上 下
3 / 84

国王は呆れました

しおりを挟む
卒業パーティは針の筵で終わり………。

煌びやかなはずの白亜の城はどこかどんよりとした空気に包まれている。


国王夫妻の前には問題の愚息と性女、性女の両親。それに教会を束ねる法王。


「父上!マーガレットを聖女と認め、僕の妃としてお許しいただけるのですね!」

「キャッ!嬉しい♡お義父さまぁ。」


はぁぁあぁぁ。深いため息をつく。

隣の席から扇子の芯がみしみしいう音が聞こえる…。


「だまれ。聖女とは認めていないし、できれば義理の娘にはしたくない。」

「ひっどぉい!私より、あんな意地悪な人がいいっていうんですか!それに私は聖女ですぅ!みんなに愛を振りまく愛の聖女なんですからぁ!」

「そうですよ!マーガレットは聖女だって評判なんですから!」


「お前は人のうわさを聞き齧って聖女だと思って惚れたのか?!そこのヘイボーン男爵夫妻には申し訳ないが、彼女の噂は正しくはこうだ…。『誰にでも愛を囁く股の緩い"性女”。』ホーリーパワーを持つ聖なる女ではなく、娼婦などを指す隠語としての性女。みんなに愛を振りまければ聖女なら、歓楽街の者は全員聖女だな。」

男爵夫妻は申し訳なさげに頭を下げ続けている。

「そんな!娼婦だなんて!アレンの奴が吹き込んだんだろう!そんなの真実ではない!」

「そうよ!好きな人に身を任せることのどこが悪いの!愛の結果なんだから娼婦と一緒にしないでよ!付き合ってたらエッチくらいするの当たり前でしょ!みんな元カレなんだから!」


「……え?」


馬鹿な息子よ。今更か。今か。


「男爵。マーガレット嬢は貴方の養女ですね。どうも彼女の恋愛観、貞操観は貴族のものではないように見えます。彼女は昨年まで平民として暮らしていたと聞いていますが。」

王妃からにらまれて、男爵もう汗びっしょびしょ。


「……ええ、実はマーガレットは私の姉の娘でして。平民と駆け落ちして行方不明だったのですが、流行り病であの子を遺し亡くなったのです…。いざとなれば私に連絡するよう、連絡先を残していたので……、私に連絡が。それで引き取ったのですが。」


「男爵の本当のお子様はまだお小さいでしょう………。それなのにこの状態の彼女を家に?人が良すぎますわね。褒めてませんよ?」

「……はい。」


「なによぅ!マナーだって頑張って覚えたのにぃ!ナイフやフォークは外から!挨拶もこう、スカートひろげてとかさあ!」




「アルバート。お前の断罪は、全くもって言いがかりにもほどがある。アレンの言うことが正しい。アレンは本当にお前との婚約を嫌がっておったから、今頃笑いが止まらないだろう。」

「スラムに追いやったのに!?」


「お前の妃になるくらいなら、スラム街の主にだって喜んでなるだろうよ。いや、アレンが主になればスラム街もすぐに発展しそうだなあ…。」

しかし……、と陛下はマーガレットを見た。


「こうなっては、というより元々、彼女を次期王妃に相応しい爵位の家の養女にするにも難しいだろうし、彼女は何が悪かったのか分かっておらんみたいだから、教育しても期待できないだろうな。」

「読み書きそろばんは得意なんだから!馬鹿にしないでよ!計算できないと給金誤魔化されんだから!」


「……というわけだから、私たちも実の息子なので残念だが、アルバートの王位継承権を永久に剥奪することにするよ。普通の貴族だったらギリギリありだろう。」



「ちょ!待ってくださいよ!父上ぇ!」





「失礼!」

ノックがあり、声がする。


「アルフォート。入れ。」

アレンを追ったはずのファーメット公爵が入る。

「陛下にお願いがあってまいりました。息子が向かったスラムの地区を息子の領地にしていただきたく。」




「アレンからお願いがあったのだね。いいでしょう。今日からアレンのものだ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)
BL
おそらく、ここはBLゲームの世界。義兄は攻略対象者だ。そして、僕は義兄に愛人関係を強要する悪役モブ。いや、不味いでしょ。この関係は明らかにヤバい。僕はゲーム主人公が登場したら、兄上から潔く身を引きます!だから、主人公さん、早く来て! ☆オメガバース(独自設定あり過ぎ) ☆男性妊娠あり ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

悪役令息に転生したから断罪ルート回避しようとした結果、王太子殿下を溺愛してる

琥月ルル
BL
【完結】俺は、前世で姉がプレイしていた十八禁乙女ゲームに登場する当て馬役の公爵令息・ウィリアムに転生した。ゲームでは、攻略対象の王太子・エドワードとヒロイン・セシリアの恋路を邪魔する悪役として断罪され、ウィリアムは悲惨な結末を迎える。ところが、断罪ルートを回避するためにゲームとは違う行動を重ねるうちに、エドワードに惹かれていく自分に気付く。それに、なんとエドワードも俺を特別な存在だと思ってくれているようで…!?そんな期待に胸を高鳴らせていた俺だったが、ヒロイン・セシリアの乱入で俺たちの恋は予期せぬ大波乱の予感!? 黒髪垂れ目・ゆるふわ系のフェロモンあふれる無自覚スパダリな超絶美形の悪役令息(?)と、金髪碧眼・全てが完璧だけど裏で死ぬほど努力してる美人系の王子様(攻略対象)が織りなす、切なくも甘く幸せな恋の物語。 ※主人公が攻めです。王子様(受け)を溺愛します。攻めも受けもお互いに一途。糖度高め。 ※えろは後半に集中してます。キスやえっちなど、いちゃいちゃメインの話にはタイトルの後に♡がつきます。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

自分のことを疎んでいる年下の婚約者にやっとの思いで別れを告げたが、なんだか様子がおかしい。

槿 資紀
BL
年下×年上 横書きでのご鑑賞をおすすめします。 イニテウム王国ルーベルンゲン辺境伯、ユリウスは、幼馴染で5歳年下の婚約者である、イニテウム王国の王位継承権第一位のテオドール王子に長年想いを寄せていたが、テオドールからは冷遇されていた。 自身の故郷の危機に立ち向かうため、やむを得ず2年の別離を経たのち、すっかりテオドールとの未来を諦めるに至ったユリウスは、遂に自身の想いを断ち切り、最愛の婚約者に別れを告げる。 しかし、待っていたのは、全く想像だにしない展開で――――――。 展開に無理やり要素が含まれます。苦手な方はご注意ください。 内容のうち8割はやや過激なR-18の話です。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...