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第34話

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「嘘ではないですよ? 私は処刑を待つだけの大罪人だ。何なら自白剤でも使いますか? 嘗て貴方の祖父が私の母に使った様に…。私は嘘は言っていない。それが証明されるでしょう」

 自白剤…。まさかサイオスの口からその言葉が出た事に私は驚きを隠せませんでした。彼の母が自白剤を飲まされていたなんて…。

「そんな…。どう言う事だ? お前の母は祖父の愛人だったのだろう? 自白剤を使われた人間は廃人になると聞く。それが分かっていながら祖父はお前の母に自白剤を使ったと言うのか…? 一体、お前の母はどんな罪を犯したと言うのだ…」

 ウィリアム様が問います。サイオスはゆっくりと首を横に振りました。

「何もしていませんよ。何も…。ただ、私の母には父の愛人になる前、恋人がいた。父はそれを知っていた。それだけです…」

 サイオスは悲しみを湛えた瞳でウィリアム様を見つめました。

「でもある日、街を視察に来ていた父に見染められた。領主に見染められたんだ。言う事を聞くしかないでしょう? 母には祖父も祖母もいた。兄妹もいた。相手にも家族がいる。断ればみんな巻き込まれる。2人は泣く泣く引き裂かれた。父の愛人になり、やがて母は私を孕んだ。だが、産まれて来た私は父とは全く違う色を纏っていた。父は烈火の如く怒りました。あいつと寄りを戻したんだろうと…。母がどれだけ否定しても父は信じなかった。相手はもうとっくに違う女と結婚していたと言うのに…」

 サイオスは目に涙を浮かべながら話を続けます。

「ある日父は言ったそうです。それ程否定するのなら証明してみろと。そして廃人となるのを知りながら母に自白剤を飲ませたんだ」

「なんて事を…」

 私達は息を飲みました。

「結局母は浮気なんてしていなかった。でも自白剤のせいで廃人となった母は私がまだ5歳の時に亡くなりました。その頃、父にはまだ他に子がいなかった。だから私は父に遠縁の子として引き取られました。結局、そこまでしても父は私を自分の子としては認めなかったのです。その時に言われました。貴族の血は高潔だ。本の少しでも疑いのある者を我が家の子と認める訳にはいかない…と」

 この話を聞いて、私は確信しました。

「でも、何故義父様に自白剤なんて飲ませたの!?」

「ああ…。やはり気付いていましたか? 貴方の様子を見てそうかなとは思っていましたが…。復讐ですよ」

 サイオスはあっさりと認めたのです。

 それを聞いてウィリアム様は怒りに震えながら叫びました。

「何と言うことを…。父は罪人では無い! 父がお前に何をした!?」

 ですがサイオスは悪びれる様子も無く答えます。

「ではウィリアム様にお聞きしましょう。母は罪人でしたか? そして父は、母に自白剤を飲ませた…その罪を償いましたか?」



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