8 / 8
5.
しおりを挟む
それから、ひと月ほど時間が経ちました。
「おかえりなさい」
帰ってきた愛する人に言います。
「ただいま」
そう言ってルーカス殿下は私の額にキスします。
まだ彼の甘い言動には慣れませんが、おかえり、ただいまと言える喜びを噛み締めるばかりです。
あの日、私は殿下が家族を論破していく状況を呆然と見ていました。
不意に、殿下が私に聞きました。
「君はどうしたい?」と。
そんなの決まっています。
「私は・・・殿下と一緒にいたいです。」
殿下の目を見て、はっきりと告げました。
私をいじめ、蔑ろにした家族より、私のために行動し、守ってくれる殿下の側にいたいです。
「よかった。」
彼がホッとしたように微笑んだ顔は優しくて、私はとても安心しました。
「それじゃあ、帰ろうか。」
そう言って優しく手を握って連れ出してくれます。この辛かった空間から。息苦しかった家族から。
「帰ろう」という言葉で、私の居場所はこの家じゃない、殿下のところなんだと思えました。
後日、私の家族は裁判で処罰が決まったようです。
殿下に「君が気にすることじゃないよ」と言われて処罰の内容を詳しくは教えてもらえませんでしたが、みんなどこかしらで頑張って生活しているようです。噂によると、義妹は厳しい修道院に入ったとか。
家族が王族と対立したことで、私たちの婚約も危うくなるのではと思っていましたが、全くそんなことはありませんでした。きっと殿下のおかげでしょう。
「殿下、プレゼントです。」
隣に腰掛けた彼に、完成したハンカチを渡します。
そのハンカチは殿下の髪色と瞳の色をイメージした糸を使用し、素敵な刺繍に仕上がりました。今までで一番の出来です。
「ありがとう!とても綺麗だ。・・・本当に、本当に嬉しい」
笑顔で感謝を伝えてくれます。
ようやく自分で渡すことができ、嬉しさが込み上げてきました。
「でも、殿下じゃなくてルーカスって呼んでくれるともっと嬉しいな。」
まだ、恥ずかしくてなかなか名前で呼ぶことができません。
「・・・ルーカス。」
「うん」
嬉しそうに微笑む彼に、一言伝えたくなりました。
「ルーカス、愛してます。」
私の言葉で彼の顔が赤くなります。
いつも赤面させられてばかりなので、その仕返しです。
「私も愛しているよ。」
そう言って、優しい口付けが落ちてきます。
私は今、最高に幸せです。
悪役令嬢と言われている私が殿下に婚約解消をお願いした結果、幸せになりました。
【完】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて完結です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
いくつか考えている番外編は不定期更新になります。
新作も近々upする予定なので、そちらも楽しんでいただければ幸いです!
2021.09.19
「おかえりなさい」
帰ってきた愛する人に言います。
「ただいま」
そう言ってルーカス殿下は私の額にキスします。
まだ彼の甘い言動には慣れませんが、おかえり、ただいまと言える喜びを噛み締めるばかりです。
あの日、私は殿下が家族を論破していく状況を呆然と見ていました。
不意に、殿下が私に聞きました。
「君はどうしたい?」と。
そんなの決まっています。
「私は・・・殿下と一緒にいたいです。」
殿下の目を見て、はっきりと告げました。
私をいじめ、蔑ろにした家族より、私のために行動し、守ってくれる殿下の側にいたいです。
「よかった。」
彼がホッとしたように微笑んだ顔は優しくて、私はとても安心しました。
「それじゃあ、帰ろうか。」
そう言って優しく手を握って連れ出してくれます。この辛かった空間から。息苦しかった家族から。
「帰ろう」という言葉で、私の居場所はこの家じゃない、殿下のところなんだと思えました。
後日、私の家族は裁判で処罰が決まったようです。
殿下に「君が気にすることじゃないよ」と言われて処罰の内容を詳しくは教えてもらえませんでしたが、みんなどこかしらで頑張って生活しているようです。噂によると、義妹は厳しい修道院に入ったとか。
家族が王族と対立したことで、私たちの婚約も危うくなるのではと思っていましたが、全くそんなことはありませんでした。きっと殿下のおかげでしょう。
「殿下、プレゼントです。」
隣に腰掛けた彼に、完成したハンカチを渡します。
そのハンカチは殿下の髪色と瞳の色をイメージした糸を使用し、素敵な刺繍に仕上がりました。今までで一番の出来です。
「ありがとう!とても綺麗だ。・・・本当に、本当に嬉しい」
笑顔で感謝を伝えてくれます。
ようやく自分で渡すことができ、嬉しさが込み上げてきました。
「でも、殿下じゃなくてルーカスって呼んでくれるともっと嬉しいな。」
まだ、恥ずかしくてなかなか名前で呼ぶことができません。
「・・・ルーカス。」
「うん」
嬉しそうに微笑む彼に、一言伝えたくなりました。
「ルーカス、愛してます。」
私の言葉で彼の顔が赤くなります。
いつも赤面させられてばかりなので、その仕返しです。
「私も愛しているよ。」
そう言って、優しい口付けが落ちてきます。
私は今、最高に幸せです。
悪役令嬢と言われている私が殿下に婚約解消をお願いした結果、幸せになりました。
【完】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて完結です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
いくつか考えている番外編は不定期更新になります。
新作も近々upする予定なので、そちらも楽しんでいただければ幸いです!
2021.09.19
228
別視点は閑話としてお楽しみください。読み飛ばしてもらっても結構です。
お気に入りに追加
3,147
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(24件)
あなたにおすすめの小説

義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません
しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。
曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。
ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。
対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。
そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。
おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。
「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」
時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。
ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。
ゆっくり更新予定です(*´ω`*)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

【完結】私ではなく義妹を選んだ婚約者様
水月 潮
恋愛
セリーヌ・ヴォクレール伯爵令嬢はイアン・クレマン子爵令息と婚約している。
セリーヌは留学から帰国した翌日、イアンからセリーヌと婚約解消して、セリーヌの義妹のミリィと新たに婚約すると告げられる。
セリーヌが外国に短期留学で留守にしている間、彼らは接触し、二人の間には子までいるそうだ。
セリーヌの父もミリィの母もミリィとイアンが婚約することに大賛成で、二人でヴォクレール伯爵家を盛り立てて欲しいとのこと。
お父様、あなたお忘れなの? ヴォクレール伯爵家は亡くなった私のお母様の実家であり、お父様、ひいてはミリィには伯爵家に関する権利なんて何一つないことを。
※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います
※最終話まで執筆済み
完結保証です
*HOTランキング10位↑到達(2021.6.30)
感謝です*.*
HOTランキング2位(2021.7.1)

【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます?
水月 潮
恋愛
ルシア・ローレル伯爵令嬢はある日、婚約者であるイアン・バルデ伯爵令息から婚約破棄を突きつけられる。
正直に言うとローレル伯爵家にとっては特に旨みのない婚約で、ルシアは父親からも嫌になったら婚約は解消しても良いと言われていた為、それをあっさり承諾する。
その1ヶ月後。
ルシアの母の実家のシャンタル公爵家にて次期公爵家当主就任のお披露目パーティーが主催される。
ルシアは家族と共に出席したが、ルシアが夢にも思わなかったとんでもない出来事が起きる。
※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います
*HOTランキング10位(2021.5.29)
読んで下さった読者の皆様に感謝*.*
HOTランキング1位(2021.5.31)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
サクッと読めて楽しかったです。
有能執事が殿下であったとは、どっちの姿でもかっこいいですね。
何度読んでも好きなお話です。こんなふうに守って欲しいですね☺️
番外編の更新楽しみにしてます(*^^*)
義妹が本当に修道院に行ったとは思えないので1年経ってもまだまだお待ちしておりますm(_ _)m