下との閨は望みません。ですからルルナレッタ様をどうぞ側妃として召されませ。いえ、ルルナレッタ様だけではありません。この先殿下が望まれるなら、何人側妃をお召しになったとしても、ルクソールは一切それに異を唱える事は致しません」

「それは…どう言う…」

 陛下は驚きの余り目を見開いた。

「分かりましたわ。父にとりなしましょう。ただ、我が家は顔に泥を塗られたのです。もちろん条件がございます。其れを全てお飲み頂けるなら、我が家は王家をましょう」

 許すと言う言葉は、認めると言う言葉と同義だ。つまり、立場が上の者から下の者へと与える言葉…。私は態とその言葉を使って今置かれている状況を把握させた。

「もし、飲まなかった場合は…?」

 陛下は遠慮がちに尋ねた。

「話は決裂。私は殿下と離縁し、我が家は王家から手を引かさせて頂きますわ。其方が最初に約束を違えたのです。勿論ですが今まで我が家が王家へと支援した金は全額返金願います」

「そんな…そんな事をされたら、王家はどうなるのだ…」

「では、どうされます?」

 私は最後の確認をする。

「分かった。其方の出す条件は全て飲もう…」

 陛下は答えた。

「そうですか? では条件を伝えます。まず一つ目。殿下には私との白い結婚を貫いて頂きます」

 そう…。エドモンドと白い結婚を貫くと言い出したのは私だった。あんな男に純潔を捧げるなんて真っ平だ。

「……でいいのか?」

 陛下の悲壮感を帯びていた顔が少し明るさを取り戻した。

「勿論ですわ。先程も申しましたが、初夜の床で恥をかかされたののです。私にもプライドがありますわ。当然でしょう? だだし、条件は他にもありますわ」

 だけで許されると思うなんて甘すぎる。

「…いくつあるんだ?」

 私の言葉を聞いた陛下が不安気に問う。

「後、3つですわ」

「3つ…」

 彼は息を飲んだ。

「では一つ目。殿下に側妃を持つ事は認めます。ですが子を持つ事は認めません」

「何を言っているの! なんて酷いことを…。だいたい、それでは後継はどうするのです!? 」

 そう声を上げたのは、先程まで呆然と陛下の隣に佇んでいた王妃だった…。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

処理中です...