くず勇者にざまあ。虐げられた聖者に一目ぼれした魔王の側近はやり直す

捕らわれた兄弟

それで、この有様である。

「うわああん。お兄さま、ごめんなさい。おうちに帰りたいよお！お父さまお母さまに会いたいよう！」

泣きじゃくる弟の体を抱きしめて、キースは健気な様子で男たちを見た。

「オークションの日に商品が増えるなんて、なんてついてるんだろう。」


「僕たち、売られちゃうの？」

「兄弟の別れを今のうちにするといい。」



男たちは去って行った。



さて。


魔法封じはされたが、奥にいる人のように僕らに轡はない。

小さな子どもだから、油断している。


「いいか、お前は魔法がなくても戦える。必ずその時は来る。僕が合図したら、これで斬り込め。あの人も連れて逃げるぞ。」

キースはルースに自分の服の袖から短剣を渡した。

いつも護身用に持っているのだ。


キースは、奥にいる青年に語りかける。

「僕は魔法を封じられる前に、蝶を飛ばしました。きっと助けは間に合います。諦めてはなりません。」


自分より小さな子どもが、諦めていない。

青年の目に光が戻った。





光の蝶は、神殿にいる両親にたどり着いた。

蝶が舞い、光の文字が浮かぶ。

「なんてこと！」

カルディとユースは、急ぎマロン陛下とルシフェル様に連絡する。

騎士団とデイユの兵、神殿の共同戦線が始まる。

「ちょうど近くにグラディウスがいる。向かってもらおう。」