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第1章
6話目
しおりを挟む「――あたしはカナンって言います。姓はありません」
ホントはあるけどまた勇者に間違えられるのヤだから黙ってよう。
「姓が無いなんておまえは孤児か? どこの生まれだ?」
おい、全部答えたのに質問が増えたぞ!
「貴方方のような大国ではなく、地図にも載ってないよう辺鄙な諸島です」
ってかいい加減開放しろよ。立ちっぱなしは疲れるんだぞ! それに日が暮れる前に宿屋まで行きたいんだ。野宿はごめんなんだから。
「これが最後の質問だ。なんでオーランドの国王はこんなものを街中に出した?」
目の前に突きつけられた煤けた紙にはあたしの似顔絵と名前。そしてひとこと、この者に衣食住を与えることを禁ずる。
「これはおまえだろう?」
言葉に詰まるあたしを急かすように周りが詰め寄る。だぁー近づくな――ッ! 狭苦しいだろうが――ッ! 離れろーと言いたいのを飲み込み、違うことを口にする。
「あたしが勇者に暴力を振るったからです」
「なぜ、そんな事をした?」
おい、さっき最後の質問って言ってなかったか?! なんでまた質問をする?! しかもなんだ! その偉そうな態度は!
「...なんだその顔は」
おっといかん。どうやら顔に出ていたらしい。気をつけねば。
「で、なんで勇者にそんな事をしたんだ?」
「知り合いの女性が乱暴されかかっていたんでそれを阻止する為に首根っこ掴んで引っ張りはがしたら、逆恨みされた挙句、有ること無いこと国王に訴えやがった。です」
「...なんだその無理やり付けた敬語は」
「仕方ないでしょうが。人間、誰だって感情が高まったり、切羽詰ればボロが出るでしょうが」
「確かに...ってかおい、そんなことで国外追放を受けたのか?!」
「そう。人助け追放なったの。という訳で今夜の寝床と衣食住を確保するために
どっかの国か街に着かないとなんないから、さっさと解放してほしいんですけど」
「ろくでもない国王だな。あ、おい。誰か椅子を持って来てやれ。立ちっぱなしは疲れただろう?」
一番偉そうなやつが座椅子のような物を勧めてくるので取りあえず腰掛ける。すると周りを囲んでいた男たちもいつの間にか着席していた。おい、どっから出したッ?!
「...ええまぁ、確かにろくでもない国王でしたね。R18禁男の所業は見て見ぬ振りだし、臣下に慕われてもいなかったし。自分を取り巻く状況..主に政治的なものにだけど...なんの対策も立ててないし。ってか国境近くに進軍して来てたあんたんとこじゃなくて、なにもしてこない魔族に危機感持つってどうよ」
「俺もそれは思った。いとも簡単に侵略出来るわ勇者はこっちに寝返るわ、ただある一箇所だけは結界かなんか張ってあるらしくてその建物だけは破壊と略奪...ごほん、侵略出来なかったなぁ」
ルマンド、あんたいま思いっきし言い直したよね? なんだ破壊って。なんだよ略奪って。ってか勇者なに簡単に寝返ってんだよ。お前自分を召喚した国そんな簡単に見捨てんなよッ。てか何時の間に侵略したんだよッ?!
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