俺が王子でお前の嫁とは認めない！

物語の結末

「本当に…行くんですか？」


院長が、不安げに揺れる。

その傍らには騎士団長。



「はい。これは、俺たちにしかできないことだから。それに、どこへいたって俺は真っ先に狙われる。だったら行くしかないでしょ。」


魔王のねぐらへ俺とクリストファは進軍することにした。

予め俺の力で強化した装備をつけて。


国は、クリストファが例の異空間の結界へ入れた。
これで、しばらく籠城しても大丈夫。

「ブルードゥ。国の守りはお前に任せた。よろしく頼む。」



「はい。殿下、ご武運を…。」



「父上、母上。行ってまいります。」

「……私たちには何もできないけど、精いっぱいここから祈っていますよ。微弱な力でも、あなたたちの助けになれば…。」

「わっ、私だって戦うぞ！！」


「オニキス王妃…。陛下…。」








魔王の城を奇襲した俺たちは、無事、魔王とその妃を打ち滅ぼした。

俺たちが魔王を滅しているころ、手負いの妃がフレグランス王国を奇襲したが、オニキス様がとどめを刺したらしい。


何でも、オニキス様を狙った攻撃を陛下が庇ったそうだ。


やるときはやるぅ～。




そして、世界は平和になった。






「あなた、あーん。」

「オニキスぅ、おいしいよぉ♡」


「もう、父上と母上。父上ももう怪我は回復したんですから、自分で召し上がったらいかがですか。」

家族の食卓では、陛下と妃殿下がイチャイチャしている。


オニキス様は、あの日、自分の体で攻撃を止めてくれた陛下に惚れ直したらしい。



「あうー。」

俺の膝には、生まれて５か月になった可愛い息子。

顔は俺に似てるかなぁ。

「ほら、ダイヤも『おかしい』って言ってますよ！」

ねー、とクリストファはダイヤを覗き込む。



「あぶ、あぶ。」

ダイヤは、ごはんを手づかみにすると、目の前にいる白い毛玉に差し出した。


「ケサラン、パサラン。ダイヤがどうぞって。」



浄化が終わった時。


そこに残ったのが、このケサランとパサランだった。

ケサランが魔王で、パサランがその妃。


魔王たちの元々の姿は精霊だったのだ。

人間の欲や負の感情が蓄積して、穢れた精霊が魔物になっていた。



（ケサラン、パサラン。人間は良い人もいれば悪い人もいるし、よくない感情だってある。だけどね、捨てたものではないんだよ。今度こそ、仲良くやっていこうね。）





院長と騎士団長はあの後すぐに結婚し、二人の間には子ができた。

最初で最後の子だろう。奇跡だって、院長は泣いていた。




色々あったけど、幸せだ。






じーっとクリストファを見る。


「？？なに？どうしたの？」



「いやぁ、お前の嫁になったんだなぁ、って思って。」

「………やっぱり、嫌だった？」


しょぼんと悲しそうに項垂れる可愛い旦那様。



頬にキスをしてほほ笑む。



「大好き。幸せだよ。」




fin