くず勇者にざまあ。虐げられた聖者に一目ぼれした魔王の側近はやり直す

竜鳴躍

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赤い魔女のミズル、ストロベリーブロンドのレイ

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白銀に輝く冬の星のようなルース様は、栄養状態がよくなって身長が伸びて、もう並ぶと、私は彼の肩くらいしかない。

女性にしては長身なシロナ様がパーティー用のヒールを履けば、私とシロナ様は殆ど変わらない身長で、クラスメイトが『両手に花だな。』とからかった。


ルース様は気にしないから、私たちも気にしない。

全員が会場に入って、やがてこの国の国王と王妃様、王太子様と王女様が現れた。


そして、王女様の側にはルシフェル様がほほ笑んでいる。




ガロン陛下は金髪に菫色の瞳の美丈夫で、王妃様のキャロリーナ様は黒髪に青い瞳のクールビューティな知的美人。

早くに結婚したからまだ若い彼らは、とっても美しい。






「ルシフェル様、わたくし、胸がどきどきしますわ。表情がはしたなくないかしら。淑女らしい微笑みを浮かべられているかしら…。」

まだ13歳のセリーナ王女は、顔立ちは父親似で華やかで甘い容姿の美少女だが、色合いは王妃に似ている。
妹のようで可愛い、という感情しかまだ持てないけれど、すぐに好きになれるだろうとルシフェルは確信している。

セリーナ王女はとても純粋な人だ。

守ってあげたい。


ルシフェルと婚約することが嬉しいのだ、政略結婚で好きになれない相手と結婚することもあるかもしれないと恐れていたから。

そう言って、扇子で顔を隠して彼女は笑った。

耳まで真っ赤にして、ポーカーフェイスを気取っているけど、好ましい。


「ねえ、ルシフェル。シロナ、って娘は誰?後で紹介してくれる?すごく頭のいい子なんでしょう?僕は賢い人が好きだなあ。価値観とか似ていて、同じように会話が出来て、同じ方向を向いて邁進できる人がいい。」

金髪に菫色の瞳の、クールな王太子は、それとなく階下の少女を見ているようだ。


ルシフェルが友達の話をするものだから、シロナに関心があるらしい。


カルディを援護するようで申し訳ないけれど、マロン王太子は仕事もできるし変な性癖はないし紳士だし、優良物件だと思うから、シロナと上手くいけば良いと思う。

彼女は伯爵令嬢だけど、聞けばジャスティン家が息子の嫁に求めたくらいには彼女の実家はとても裕福で、古くからの由緒正しい貴族であり、宝石や金の山を所有していて、商会も経営しており、他国にも顔が利くというから、十分王妃にだって相応しいはずだ。


爵位だけの妙な女に絡まれて辟易し、話の合う淑女を求めている王太子は、20歳になってもまだ婚約者がいない。
そんな堅実で真面目な彼なら、シロナも幸せになれるだろう。
見た感じ、カルディは全然分かってないが、ルースもカルディが好きだ。
今の年齢で婚約者もなく、ずるずるいけば、女性は良い男性と結婚できなくなってしまう。


「マロン様、彼女は僕の友人と一緒に参加しています。勇者にいじめられて傷ついたところを救われたので、以来、彼女はどうしても僕らといることが多くて。」


「分かっている、君たちは両性具有。しかもカルディ君は女性寄りでしょう?男の中に一人でふしだらだって言いがかりをつけられるかもってことかもしれないけど、気にしないから。」








(くくく…。楽しい時間も今のうちだ…。)

ある一人のボーイが、会場の人混みに紛れ、ほくそ笑んだ。

外には、冒険者仲間のミズルとレイ。


赤い髪の魔女のミズルに、魔法で容姿を変えてもらい、ボーイとすり替わった。

仕事をしながら、カルディを見る。



腹が立つ。


けれど、カルディ以上に腹が立つのは、自分の婚約者だったシロナと自分の妻になるはずだったセリーナ王女だ。

俺以外の男とデレデレしやがって……!


しかも、シロナのあんな美しい姿は見たことがない。

なんだ、シロナの奴、ちゃんとすればあんなに美人だったんじゃないか!
なんで俺のために綺麗にしなかったんだ!
カラダもあんなにけしからん…!


くっそ、あんなんだったらちょっとくらいヤっとくんだった!


自分と婚約解消した今世だからこそ、ストレスがなくなり、肌荒れもなく、自分に自信が出て綺麗になったのに、グラディウスは全然分かっていない。

セレーナも王女だったから結婚したが、いつも無表情だった。
あんなに可愛らしく、花が咲いたように笑ったところなど見たことがない。



あいつらを始末したら、王女の夫に俺はなるんだ。
そうしたらきっと、廃嫡は撤回されて、俺は貴族に戻れる。

シロナは、俺の愛人にしてやろう。

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