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諦めきれない

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「パイロン。こちらのお家の方たちだったら、人間性にも問題ないし、お家にも問題ないから大丈夫だと思う。この方たちの中からまずはお会いして、お話してみたらどうかと思うから、何人か選んでくれるかな…?」

「はい。アレン様が仕分けてくださった方なら、元婚約者みたいな人もいないでしょうし、安心です。」

「お断りの人にはこちらからお返事を出しておくね。………それでね、レックス卿から30通も釣書が来てたのだけど、一応あの方も問題ない……方ではあるのだけど…………。どうする?」


「30通も………??????」



「よっぽどなんだろうけど………。お年もかなり離れているしねぇ…。」


とんとん。
ノックがして、カエサルが入って来た。


「………パイロン。レックス卿から贈り物が届いているのですが。どうしますか?」


「送り返してもらっていいですか?」


「………それが、絞められたばかりのジビエ肉なので…。」


「生肉は送り返せないね。別のものを見繕って送り返そう。」

「そうですね、アレン様にお任せします。」


ジビエ肉……??何を考えているんだ、あの人は。

そういえば、俺たちが飢えそうな時、弱った兎や猪が都合よく現れて、飢えをしのぐことができたんだ。

――――――まさか、ね。


兎や猪の肉と一緒に送られたカードには、「あの時もけして、君のことを気にかけていなかったわけじゃない。」
と書かれていた。








女々しかっただろうか。

だが、王家の影だなんて言えないから…。

アイシー=レックスは、パイロンのことが諦めきれない。

自分の妻にしてしまえば、面白おかしく言われることもあるだろう。
それが嫌で嫁に来てくれる者がいないのだし…。

だけど、どうしても、こればかりは我儘になってしまう。

好きであれば、相手のことを想うべきなのかもしれない。

でも、我を通してでも、欲しいのだ。彼が。


「レックス卿。」

陛下が自分に声をかける。

「慣例通り、アルバートも君にお願いしていたら、こんなことにはならなかったのだろうか。私はもう疲れたよ。息子1人まともに育てられなかったのに、国民を率いるなんてできっこない。愚王はなるべく早く去るつもりさ。君のことは、アレンにきちんと紹介しようと思う。これまで通り、今度はアレンの下で影を束ねてほしい。」

「承知仕りました。」


ああ、アレン様には私の事情を説明してもよいだろうか。

私は狡い大人だ…。



初めて会ったあの日のことを、昨日のように思い出す……。


思えば、あれがまずかったのだ。
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