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【別視点】の流れで殿下視点になってますが、本編です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ど、どうしてここに・・・?」
ずっと話していなかったガーベラの父親・コルドニア公爵が口を開く。
「潜入調査です。愛する彼女のために。」
ガーベラと目が合うと驚いた顔はみるみる赤くなっていった。可愛い。
彼女に見惚れている場合ではなかった。気を取り直して彼らに言う。
「この家の実情は全て父上へと伝え、裁判の許可をもらってきました。」
父上、つまりこの国の陛下からの許可が遅くて先程は助けることができなかった。帰ったら一言文句を言うつもりだ。
「じ、実情?・・・裁判?」
公爵が疑問を言う。
「はい。義妹のララはガーベラや彼女の執事・侍女を暴力・暴言でいじめていm「そ、そんなことしてないわ!」」
ララが叫んだ。王子の言葉に被せるなんてどんな神経してるんだ。まあ、公爵夫人も人の言葉を遮っていたから、悪いことだと思っていないのかもしれないが。
「してない?ではこれは何だろうか。」
私がズボンの裾をあげるとはっきりと蹴りあとがついている。
「・・・っ!」
「これは先程、あなたにつけられた痕です。してないなんて言わせないよ。私に、王子に手を出したとなると裁判ものだよね?」
ララはわなわなと震え始めた。
「あと、公爵夫人も。娘のララ同様、日常的に暴言を行っていることは確認しました。また、ララに関しては、彼女に対する虚偽の噂を広めていたことも自白済みです。」
夫人は悔しそうに睨んで来る。
「妻と娘がすまなかった。どのような処分でも受けさせよう。」
公爵が頭を下げている。が、
「どうして、二人だけが悪者みたいに言ってるんですか?」
「?」
公爵はポカンとしている。
「あなたもですよ。」
「私は何もしてないっ」
「えぇ。本当に、なにもしていませんね。ララの教育も、虐げられているガーベラを助けることも。あと、仕事も。」
最後を特に強調して言った。
「し、仕事?な、なんのことでしょうか・・・」
「私はこの目で確認しましたよ。あなたの分の仕事を彼女がしていたことを。」
数時間前、彼女が裁縫の前後にしていたのは、執務つまり公爵の仕事だ。
彼女が公爵家の領地に関する仕事をしているのをしっかり見た。
公爵は娘に自分の仕事を押し付けており、彼女は当然のようにそれをしていたのだ。そして、さも自分が働いたように振る舞っていた。信じられない。
「教育、そう、教育のためだ!」
慌てて何か言い訳をしている。
「教育というのなら、彼女の成果だと言わなくてどうするんですか。そもそも、将来王妃になる彼女にそんな事務的な内容が教育になるとお思いで?それなら、ララさんにさせたらどうです?彼女は遊ぶだけで、何もしていませんよ。婿を取るにしても最低限知っておくべきでは?適切な教育をさせるのが父親の努めでしょう。」
公爵は下を向いて黙った。
「未来の王妃に対してありえない仕打ちです。王家を侮辱していると言われても言い返せないレベルですよ。よって、陛下からの裁判の許可が下りました。」
俯いている彼らに向かって告げる。
「愛する彼女を傷つけた罪は重いですよ。」
シーンと静まり返った中、微かに声が聞こえる。
「・・・そ、嘘っ。そんなの嘘よっ!殿下は私を愛してるのっ!!」
ララのつぶやきが叫びに変わった。
「あなたを愛したことはないです。どこかの令息やら平民の男やら、あなたを慕ってくれる方はいるのでしょう?十分じゃないですか。」
ララの媚び売りが成功した男性は少なからず居ると聞いた。大人しくその人達にちやほやされておけばいいものを。
「あなたに愛されたかったのにっ!!!」
思わず鼻で笑ってしまった。残念ながらガーベラ以外を愛することは決してない。
「これからもずっとあり得ないです」
「・・・殿下はそんなこと言わない!!偽物だ!殺してやる!殺してやる!!」
そう言ってデザートナイフを持って飛びかかってくる。
と、隠れて潜伏していた私の護衛たちがララを取り押さえる。
抑えられた彼女は飽きずに殺害予告してくる。
そんな彼女に向けて笑顔で告げる。
「王子殺人未遂も加わりました。どんどん罪が重くなっていきますね。」
また震え始めたララを無視して公爵に言う。
「ガーベラの身の安全のため、彼女は王家で保護します。そして、裁判まで・・・いいえ、これからずっと彼女と会うことを禁じます。」
彼女が彼らと共にいることで、これ以上傷つくのを防ぎたい。それに、彼女は優しいから彼らを許してしまいそうだ。
「わ、私たちは家族だぞ!!」
公爵が反論を叫ぶ。
「家族?今まで家族らしい行動をしてきました?」
本当、どの口が言ってんだろうか。
「・・・っ」
「では、ガーベラに聞いてみますか。君はどうしたい?」
彼女に聞いた後で、少し後悔する。
もし、「保護なんていらない」「家族と会いたい」などと言われたら合わせる顔がない。
「私は・・・」
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「ど、どうしてここに・・・?」
ずっと話していなかったガーベラの父親・コルドニア公爵が口を開く。
「潜入調査です。愛する彼女のために。」
ガーベラと目が合うと驚いた顔はみるみる赤くなっていった。可愛い。
彼女に見惚れている場合ではなかった。気を取り直して彼らに言う。
「この家の実情は全て父上へと伝え、裁判の許可をもらってきました。」
父上、つまりこの国の陛下からの許可が遅くて先程は助けることができなかった。帰ったら一言文句を言うつもりだ。
「じ、実情?・・・裁判?」
公爵が疑問を言う。
「はい。義妹のララはガーベラや彼女の執事・侍女を暴力・暴言でいじめていm「そ、そんなことしてないわ!」」
ララが叫んだ。王子の言葉に被せるなんてどんな神経してるんだ。まあ、公爵夫人も人の言葉を遮っていたから、悪いことだと思っていないのかもしれないが。
「してない?ではこれは何だろうか。」
私がズボンの裾をあげるとはっきりと蹴りあとがついている。
「・・・っ!」
「これは先程、あなたにつけられた痕です。してないなんて言わせないよ。私に、王子に手を出したとなると裁判ものだよね?」
ララはわなわなと震え始めた。
「あと、公爵夫人も。娘のララ同様、日常的に暴言を行っていることは確認しました。また、ララに関しては、彼女に対する虚偽の噂を広めていたことも自白済みです。」
夫人は悔しそうに睨んで来る。
「妻と娘がすまなかった。どのような処分でも受けさせよう。」
公爵が頭を下げている。が、
「どうして、二人だけが悪者みたいに言ってるんですか?」
「?」
公爵はポカンとしている。
「あなたもですよ。」
「私は何もしてないっ」
「えぇ。本当に、なにもしていませんね。ララの教育も、虐げられているガーベラを助けることも。あと、仕事も。」
最後を特に強調して言った。
「し、仕事?な、なんのことでしょうか・・・」
「私はこの目で確認しましたよ。あなたの分の仕事を彼女がしていたことを。」
数時間前、彼女が裁縫の前後にしていたのは、執務つまり公爵の仕事だ。
彼女が公爵家の領地に関する仕事をしているのをしっかり見た。
公爵は娘に自分の仕事を押し付けており、彼女は当然のようにそれをしていたのだ。そして、さも自分が働いたように振る舞っていた。信じられない。
「教育、そう、教育のためだ!」
慌てて何か言い訳をしている。
「教育というのなら、彼女の成果だと言わなくてどうするんですか。そもそも、将来王妃になる彼女にそんな事務的な内容が教育になるとお思いで?それなら、ララさんにさせたらどうです?彼女は遊ぶだけで、何もしていませんよ。婿を取るにしても最低限知っておくべきでは?適切な教育をさせるのが父親の努めでしょう。」
公爵は下を向いて黙った。
「未来の王妃に対してありえない仕打ちです。王家を侮辱していると言われても言い返せないレベルですよ。よって、陛下からの裁判の許可が下りました。」
俯いている彼らに向かって告げる。
「愛する彼女を傷つけた罪は重いですよ。」
シーンと静まり返った中、微かに声が聞こえる。
「・・・そ、嘘っ。そんなの嘘よっ!殿下は私を愛してるのっ!!」
ララのつぶやきが叫びに変わった。
「あなたを愛したことはないです。どこかの令息やら平民の男やら、あなたを慕ってくれる方はいるのでしょう?十分じゃないですか。」
ララの媚び売りが成功した男性は少なからず居ると聞いた。大人しくその人達にちやほやされておけばいいものを。
「あなたに愛されたかったのにっ!!!」
思わず鼻で笑ってしまった。残念ながらガーベラ以外を愛することは決してない。
「これからもずっとあり得ないです」
「・・・殿下はそんなこと言わない!!偽物だ!殺してやる!殺してやる!!」
そう言ってデザートナイフを持って飛びかかってくる。
と、隠れて潜伏していた私の護衛たちがララを取り押さえる。
抑えられた彼女は飽きずに殺害予告してくる。
そんな彼女に向けて笑顔で告げる。
「王子殺人未遂も加わりました。どんどん罪が重くなっていきますね。」
また震え始めたララを無視して公爵に言う。
「ガーベラの身の安全のため、彼女は王家で保護します。そして、裁判まで・・・いいえ、これからずっと彼女と会うことを禁じます。」
彼女が彼らと共にいることで、これ以上傷つくのを防ぎたい。それに、彼女は優しいから彼らを許してしまいそうだ。
「わ、私たちは家族だぞ!!」
公爵が反論を叫ぶ。
「家族?今まで家族らしい行動をしてきました?」
本当、どの口が言ってんだろうか。
「・・・っ」
「では、ガーベラに聞いてみますか。君はどうしたい?」
彼女に聞いた後で、少し後悔する。
もし、「保護なんていらない」「家族と会いたい」などと言われたら合わせる顔がない。
「私は・・・」
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別視点は閑話としてお楽しみください。読み飛ばしてもらっても結構です。
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