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小犬は遠吠える

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「ああ、今頃アレン様とカエサル様は楽しく宿で過ごされているんだろうなぁ…。」

月を見ながら、パイロンは盃に酒を入れた。


この国の王太子殿下はアレン様のどこが気に入らなかったのだろう?と謎なくらい、アレン様は魅力的な人だ。

体質的に外に出て体を動かすことがなかったせいか、運動神経はない。
それは間違いない。
よくカエサルが抱きかかえて行動するのを見るけど、余計に歩けなくなるから過保護もいい加減にした方がいいと思う。

アレン様のための室内運動場を作ったらどうだろう。

今からではどうにもならないだろうが、せめて人並みに。
健康のためにもいいと思う。

アレン様の体は柔らかそうで、だから心配になる。


宝箱に入れて、大切に大切にするのではだめなのだ。


運動神経では残念なアレン様だが、施政者としては有能だと言える。
一見高圧的な物言いも、理屈がかなっているから納得できるし、それに、仕事とそうでないときのオンオフがあって、プライベートではとても可愛らしい人だ。


幼くして親元を離されたアレン様は、カエサル様だけを連れて城にとらわれたという。

アレン様曰く変態王子は、アレン様を束縛して、里帰りもさせず、公爵たちに会わせず、友人も作らせず、ねっとりと傍にいたようだ。

そりゃあ塩対応になっていくよなぁ…。


プライベートもない生活。

友人同士で語らうこともできない。


元々、体質的に社交がままならなかったアレン様は、婚約をしていなければ、次期公爵の名乗りとともに、少しずつ社交を始める予定だったらしい。

体質はあるけれど、貴族の社交は夜が多いし、馬車に日傘があれば問題ないのだから、きっと人気者になっていただろうに。


そんなこんなで、しっかり者で賢くて、同年代の子どもより大人びていたアレン様といえど、やっぱり子ども時代に甘えたりなかったのだろう。
ずっとそばで世話をしてくれていたカエサル様は、きっと疑似的な兄であり、父なのだ。
ついさっきまでバリバリ指揮していた人が、ころっとスイッチが変わったように甘えだす。


そこに恋愛感情はない…と思う。

そう思いたい。



「ちくしょう、アレン様かわいいだろうなあ。浴衣姿みたかったなー。きっとヒラヒラ浴衣が乱れて…。ドジっ子だから…。」

「パイロン様ーー!!もう、なんとかしてくださいよぉ!!!!!」


あー、看守だ…。


まーたあの女やらかしたのか。

「今度はなにやったんだ。」


「ストリップショー………です……。うぇえぇ。」

「どんだけ誘惑したところで出さん!なんでこうやらかすんだ。今日だよな?捕えたのは!」


あー、頭がいたい。

連絡はしたから、国の迎えが来るまでの辛抱、か?

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