49 / 72
閑話 ヴェール伯爵家解散
しおりを挟む
「えっ……!レイヤード殿下と婚約解消!?!?嫌よ!イヤァ!」
ローザが首を横に振り、金切り声をあげる。
「レイヤード殿下はお前に引っかかり、将来の王として必要な能力に欠けるとして廃太子になったが、我々と違って罪を犯しているわけではない。伯爵令嬢でいられたのも、オレリアン公爵が爵位を私に譲ってくれたからだし、許してくれたから。そして、オレリアン公爵がいなくてもこの領地が再び活性化できたのは、殿下の力があったからこそ。殿下はよく反省し、そしてこの地をうまく軌道に乗せた手腕が認められて王族のままでいることを許されたのだ。王族が、我々のようなケチのついた者と縁を結ぶはずがないだろう。」
「殿下じゃなかったら?私は誰と婚約するの?それなりの方じゃなければ嫌よ!」
「………喉元すぐれば、か…。そこで関係ない顔をしているケインもだ。お前もこっちに座れ!」
レイヤード殿下が領地から引き揚げて城に戻られて。
少しは仕事を手伝う気があるのかと思えば全然そんなそぶりもなく。
領地を警備しているとは名ばかりでただブラブラしているだけのごく潰し。
警備と言い張って窓辺でぼーっとしている息子を向かい合うソファに座らせる。
「私は殿下から引き継いで仕事をしているが、ここの領地経営はかなり難しい。先々代や兄上の能力が高かったからこそ何とかなっていたようなもので、常に新しいことを考え続けなくてはならない。資源だよりの土地が資源を枯渇させたのだから当たり前だ。ヴェネツィア兄上が構想を立て、オレリアン公爵が準備をし、殿下が軌道に乗せた。とはいっても、それを継続して成功させていくことがどれだけ大変なことか。私の後はどうする?誰が継ぐ?ただでさえケチがついた家だ、同等の家格どころか下位の貴族でさえ嫁いできてくれるか。はっきり言おうか?」
本当の意味で自らを省みず、変われないケインは、後継の資格はない。お前に領地経営は無理!
自分の身の程を知らずにただ我儘を言うだけのブスに釣書は来ません!
こっちがお願いしてお願いしてお願いしても無理でした!
「お父様!」
「酷いわひどすぎるわっ!」
「………幸い、王家は自分たちの有責だからと婚約解消のお金をたくさんくださった。あとは自分たちの私財を集めて、爵位と領地は返上しようと思う。もっとうまく経営できる人に。それなりに身の丈にあった仕事をして、贅沢をしなければ、それなりに暮らしていけるはずだ。」
「貴族をやめるってこと?ドレスが着れなくなるの?パーティにもいけないの?」
「どのみち、あれからパーティには行ってないだろう?私たちが貴族にとどまったところで、パーティに参加することはできないよ。」
「執事をしていた経験があるから、私は執事の職につこうと思う。幸い、陛下が手配してくださった。私たちがこの国で働いても、生きづらいであろうと配慮してくださってな。西のローメン王国の貴族の屋敷で働けるよう、紹介状をくださったのだ。お前たちも一緒にローメン王国へ行くんだ。ケイン、お前はそこの騎士団に就職すること。お前は人に従うのであれば十分仕事ができるだろう。私たちは自分が主ではなく、従であるのが分相応なんだ。他国であれば、あるいは宮勤めも可能ではないかとおっしゃってたぞ。」
「騎士!騎士になれるのなら喜んで行きます!」
「ローザ、お前はその国で修道院に入れ。性根を入れ替えれば、嫁の先もないことはないだろう。」
「ええええっ……。そんなぁ。」
こうして、シンが予測していた通り、ヴェール伯爵家は解散になった。
ローザが首を横に振り、金切り声をあげる。
「レイヤード殿下はお前に引っかかり、将来の王として必要な能力に欠けるとして廃太子になったが、我々と違って罪を犯しているわけではない。伯爵令嬢でいられたのも、オレリアン公爵が爵位を私に譲ってくれたからだし、許してくれたから。そして、オレリアン公爵がいなくてもこの領地が再び活性化できたのは、殿下の力があったからこそ。殿下はよく反省し、そしてこの地をうまく軌道に乗せた手腕が認められて王族のままでいることを許されたのだ。王族が、我々のようなケチのついた者と縁を結ぶはずがないだろう。」
「殿下じゃなかったら?私は誰と婚約するの?それなりの方じゃなければ嫌よ!」
「………喉元すぐれば、か…。そこで関係ない顔をしているケインもだ。お前もこっちに座れ!」
レイヤード殿下が領地から引き揚げて城に戻られて。
少しは仕事を手伝う気があるのかと思えば全然そんなそぶりもなく。
領地を警備しているとは名ばかりでただブラブラしているだけのごく潰し。
警備と言い張って窓辺でぼーっとしている息子を向かい合うソファに座らせる。
「私は殿下から引き継いで仕事をしているが、ここの領地経営はかなり難しい。先々代や兄上の能力が高かったからこそ何とかなっていたようなもので、常に新しいことを考え続けなくてはならない。資源だよりの土地が資源を枯渇させたのだから当たり前だ。ヴェネツィア兄上が構想を立て、オレリアン公爵が準備をし、殿下が軌道に乗せた。とはいっても、それを継続して成功させていくことがどれだけ大変なことか。私の後はどうする?誰が継ぐ?ただでさえケチがついた家だ、同等の家格どころか下位の貴族でさえ嫁いできてくれるか。はっきり言おうか?」
本当の意味で自らを省みず、変われないケインは、後継の資格はない。お前に領地経営は無理!
自分の身の程を知らずにただ我儘を言うだけのブスに釣書は来ません!
こっちがお願いしてお願いしてお願いしても無理でした!
「お父様!」
「酷いわひどすぎるわっ!」
「………幸い、王家は自分たちの有責だからと婚約解消のお金をたくさんくださった。あとは自分たちの私財を集めて、爵位と領地は返上しようと思う。もっとうまく経営できる人に。それなりに身の丈にあった仕事をして、贅沢をしなければ、それなりに暮らしていけるはずだ。」
「貴族をやめるってこと?ドレスが着れなくなるの?パーティにもいけないの?」
「どのみち、あれからパーティには行ってないだろう?私たちが貴族にとどまったところで、パーティに参加することはできないよ。」
「執事をしていた経験があるから、私は執事の職につこうと思う。幸い、陛下が手配してくださった。私たちがこの国で働いても、生きづらいであろうと配慮してくださってな。西のローメン王国の貴族の屋敷で働けるよう、紹介状をくださったのだ。お前たちも一緒にローメン王国へ行くんだ。ケイン、お前はそこの騎士団に就職すること。お前は人に従うのであれば十分仕事ができるだろう。私たちは自分が主ではなく、従であるのが分相応なんだ。他国であれば、あるいは宮勤めも可能ではないかとおっしゃってたぞ。」
「騎士!騎士になれるのなら喜んで行きます!」
「ローザ、お前はその国で修道院に入れ。性根を入れ替えれば、嫁の先もないことはないだろう。」
「ええええっ……。そんなぁ。」
こうして、シンが予測していた通り、ヴェール伯爵家は解散になった。
32
お気に入りに追加
2,497
あなたにおすすめの小説
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました
藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。
(あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。
ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。
しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。
気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は──
異世界転生ラブラブコメディです。
ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで
深凪雪花
BL
候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。
即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。
しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……?
※★は性描写ありです。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます
野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。
得た職は冒険者ギルドの職員だった。
金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。
マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。
夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。
以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?

番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる