義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍

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ケンブリッジ王太子とレイヤード王子

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グラス王国では、断罪された人々が、日々を過ごしていた。


今思えば、どうして自分はあんなに傲慢でいられたのだろう。
私中心に世界が回っていると、どうして思えたのだろう。

私一人がどれだけ優秀でも、それについてきてくれる者がいなければ、何もできない。
そして、ついてきてもらうためには、人心をつかむ必要がある。



日中はヴェール伯爵家で領地の基盤を安定させることに必死になり、へとへとになりながら夜は城へ戻る生活が続く。
硝子に映る疲れた顔は、かつての煌びやかなオーラはない。


弟のケンブリッジは優秀で、成績だけではなく、人を見る目があり、人を使うことが上手い。
万が一の保険で王太子教育は受けていたから、問題なく私の失脚後は王太子になった。



夕餉の席で、長いテーブルに腰掛ける。


王妃教育が始まっているケンブリッジの婚約者も席に着いた。


昔は、ただの地味な令嬢で面白みのない女だと思っていた。
たいして美しいわけではない、侯爵令嬢。


でも、今なら、彼女の美しさが分かる。
内面から滲み出る、知的な美しさ。
王母となるのにふさわしい佇まい。

……………本来は、私の婚約者になるはずだった令嬢。
私があの女に固持したために、弟の婚約者になった。



「兄上、元気がないようですが。」


「……過去の自分を顧みて、反省しているところだよ。ケンブリッジが立派でよかった。ケンブリッジなら、私なんかよりずっと良い王様になれる。」

「私だけの力ではありません。私に足りないものをリリーが支えてくれるので、助かっています。」

にっこりと婚約者とほほ笑みあう。



……二人は良い王と王妃になるだろう。





「レイヤード。オレリアン公爵さえ見捨てた領地をうまく立て直しているようだな。」


カトラリーを置いて、陛下に話しかけられた。

見捨てられていると思っているのに、声をかけてもらえるなんて、なんてありがたいことか。


「…オレリアン公爵は、ヴェール伯爵という枷もありましたし、領民を斬り捨てて外から連れてくるという判断はなかなか一領主では難しいことです。私が仮にもまだ王子という立場なので、打てた手です。」


「レイヤードの打った手は、王族の視点だ。領地領民より、もっと広い視点から国の益になることだ。お前は過ちを犯した。だが、お前の場合、決して許されない過ちというわけではない。王太子としては戻せないが、王族として、ケンブリッジを支えてくれないか。」

「王の影から、あの娘とまだ関係を持っていないことは聞いています。王家の都合で婚約解消ということで、お金を払ってもいいのよ。」



ぱあっと未来が開けた気がした。


でも、まだ。

また過ちを犯すんじゃないか、と思う。自分が一番信じられない。


「ありがとうございます。………でももう少し、あの領地を見させてください。私がいなくとも回るくらいに、領地が整ったらその時は、よろしくお願いいたします。」



目が覚めてよかった。

陛下も王妃も、王太子たちも、いい風に変わったレイヤードに喜んだ。



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