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幻の赤い靴
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私は自然が大好きでよく川に行っていたが、そこで川釣りを始めてからハマってしまい友達と行くだけでは飽き足らず一人でも行くようになった。
いいポイント探しては、休みのたびにいろいろな場所を点々としていると、誰もいない小さく開けた静かな川の場所がありました。
川辺も小さく少し歩けば樹の生い茂った傾斜のある崖になってしまうそこはなんだか山の一角にある秘密基地のような空間で、魚が釣れないのかといえばそうでもなく少し待てば釣れるいい場所で幸運にも見つけてしまった私は得をしたような気分になる。
毎週そこへ行き時には朝から日が暮れるまでいるようになり、私はすっかりその空間にハマったのだった。
ただ不思議なことに、いくら人気が少ないとは言ってもこのあたりの川は少し下るだけで有名な釣りポイントがあるのにいまだに一人も人間に会っていない。
私としてはみんなに知られてしまえばすぐにここは埋まってしまうのでその方がいいのだから不思議ではありつつも特に気にせず、ただせっかくだしと今度友達にもここを教えて連れてきてあげることにした。
いい場所があると伝えると友人はすぐに行きたいといったので
翌週、一緒に行くことにしたのだ。
「何でそんなにいい場所なのに誰もいないんだろうね」
「さあ……本当に小さなところだからまだ見つかってないのかな?」
車でいつもの場所に向かいながらそんな話をして先週初めて魚が釣れない日があったことを友人に伝えた。
「へえ……?いつもちゃんとつれるのに?」
「うん、結構いたんだけど全然釣れなくて、最後にはごみが引っかかっちゃってその日は帰ったんだよね」
「ほんとはぜーんぜん釣れない場所だったんじゃない?だから知られてない、とか」
「あはは!そうかもね」
そんな軽口を叩いているうちにそろそろ川につくころになった。
いつもの道を走り、大きなカーブをこえたあたり。
そこは、数台ほどの車が止められる空間があり、私は右側の位置に停車させ車をおりた。
見慣れた場所に何か違和感を感じる。
友人が荷物を降ろしているが私は何も言わずに先に川へ向かった。
「え。荷物手伝ってよー!」
友人の声は聞こえるが私はそれどころではなく、どんどん奥へ進んでいく。本来なら、道路から降りたらすぐに傾斜が下がり一分ほどで川に出るのだ。それなのに平坦でただひたすら真っ直ぐにつづいている。
道は間違えていない。
毎週行っているところだし、カーナビだっていつもと同じところを指していた。
訳が分からず最後には走り出す勢いで山を進むと一気に視界が開けた。
「ねえおいてかないでよー!」
息を切らしながら友人はバックを一つ肩にかけ呆然と立ちつくす私の横にたった。見渡して、友人が言う。
「川……?何てないじゃん」
川は無くなっていた。
そこは空がよく見える崖の上だった。
「なあに、道間違えたの?」
返事の代わりに首を振った。
「……ねえ、私、先週ごみが釣れちゃったって言ったよね。」
「うん?」
「それね、靴だったの赤い、靴」
私はずっと、崖の先にある一点だけを見ていた。
綺麗にそろえられた赤い靴ががけの先に置かれていたからだ。
終わり
いいポイント探しては、休みのたびにいろいろな場所を点々としていると、誰もいない小さく開けた静かな川の場所がありました。
川辺も小さく少し歩けば樹の生い茂った傾斜のある崖になってしまうそこはなんだか山の一角にある秘密基地のような空間で、魚が釣れないのかといえばそうでもなく少し待てば釣れるいい場所で幸運にも見つけてしまった私は得をしたような気分になる。
毎週そこへ行き時には朝から日が暮れるまでいるようになり、私はすっかりその空間にハマったのだった。
ただ不思議なことに、いくら人気が少ないとは言ってもこのあたりの川は少し下るだけで有名な釣りポイントがあるのにいまだに一人も人間に会っていない。
私としてはみんなに知られてしまえばすぐにここは埋まってしまうのでその方がいいのだから不思議ではありつつも特に気にせず、ただせっかくだしと今度友達にもここを教えて連れてきてあげることにした。
いい場所があると伝えると友人はすぐに行きたいといったので
翌週、一緒に行くことにしたのだ。
「何でそんなにいい場所なのに誰もいないんだろうね」
「さあ……本当に小さなところだからまだ見つかってないのかな?」
車でいつもの場所に向かいながらそんな話をして先週初めて魚が釣れない日があったことを友人に伝えた。
「へえ……?いつもちゃんとつれるのに?」
「うん、結構いたんだけど全然釣れなくて、最後にはごみが引っかかっちゃってその日は帰ったんだよね」
「ほんとはぜーんぜん釣れない場所だったんじゃない?だから知られてない、とか」
「あはは!そうかもね」
そんな軽口を叩いているうちにそろそろ川につくころになった。
いつもの道を走り、大きなカーブをこえたあたり。
そこは、数台ほどの車が止められる空間があり、私は右側の位置に停車させ車をおりた。
見慣れた場所に何か違和感を感じる。
友人が荷物を降ろしているが私は何も言わずに先に川へ向かった。
「え。荷物手伝ってよー!」
友人の声は聞こえるが私はそれどころではなく、どんどん奥へ進んでいく。本来なら、道路から降りたらすぐに傾斜が下がり一分ほどで川に出るのだ。それなのに平坦でただひたすら真っ直ぐにつづいている。
道は間違えていない。
毎週行っているところだし、カーナビだっていつもと同じところを指していた。
訳が分からず最後には走り出す勢いで山を進むと一気に視界が開けた。
「ねえおいてかないでよー!」
息を切らしながら友人はバックを一つ肩にかけ呆然と立ちつくす私の横にたった。見渡して、友人が言う。
「川……?何てないじゃん」
川は無くなっていた。
そこは空がよく見える崖の上だった。
「なあに、道間違えたの?」
返事の代わりに首を振った。
「……ねえ、私、先週ごみが釣れちゃったって言ったよね。」
「うん?」
「それね、靴だったの赤い、靴」
私はずっと、崖の先にある一点だけを見ていた。
綺麗にそろえられた赤い靴ががけの先に置かれていたからだ。
終わり
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