くず勇者にざまあ。虐げられた聖者に一目ぼれした魔王の側近はやり直す

竜鳴躍

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君は僕が守りたい

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「みんな来てくれたか!」

「もちろんよ、勇者様。みんな騙されてるんだから、退治しなきゃ。」

「魔族は悪、人間の敵!それが世界の常識だろう?」



セリフだけ聞けば、向こうが正義のようである。

だが、独りよがりの狂った正義に、会場の者はゾッとしていた。




「ここにいていてね。もし、何かあったら…。」

ルシフェルは王女の薬指に指輪を嵌めて、その手にキスをした。


「転移魔法が使えるようにしたから、これで逃げるんだよ。君が願う通り、集団で逃げられるからね。」


ルシフェルはバリアを重ねがけすると、赤い髪の魔女と女騎士を見た。







「シロナ様は王太子殿下と逃げてください。ユース様も…!」

そう言いながらもカルディはグラディウスから視線を外さない。


前回はどうだった?


ぐっとパルチザンの柄を握り、自分に光速化の魔法をかけた。





「ふははははは、消えろっ、この、邪悪な悪魔がああ!出せよ、鎌をよお!お前の本当の武器は鎌だろう!漆黒の死神め!」


どきりとする。



今回の私の二つ名はそれじゃない。

それは、人間たちがディユに攻め込むから…。

争いごとが嫌いな魔王様の代わりに人間と戦って追い返していたから。

流石にこっちも生き残るのに必死で、加減なんかできなかったから。


……起きてしまった結果に対して、人間が呼んだものが始まりだった。



グラディウス…。

いつ思い出したか分からないが、前回の記憶があるのか!



「グラディウス。私は『漆黒の死神』と呼ばれたことはないよ。」




影の間を縫い、闇に潜み、光の速さで駆け、槍を振る。


グラディウスの狂気の剣が前から五月雨に、女剣士が背後から襲ってきた。



そして、重ねて、魔女が炎の大魔法を繰ろうとしている。


「カルディ!!!」






「水の精霊よ、悪しき炎を消せ!」

「なっ!」

魔女が上を見る。



あっという間に水浸しになり、水の柱が彼女を包む。



前回は、戦うことを知らなかったルシフェルが、魔女を凌ぐ魔法を繰りだしていた。


そして――――――――




「カルディは私が守りたい!私も戦う!――――――この日のために鍛えたんだ、ミシュランお義父様と。神聖攻撃魔法・聖なる裁き!」



白い影が私の隣を走る。

純白の上着を脱いで、その下には、私の色の。黒のシャツが。


ユース様も、前回とは違う。






回復魔法しか使えないユース様ではなかった。
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